リリカルスクリーム19話

「私は敵では無い…」
サウンドブラスターはレーザードライフルを脇に放ると、言った。

「おではボケじゃああああ…。あ…。弾がああ…」
サンダーガイストの全てを爆光に呑み込むがごとき一斉射撃はなおも続いていた。
しかし実弾射撃である以上弾切れには勝てない。それに威力は高くても撃っている本人が
何も考えずに怒りに任せて惰性で攻撃しているので対峙しているヴィータ達にしてみれば凌ぐのは
割りと簡単であった。
「今だ!ぶっとべ!」
「いで〜!首がぁ〜!」
その間隙を突いてヴィータがラケーテンハンマーを発動させた。
横殴りに頭を殴られてあらぬ方向を向いてしまった頭部を押さえてサンダーガイストは
全身の装甲を吹っ飛ばしたままの姿で工場の敷地の奥の方へ飛び去って行った。さらにその頃…


「スタースクリームの奴は逃げたが俺たちゃ手ぶらじゃ帰らないぜ。
こっちにだって意地って物があるんだ!」
ダージが叫んだ。
スタースクリームに置いてきぼりにされたダージ、スラスト、ラムジェットの三機は
なのは、クロノの二人と未だ空戦を繰り広げていた。撤退の機を伺う彼らだったが
クロノとなのはがそれを許すはずもない。
「いけ!」≪Stinger Snipe≫
「レイジングハート、お願い!」≪Accel Shooter≫
「そうはいってもダージ。火力では同格なのに向こうは小さいからこっちの攻撃はあたりにくいぜ。
それだけでも不利だ。なあスラスト。」
「だがまるっきり策が無い訳でもねえぜ。いいかおい…」
スラストが無線でラムジェットとダージに何事か耳打ちした。
「…よし解った。奴らに痛い目見せつつ撤退するとなるとそれしかなさそうだな。
じゃああの黒い服来た奴を狙おう。白い奴だと逆に尻を吹っ飛ばされかねねえ…。」

お互いに合図を出し合うと戦闘機形態で飛行していた三機は背後に迫っていたスティンガースナイプと
アクセルシューターの第二波を回避しつつ散開。クロノ達を素早くやり過ごすと
編隊を組み直して離脱するかのような機動をとる。
「逃げる!?させるか!なのは、僕が追う!あいつらの予測進路を砲撃してくれ!」
すかさず追いすがるクロノ、だがそれこそダージ達の仕掛けた罠だった。
「ここまで来て逃がしてたまるか。なのはの砲撃で止まったところを
ブレイクインパルスで内部から破壊すれば!何っ!?」
クロノが追いすがってくることを確認すると三角形の編隊を組んで飛行していたダージ達は
お互いの距離を狭め、減速した。三角形の中心を追うように飛行していたために
進路を塞がれる格好になってしまったクロノも当然彼らにならって減速する。
クロノの僅か数メートルの位置にまで戦闘機形態に変形したダージ達の機体後部、
つまりエンジンがある部分が迫った。
「うっ…?」
このままダージ達が逃走するものと考えていたクロノは
彼らの真意を測りかねて一瞬空中で制止してしまった。
しかしそれこそが命取りだったのだ。
クロノの目に三基の双発エンジン、簡単に表現すると人間の上半身すらすっぽりと
収めてしまえそうな都合六個の馬鹿でかい筒だ。
そしてその六つの筒の中心にぽうっと火の玉が灯るのが見えた。

「消し飛びやがれええええええッ!」

そしてそれはコンマ数秒でスラストの絶叫、そしてジェットエンジンが唸る
轟音とともに数十倍の大きさに巨大化しクロノの視界を完全に覆った。

「うわあああああああああッ!」

…視界は完全にブラックアウトし、意識も一瞬吹っ飛んだ。
ボディブローをもろに喰らったような痛みと衝撃が体中に襲い掛かる。
一呼吸おいてバリアジャケット越しに凄まじい勢いで風を切る感触を感じ、
自分が吹き飛ばされている事が解った。
「ヒャーハハハーアざまぁ見やがれ!」
「…くん!…クロノ君!」
轟音が焼きついて離れない耳になのはと段々遠ざかっていくダージ達の声が
聞こえた。ダージ達は質量において上回っている事とクロノを利用し
アフターバーナーでもってクロノを吹き飛ばしたのだ。
スペック上は彼らを僅か二十秒で静止状態からマッハ2.5まで
加速させることの出来るエンジンが三基一斉に噴射したというのだからその威力は
筆舌に尽くしがたい物がある。いかなバリアジャケットを装備していると
いってもそのパワーの前には人間の質量など紙切れ以下と言って良い。
不幸中の幸い、クロノはあらかじめ定められた値以上の威力をもった衝撃が
かかると自動で防御魔法が発動するように愛用デバイス「デュランダル」に
プログラムしていたために重傷は負ったがとりあえず命までは持っていかれずに済んだのだった。
「だから言ってるだろ!俺達は敵じゃねーって!わっかんねー奴だな!」
カセットロンのリーダー格、フレンジーが人間ならば口から唾が飛んでいるような
勢いでまくしたてた。
「そう簡単に信用しろと言われてもなあ…。というかなぜあの黒い奴はさっきから黙りこくったままなんだ?」
「我らがボス…サウンドブラスターはお喋りがあまり好きではにゃいのだよ。解るかにゃ?」
フレンジーの剣幕に少し引き気味のシグナムがフレンジーを
おしとどめるように言うとジャガーが慇懃な口調で続けた。
「こいつの変な声気にいらないんだよなぁ。お前、スピーカーかどっかが壊れてるんじゃねーの?」
サンダーガイストを撃退して戻ってきたヴィータがグラーフアイゼンの先端を
サウンドブラスターに向けると言った。口調からは挑発してやろうという意思がみえみえだ。
「断じて壊れてなどいない。」
「おい!サウンドブラスターの悪口を言う奴には俺達が相手だ!」
「ああ、かかってきなこのゴスロリのチビ野郎!」
「面白いじゃん!スクラップにして粗大ゴミ回収業者に引き渡すぞ!」
「まあまあ…とりあえずお話くらいは最後まで聞こうよ。」
冷静に反論するサウンドブラスターと威嚇し合うランブル、フレンジーそしてヴィータを
いさめてフェイトが話を続ける事を促そうとしたその時。
「フェイトちゃん!クロノ君が、クロノ君が…。」
念話でなのはが会話に割り込んできた。
「なのは!落ち着いて!クロノがどうしたの?」
うろたえる親友の声にたたごとでは無いと直感したフェイトは落ち着かせようと
冷静に聞き返した。

[戻る][目次へ][次へ]
2007年08月02日(木) 11:34:42 Modified by beast0916




スマートフォン版で見る

×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。