芝山幹郎「映画一日一本」2005年12月
■シャイニング ホテルが人体のように動き出す
芝山幹郎が日本経済新聞土曜版に連載している『今週の一本』をまとめた朝日文庫で、2005年12月の刊行。時系列に沿って編集されていないため、いつ書かれたものかははっきりしない。週一ということは、年間約50本、365を割ると7〜8年ぐらいかかっている計算だが、連載が始まったのが2000年4月で、足りない分は他紙に書いたものと、書き下ろしとのことである。『シャイニング』の評がそのどれにあたるのかは不明。
公開当時『シャイニング』の評判はあまり芳しくなかった。だがこの作品には、いまの映画が敵わない映像や音がぎっしり詰まっている。一作品一ページというスタイルの評なので、あまり深いところに突っ込んではいないが、芝山の評価はかなり高いといえるだろう。また、ホテルの怖さや存在に着目し、批評の核にする論は多くある。
〜中略〜
前進と後退のバランスが見事な長まわしの移動撮影。白い壁や白い雪に強い光を当てる照明術。巧みに引用されるバルトークの音楽。そしてなによりも、だだっぴろいホテルそのものが、超能力を秘めた人体のように動きはじめる感覚。細部のめざましい力を得て、この映画は、美酒の毒を思わせる悪夢の時間を、観客に「体験」させてくれる。
2006年02月20日(月) 02:14:48 Modified by badsboss
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Uploaded by badsboss 2006年02月17日(金) 12:35:57
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