なのはA's −NOCTURNE− 0話

 怒れる神の黙示、あるいは悪魔の王の寓話。
     俺たちの世界は死んだ。
 邪宗の男が告げた破滅、光は呼ばれおこる。
 混沌-カオス-は、地底の底より這い出す。
     死が死を襲う焦土。
祈る神を探そうにも、いるのは悪魔と死神だけだ。
    嘲笑う闇が、俺に虚言する。
  真実は、燭台の火の中に浮かび上がると。
             「異界に消えたある男の手記」より。

…少年は、世界を生まれ変わらせる為の儀式『東京受胎』にまきこまれた。
…少年は、金髪の子供から『マガタマ』と呼ばれる虫のようなモノを与えられ悪魔の体を得た。
…少年は、『受胎』によって出来た『ボルテクス界』と呼ばれる世界を巡る事になった。
…少年は、ボルテクス界を巡る最中、『アマラ深界』と呼ばれる場所へ迷い込んだ。
…少年は、アマラ深界で車椅子の老紳士からメノラーと呼ばれる物を集めて欲しいと頼まれた。
…少年は、メノラーを奪った『魔人』と呼ばれる悪魔と戦い、全部で11のメノラーを奪い返した。
…少年は、魔人を倒しメノラーを取り戻した礼として様々な真実を知らされた。
…少年は、その教えられた真実の内容によって、ある存在へ怒りを覚えた。
…少年は、その怒りのままにアマラ深界の最深部へ赴き、心まで悪魔へと変えてしまった。
…少年は、その身に宿る悪魔の力と心で、友人を、幼馴染を、『受胎』を起こした男を殺した。
…少年は、最後に世界を生まれ変わらせるための光。無尽光・カグツチ呼ばれるものと戦いそして…


―― 世 界 を 殺 し た ――


少年は、紅い空間で目を覚ました。
(ここは…?、俺はたしか、カグツチを倒して…それで…!?)
目覚め、立ち上がると背後に突然、金髪の子供がいた。
そう、彼にマガタマと呼ばれる物を与え悪魔の力と体を与えた者が。
金髪の子供は少年に向かい語り始めた。
「カグツチはその光を失ってしまった。
 ひとりのアクマのてにかかって。
 せかいはもう、うまれかわれない。
 もうソウセイはできなくなってしまった。
 うまれ、そだち、ほろび、……そしてまたうまれる。
 それがこのセカイのあるべきすがただったのに。
 ひとりのアクマがそれをゆるさなかった。」
突如、子供の影が伸びその先には車椅子の老紳士がいた。
メノラー奪還を少年に依頼し、アマラ深界の最奥にて、彼の人としての心を奪い、悪魔としての心を与えた者が。
車椅子の老紳士も金髪の子供と同様に語りだす。
「世界が生まれ、人が現れ、そして滅んでいく……。
 その輪廻が時を刻み、輪廻の死が時を止める……。
 今また、時が死を迎えた。
 創りかえられるはずだった世界と引き換え生まれてきたのは、
 混沌を支配し死の上に死を築いてきた、闇の力だ。
 もはや、おまえには解ってはいないだろう。
 自分の意思の向かう先、力の向かう先がな。
 大いなる意思は、その意に逆らったお前を呪い……、罪科の償いを永遠にせんとするだろう。
 案ずるな。お前は、その呪われた身をもって初めて真に世界を征服する道を歩むことができるのだ。
 だが、そのためには最後に、おまえの内なる闇の力を見なくてはならん。
 そう、大いなる意思の生んだ、最高の闇の力をもってな……。」
そう言い終えると、子供と老紳士の影がゆらめき交ざり少年の背後に巨大な存在を形作る。
それは、かつて明けの明星と呼ばれ神の右に座ることを許されていた者。
天界において、『ルシフェル』と呼ばれていた存在。魔王・ルシファーだった。
……最後にして、始まりの戦いが始まった。







しばらくして、その死闘を征したのは、少年だった。
「キミのちから、みとどけさせてもらった。みごとだったよ。」
そう言って子供は目の前で老紳士へ姿を変える。
そして老紳士は宣言する。
「闇に潜み、刻が来る日を待ち続けた者たちよ。
 今、新たな闇の悪魔が誕生した。……刻が来たのだ。」
そう言うと同時にカラスが二羽、少年の背後へ飛び去る。
その先には黒い太陽があった。そして少年はそうするのが当然と言うが如く黒い太陽のほうへ向きを変える。
「つどえ!そして行こう!」
その瞬間、老紳士が高らかに告げる。
それと同時に少年の目が血の様に紅く輝き、背後に無数の悪魔が出現する。
そして少年がそれらを引き連れるように歩き出す。

そう黙示録に記された神と悪魔の最終決戦…、《アポカリプス》とも《ハルマゲドン》とも呼ばれる戦いの始まりだった。

――あの天使は……、
  己が心の形に似せて新たな悪魔を創りたるか。
  ならば、私は滅びをおこう。
  わたしと、おまえの間に。わたしの末と、おまえの末の間に――

あらゆる可能性を秘めた存在であるがゆえに完全な悪魔となった少年。
だが、唯一絶対なる大いなる意思にも、少年を悪魔へ変えた魔王にも、予測することは出来なかった。
世界の定めにない存在であった少年が持つ《無限の可能性》。
無限であるが故の可能性の一つ、《完全な悪魔となったはずの少年が人の心を取り戻す》などということが起こるとは…。






少年が完全な悪魔となり最終戦争が始まってから、どれだけの時間がたったのだろう。
数ヶ月?数年?数十年?それとも数百年だろうか…。
それは少年にもわからず、ただ覚えている事といえば、

戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して
殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って
戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して
殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って
戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して
殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って
戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して戦って殺して

そう、『戦って殺す』ただそれだけだった。
そして、少年はいつからかその行為に疑問を持つようになった。
(何故、自分はこんな事をしているのだろう。こんな事をしたいがために悪魔になったんだろうか?)
だが、それは在りえるはずのない疑問。
(最初は、理不尽な運命を押し付けるカミサマが腹立たしかっただけなのに。)
人間であるならともかく《完全な悪魔》となったはずの少年が持つはずのない疑問。
(悪魔になって、力を得る事が、敵と戦う事が、…殺す事がとても楽しかったはずなのに。)
そう、持ってはいけない疑問。
(ナゼイマハコンナニモ…、ココロガサメテシマッテルンダ?。)
持つことが許されない疑問。

それでも、その疑問を抱えたまま少年は戦い続けた。
そうしていれば、この胸のモヤモヤも消えると考えて…。
だが、その疑念はいつまでも消えず、日を追うごとに強まっていった。
そしてその思いが最大にまで膨れ上がった時、少年は…、戦場から消えた。


戦場から逃げ出した少年は、マガツヒと呼ばれる紅い魂のようなモノの海を漂っていた。
(ココはどこだ?俺は一体どこにいる?)
少年は戦場を抜け出しさ迷い行くうちに、《ココ》ヘ辿り着いた。
彼がかつて人から悪魔となった世界のあった場所へ…。
(まあ、いいか…。もう…疲れた。もう戦うのも…面倒だ……。)
そして少年は、目をとじ……ようとして、すぐに開く。
(誰か……、来る!!)
何者かが少年の方へ向かってきていた。
そう、少年に対して《殺意》を持った何者かが。
それは見覚えのある男だった。
両手に二挺の大型拳銃を下げ、背に大剣を背負った赤い服の男。
かつて、少年が世界を殺す前に一時とは言え共に戦った事もある男。
「久しぶりだな。会えてうれしいぜ少年。お前もそう思うだろ。」
悪魔狩人のダンテであった。
「……"大当たり"ってヤツだな。この辺りで戦ってりゃいつかは来ると思っていたぜ少年。」
少年をにらみつけ、その両手に持つ巨大な拳銃の片方を向けながらダンテはさらに続ける。
「正直、お前にはがっかりしたぜ。なかなかガッツがあるヤツだと思ってたのにな。」
そう言って、銃を連射する。
もちろん少年も黙って当たるわけはなく、ダンテが放った弾丸を回避する。
「ハッ!そうこなくっちゃな!さっきまでの気が抜けた顔が少しはマシになったじゃないか!」
「クッ!ダンテ…。」
少年は、小さくうめきながら、何故だと思う。
悪魔として戦っていた自分なら嬉々として応戦したであろう今の状況を、逃げ出したい、と感じている事に。
だが、そんなことを考えている間にもダンテは攻撃の手を緩めることなく次々と銃弾を放ってくる。
「どうした、人を捨ててまで手に入れた力は逃げ回るだけのものか!?」
そう言って銃撃を止め、背中に背負った大剣『リベリオン』で切りつけてくる。
「クソッ!」
悪態をつきながら身をひねってその斬撃をかわし右拳を打ち込もうとするが、
「甘いな、少年。」
そんな声が聞こえ、やばいと感じた瞬間、少年は吹き飛ばされていた。
返す刃で、横薙ぎが叩き込まれたためだ。
だが、吹き飛ばした少年のほうを向いたダンテは不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど、伊達に場数は踏んじゃいないということか…。」
視線の先の少年は、左手に魔力で作った青白い光を放つ剣を握っていた。
直撃すれば、悪魔の身といえど大きな痛手となったであろう先程の横薙ぎをその剣で受け止めたのであろう。
そして、少年にも変化が現れていた。
「ハァ…、ハァ…、ハァ…、ハァ…、フッ、フフフフッ…。」
そう、笑っていた。
戦うことに疑問を持ち戦場から逃げ出した時以来、久方ぶりの高揚感だった。
「結構ギラギラしてきたな!分かるぜ、楽しいんだろ?……俺もそうだからな!」
そう言って、リベリオンを握りなおし少年に向かって走ってくる。
少年も、その高揚感を抑えることはせず、魔力剣を出したままそのままダンテに向かって駆け出す。
両者が剣が火花を散らし激突する。
そしてそのまま、剣での殺陣が始まる。
常人の目には見えない剣の舞。
誰も見る者のいないこの場所で、二人はまるで舞うように剣を振るい続ける。
少年が正面から切りつけ、ダンテがそれを一回転してかわし、
ダンテがその勢いを利用して首を狙った横薙ぎを放つ。
少年はそれを弾き飛ばし再び切りかかっていく。
それを繰り返していくうちに、お互いの身は細かく傷つき、その身に流れる血が流れてく。
永遠に続く輪舞曲《ロンド》と思われたその殺陣も終焉の時が訪れた。
一際大きい金属音がしたかと思うと両者の体は大きく弾き飛ばされ、離れた。
「なかなかだぜ、少年。俺とココまで斬りあうなんてな。」
そう、かつてダンテが少年と共に戦っていた時、少年は剣の心得などまったく無いという話を聞いていたからだ。
そして、ダンテは『最強の魔剣士』とまで呼ばれた悪魔・スパーダを父親としてもち、そのスパーダから剣術を教わっている。
そのダンテの剣を少年は凌いで見せた。己の腕だけで。
今までの殺し合いの中で、無意識にどういう風に戦えばいいのか考えてきたのだろう。
その結果が今この少年をここに立たせていた。
だが、やはり何の心得の無い者と剣の扱いを教わった者の差は出ており、少年のほうがダンテよりも多くの傷を負っていた。
「だが…、これでフィニッシュだ。少年。」
そういったダンテの体から、真紅の魔力が噴きだす。
「そういえば…、ボルテクスでは見せることはなかったな…。俺の『悪魔』としての姿を。」
そう言ってダンテはさらに魔力を高める。
それでも少年はあわてた様子はなく、うつむき、肩で息をしている。
うつむいているため様子はわからないが、その顔は笑っているようだ。
そしてダンテは少年を気にも止めず、高めた魔力を解き放つ。
それは悪魔へ変じる為の引き金、《デビルトリガー》だった。

……まさしく、悪魔と呼ぶに相応しい姿だった。
四枚の蝙蝠がごとき羽を広げ、元から大きかった体躯はさらに巨大になり、
その両腕にはオーラで出来た剣が伸びており、その顔は彼の面影も残していなかった。そして…、
『征くぞ。』
そう聞こえた瞬間、すさまじいスピードでダンテが迫ってきた。
「アアアアアアアアアアアアアッ!ダァァァンテェェェェッ!!」
少年は、無意識に叫んでいた。
それは恐怖から叫んだのか、それともまた別の何かなのか…。
ただ少年は、その両手に魔力剣を出しダンテに向かっていく。
だが、その決着はすぐにつくこととなる。
スピードも、パワーも、全てが違いすぎたからだ。
『懺悔の時間は終わったか?少年。』
ダンテはいつもと変わらず、冷静に問いかける。
少年は何も答えず、その血まみれの体を無理やり立ち上がらせる。
『さすがだな、掃き溜めに堕ちたにしちゃかなりガッツあるぜ…。だが…、終わりだ。』
そう言ってダンテは魔力を集中させる。
少年のほうも傷ついたその体で、魔力を高めていく。
そして、極限にまで高められた両者の魔力は解放される。

――マグマ・アクシス――

―― ドゥームズデイ ――

両者が放った魔力の奔流は激突し、両者が存在している周りの空間をも歪めていく。
ぶつかり合った互いの魔力は凄まじい爆発を起こし、少年もダンテも吹き飛ばされる。
そして、少年が覚えているのは、そこまでだった………。



――これは、この二人がうちら三人と出会う前の物語。

――これから奏でられる夜想曲《ノクターン》の結末がどんなものになるかそれは私達にもわかりません。

――でも、必ず素敵な演奏になると信じて…、

       魔法少女リリカルなのはA's −NOCTURNE− 始まります。


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2007年08月13日(月) 09:12:20 Modified by beast0916




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