マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

×


「続・新未来8」  BYアヤ




「随分と遠くへ来てしまったな。」
本物の大空を見上げる。
あの過去があって今がある。
ならば受け入れるだけだ。
だからと言って、不満や後悔があるわけじゃない。
十分過ぎるほど幸せだと実感しているから。
只、十代の俺はこんな未来を予想もしてはいなかったと思っただけだ。
バジュラとの戦いが始まって、シェリルに出会って恋を知った。
馴染みの妹みたいな女友達の想いに背を向けて。
それがどうだろう。
バジュラとの旅から帰還した俺の人生は、ランカと共に在ることだったらしい。
改めてランカの魅力を突きつけられて、俺は見事に撃沈。
思い返せば、馴染みになったあの頃から、気付かないだけで一番大切にしていた絆だった。
そんなランカと夫婦になり、子供も産まれた。
俺たちは、父親と母親に。
色々悩むし、躓く事だってあるだろう。
それでも、支え合いながらランカと共にユウを守って歩いていく。
若造が何を言っているんだと笑われるかもしれない。
戦争の地獄を知って、恐怖も孤独も魂に刻み込まれている。
それでも俺の人生は捨てたもんじゃない。
地上の銀河を見て見れば、悩みも何も吹っ飛んじまう。
ほら、見て見ろよ。
ずっしりと響くサウンドと熱狂の渦の真ん中にいる二人の歌姫。
アイドルと呼ばれる時を越えて、それでも尚人々を熱狂させる芸がここにある。




曲に合わせて揺れる身体。
会場を埋め尽くす観客が揺らす大地。
隅々にまで浸透していくランカとシェリルの歌声。
それに乗せられた想い。
その想いにシンクロした観客達が熱狂という名の火を灯して渦を巻く。
身体の奥底から歓びが湧き上がって、歌が喉を振るわせる。
シェリルさんと肩を並べて歌える幸せ。
胸や背を伝い落ちる汗ですらも心地好い。
「皆〜、今日もありがとう!着いてこれてる?」
「まだまだマクロスピードで跳ばすわよ!!」
高まっていくボルテージが加速度を上げる。
ライブをしていると、会場の皆と一緒に銀河の彼方まで飛んでいってしまいそうになる。
それが好き。
一人で歌って満足していたあの頃には、もう戻れないな。
最初は、私はココに居るよって叫ぶだけだったかもしれない。
それが、恋を知って愛を知って私は変わった。
ルカくんとナナセさんが結婚した。
シェリルさんも妊娠出産を経験した。
色んなドラマをこの目にして、色んな感情が芽生えて。
これからも変わっていくんだろうな。
想いは日々募っていくものだから。
そして、溢れてまた新しい曲になる。
死ぬまで歌い続けられたら、と今でも思っている。
でも、歌と同じくらい愛しい存在がこの世に居る。
その存在の為に私は決めたんだ。




「「歌手を辞める?!」」
ガチャリとパイプ椅子を鳴らして、シェリルさんとエルモ社長が立ち上がった。
ライブの後、話し合いたい事があると二人を楽屋に呼んだ。
もちろんアルトくんも。
ユウはアルトくんの膝の上で寝息を立てている。
「二人とも落ち着いて!まだ、「仕事を〜」としか言ってないじゃないですか。」
「「じゃあ。」」
「辞めません!!」
ふぅ〜、と安堵の溜息を吐いて二人は椅子に座り直した。
「もう!早とちりもいいとこですよ。」
「ですが、ネ〜・・・?」
「最近仕事減らしているみたいだったし。まさかね、と思ってたとこだったから。」
確かに仕事は少し調整していた。
ユウが生まれて、一年が過ぎた今でも。
「実は、その仕事量の事で相談が・・・。このまま少し仕事量を抑えていこうかと思ってるんです。」
「何故デス?」
「私達って、親との団欒の記憶が無かったり希薄だったりするじゃないですか。」
戦争の所為だけじゃない。
宇宙の旅は、日常の航行の中でも安全では無い。
事故で宇宙に生身で吸い出されて、命を落とすことだって日常茶飯事だった。
親との思い出が希薄な子供も少なくは無かったんだ。
「甘えたい時に傍に親が居ないって、すごく寂しいじゃないですか。私はユウにちゃんと家族の記憶をあげたいんです。」
今までの様に仕事をしていても、きっと愛情は与えていける。
でも、幼い頃の思い出に勝るものはないんじゃないかと思うの。
私達は得られなかったり、希薄だったりするから。
「皆に歌わせて貰っている身で我侭言ってるのは分かっているんです。でも・・・。」
「肝心の仕事内容はどうするつもりなのかしら?」
シェリルさんの真剣な眼差しに、真剣に応える。
「歌一本に絞って、ドラマやバラエティ番組等の仕事は抑えていこうと思ってます。」
「良いんじゃない?」
「えっ?」
事も無げにさらっと微笑んで言ってくれた。
「今まで我侭言わないでやってきたんだし、良いんじゃない?私には出来ない決断だけど。」
「シェリルさん。」
シェリルさんの生き方を批判したかたちになったんじゃないかと思って、自然に眉がさがってしまう。
でも、毎日あと何分何秒、まだ歌える。
そんな風に激しく歌を求める事は、私には出来ない。
「そんな顔しないの。私は自分なりの愛情の示し方を家族にしてくだけよ。私は私。貴女は貴女、でしょ?」
「はい。あの・・・エルモさん?」
「前にも言ったはずデス。歌手とプロダクションは一心同体。何とかしまショウ。」
いつもの様に派手な眼鏡をキラリと光らせて、変わらぬ笑顔を見せてくれる社長。
そんなエルモさんだから安心して仕事が出来きるんだ。
「ありがとうございます。」
「引退だけはナシよ?ランカちゃんは親友で、私が認めるただ一人のライバルなんだからね?」
そう言って、ウインクしたシェリルさん。
追いかけていた大きな存在だった。
今や肩を並べて、ライバルだと言ってくれる。
勝敗などつかないかもしれない永遠のライバル。
私は、どれだけ恵まれているのだろう。
この世界に感謝しても仕切れない。
だから、この世界が大好き。




「なあ、本当に良かったのか?」
「も〜〜。しつこいよ、アルトくん。」
ユウを抱いたアルトくんと手を繋ぎながら家路に着く。
空に満天の星が輝いて、この世界に私たちだけ。
そんな気持ち。
「随分遠くまで来ちゃったね。」
「へっ?」
「何?」
「否・・同じこと考えたから。」
「?・・私、幸せだよ。」
「ん。俺も。」
アルトくんも同じ気持ちで、ほっとして暖かい。
色んな事があったけど後悔はしてないから。
「でも、あとちょっとで三十路なんだね〜。」
「うわっ!止めてくれよ。・・・三十路なんて聞きたくない。」
本当に嫌そうな顔をするから笑ってしまう。
「お兄ちゃんと同じこと言ってる。お兄ちゃんも「三十路になっちまう〜。」って騒いでたっけ。義理兄弟も似るのかな?」
「ランカ〜〜。」
こんな風に笑いながら何時までも歩いて行こう?
おじいちゃん、おばあちゃんになっても。




ユウが産まれて仕事が落ち着いて、やっと三人で旅行に出かけた。
旅行なんて言うほどの遠出じゃないけれど、アンジェローニ家所有の別荘を借りた。(執事さんとコックさん付きで)
海が目の前にあってユウに急かされて浜辺でアルトくんと遊んでいる。
波の音とユウのはしゃぎ声。
私は木陰のビーチベッドでうつらうつらと夢と現実の狭間を遊ぶ。
「ママ〜!!」
波打ち際で手を振るユウとアルトくんに手を振り替えして、何度か瞬きをして立ち上がった。
小走りに走りよれば、ユウが小さな身体でぎゅっと足に抱きついてきた。
「うわっ!ユウびしょびしょ〜。砂まみれだし。」
「ちょっと波かぶっちまってな。助けようとしたんだが間に合わなかった。」
「まあ男の子だし、これくらいはな〜。」
なんて笑いながらユウの頭を撫でるアルトくんはすっかりパパが板に付いてきたね。
「そろそろ戻ろうか?お着替えして、ユウはお昼寝の時間。」
「や〜。」
「や〜、じゃないの!お昼寝しなきゃ夕ご飯食べる前に寝ちゃうでしょ?」
「ほら、肩車してやるから。しっかり掴まってろよ。」
グズるユウをアルトくんが肩車すれば、頭上で直ぐにハシャギだした。
ユウはアルトくんにそっくり。
違いと言えば私似の赤い目の色とふわふわの髪質かな?
アルトくんが私の手を握って、親子の影が砂浜を歩く。
蒼い空と海、私とアルトくん。
そしてユウが居る。
穏やかな時が続いている。
そして、未来もきっと・・・。
「いい所だよね、ココ。」
「ああ。ルカには後でお礼しないと、な。」
「来年も来たいね。四人で。」
「そうだな、四人・・・四人?」
「そう。」
「って、はぁ?・・・・・もしかして、ランカ?!」
最近眠くて仕方がない。
微熱もあるみたいだし、一度経験済みだからきっと間違い無いと思う。
笑いながら頷けば、アルトくんに片腕で強く抱きしめられた。
「今度は娘だと良いな。お前似の可愛いのが。」
そう言って、ちゅっとリップ音を立ててキスをくれた。
アルトくんが嬉しそうだから、私も笑顔になる。
頭上から視線を感じれば、ユウがじっと覗き込んでいた。
「ユウも〜。」
「お前もか?」
仕様が無いなと抱っこに変えて、ユウの両側から頬にチュウ〜とキスを送る。
くすぐったそうに身体を捩りながらユウが歓声を上げた。
バカップルならぬバカ親子?
それでも良い。
幸せなんだもん。




アルトくんに恋をしてシェリルさんに出会って、知らない間に運命が廻り始めた。
楽しい事も辛い事も、悲しい事もいっぱい遭ったね。
だけど数ある未来の内から知らず知らずに私達は選択してきたんだ。
そうして、今が有る。
きっとこれからだって、何かを選択する時が来ると思う。
それでもきっと大丈夫だって思えるよ。
大好きなアルトくんと大切な家族や友人がココに居るから。
今フロンティアには移民してくる人、また宇宙に旅立っていく人がいる。
私はきっとフロンティアからは離れない。
沢山の出会いと別れを繰り返して。
そうして何時の日か、この地に還る時が来る。
その時はアルトくんとお別れなんだね。
そう思うと悲しい。
でも、また会えるよね?
アルトくんとだったら何度だって出会いたい。
この広大な銀河でも、例えどんな姿をしていても分かるから。
辛い時も幸せな時も傍に居させて欲しい。
傍に居て欲しい。








「なぁ?あんな蟲、見ていて楽しいのか?」
「蟲って言わないで!バジュラだってば。」
まだ幼さが残る少年と少女が移民船の展望広場から宇宙を眺めていた。
きらきらと目を輝かせる少女の視線の先にはバジュラ達が群れを成して女王を中心に一つの銀河を形成していた。
「バジュラ達歌ってる。何万年かに一度出会った時の愛の歌。ロマンチックだよねぇ。」
「ああ〜、ストップ!フロンティアの歌姫達の話は耳にタコだぞ。俺達が生まれるずっと前の話じゃないか。」
「ええ〜、意地悪だよ〜。」
「お前と違ってV型のキャリアじゃないんだから、あいつ等の気持ちなんて分からないし暇。」
座り込んだ少年に引っ張られる様に少女も座る。
「も〜。嬉しい、もっと歌おうって喜んでるんだよ!・・・あ〜〜私も歌いたくなった!ねえ?歌っても良い?」
「好きにしろよ。・・・・・・お前の歌キライじゃないし。」
「へへっ。・・・・ねえ?前にもこんな事無かった?」
「はぁ?いつもの事だろ?」
「そうじゃなくて、もっと前・・・?」
何だか懐かしくてすごく嬉しい気持ち。
「さあな。・・・あったかもな。生まれる前とか?まあ良いから歌えよ。」
「うん。・・・ねえ、私達ずっと一緒・・・だよね?」
「ああ。お前の面倒見れるのは俺くらいだからな。イテッ。冗談だって・・・・ずっと一緒だ。」
どちらからとも無く繋がれた手をぎゅっと握って、少女は歌い出した。
アイモ、アイモ。
歌は銀河に響いて、きっと未来へ繋がっていく。



END

このページへのコメント

アルランはやっぱ何時見ても癒されますね。

しかし…皆様と同じくアルトはランカちゃんの魅力が解るまで8年も掛かるなんて乙女心が解って無い(鈍感過ぎるけどそこがまた良いと思う私)

0
Posted by 七海 2014年03月31日(月) 17:29:28 返信

アヤさんのアルランにはいつも癒されてます。
それにしてもランカちゃん二人目とはアルト、仕事が速いですね。
可愛いです。

2
Posted by 七海 2013年12月18日(水) 16:29:29 返信

こんばんは。紫陽花です。最終回、とってもよかったです!アルト、ランカちゃんの魅力に気づくのが遅すぎです!ホント、映画の後がこんな未来だったら、素敵です!未だにアルランか、ランカちゃんのライブシーンしかDVDは見てません!番外編が楽しみで、これから読みますね8話ご苦労さまでした。

0
Posted by 紫陽花 2011年12月23日(金) 00:54:48 返信

コメントありがとうございます!やっと書き終わりました。おかしい所等が有ったり読みづらい話をここまで読んで頂いて嬉しいです。次は書ききれなかった小話を投稿できたらと思ってます。良かったらまた読んで下さい。なかなかアルラン熱引かないです。

0
Posted by アヤ 2011年12月17日(土) 19:51:22 返信

アヤさん〜(T_T)泣きました!感動しました〜(T_T)この話が終わっちゃうのがすごくさみしいです。ぜひまた色んな話を書いてください!待ってます(*^O^*)

0
Posted by きらら 2011年12月17日(土) 18:14:29 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます