リリカル某2-3話

 ・後編の前半戦 



 クルクルクル、シュタッ!
「横回転を決め、華麗に着地ッ!!」

 長い石階段を零段目からジャンプで飛び越え、神社の境内に着地したッ!!
 狙い定めた着地地点に横たわっていた、黒くて硬そうでとっても大きい狼のような怪物(ややミディアム状態)を踏んでいるが気にしない!
 それよりも目の前のサイボーグの方が余ほど危険と言うもの!!!

「ぬう!貴様はアメリカ合衆国陸軍機械化小隊、通称"マシンナーズ・プラトーン"のサンダーボルト!
階級はついこの間少佐に昇進し、
腕に仕込んである赤外線照射装置で赤外線を照射することで大気中にイオンの導線を作り上げ、任意の場所に電撃を放てるが、経路に金属物質や伝道物質があれば防がれてしまう弱点を持ち、
さらに大気をイオン化させると独特のイオン臭が発生し、そのために過去アーカム最強のスプリガン御神苗優に敗れ去った、
次世代型サイボーグ・ソルジャーで、主に古代遺跡争奪戦を担当してるため世界中を飛び回っている貴様が何故此処にいる!!」

 那美とユーノは同時思った。
(某さん、なんという判りやすい、だけども実際に喋れば何を言ってるのか全然判んないような説明口調!)

「はて、何故と言われましても……。昨日の発光現象が切っ掛けとなって調査をすれば、古代遺跡がらみになるのは当然と言うものですが……。
 ついでに御教えするなら、昨日の発光現象が起きる随分前に、この海鳴市周辺に強力なエネルギーを持った"何か"が散らばるのを、我が国の情報収集衛星が観測しています」
「それで此処にジュエルシードがあると知ったのかッ!?」
「いえいえ、私は今休暇中の身でして。……観光と考古学の勉強を兼ね、由緒あるこの八束神社に寄ってみればちょうど魔物化した……今貴方が踏みつけている犬と会いましてね……運が良かったんでしょう」

 なんと白々しい台詞を言うやつだ!
 おそらくジュエルシードの発動するときのエネルギーを感知する装置が出来上がっているかもしれん!
 これは不味い事になったッッ!!

「こいつをどうする気だ?」
「大型輸送ヘリを既に呼んであります。施設が整っている横田基地に連れて行って調査を行うつもりです」
「あ、あの、サンダーボルトさん!」

 かなり離れた位置で、倒れた女性を介抱している巫女姿の少女が泣きかけながらサンダーボルトに質問した。
 忘れていたわけではない!目の前に一個小隊の兵士を一瞬でウェルダンにしてしまう能力がある男が居なければ、挨拶と小一時間くらいの世間話をできる社交性を私は持っているッッ!!
 ちなみにステエキの焼き加減は八種類あり、弱い順で言うと、ブルー・ブルーレア・レア・ミディアムレア・ミディアム・ミディアムウェル・ウェル・ウェルダンとなる!
 翠屋でステエキを焼くことは滅多にないが、以前に修行していた東京の下町関陽区にある大衆定食屋で働いていた御蔭でこのような知識が身につけられたのだ!!
 うむッ、一から料理のイ・ロ・ハを教えてくれた味吉夫婦には感謝の念が止まらない!

「連れて行っちゃうって……そしたらその子どうなっちゃうんですか?元に戻れるんですか!?」
「検査してみない事にはわかりません……。単純に変異の原因となった"モノ"を飲み込んだだけなのか、それとも肉体と完全に融合しているのか……そうなった場合には、残念なことになるでしょう……。
 このまま放置すればどのような被害が一般の方に出るかわかりませんですし」
「ちょっと待ってください!取り出すことなら今すぐに出来ます!そしてこの犬が飲み込んでしまったジュエルシードは、もともとこの世界のものではありませんので、私たちで回収させてください!!」

 うむ!ユーノ君が、恐るべき戦闘能力を持ったサイボーグに怯まずに言えたぞ!!

「ふ〜む……あんまりこう言いたくはないのですが……。実は我が国と日本は、あなた方にそのジュエルシードとやらを渡して、安全保障上、本当に問題が無いか判断がつきかねていまして……。
要するに、ジュエルシードを集めたら我が国に害を与えない保障、この場合"判断材料"が何にもないのです。
我が国にとって最も安全なのは、そのジュエルシードを我が国が責任を持って管理することです。
そもそも、"一方的に"交流を断って来た、貴方がた異世界人の言う事を、今この場で、その怪物化している子犬の前で、軍人が信用しろというのが不可能に近いですね」
「そ、そんな……じゃあどうすれば信じて貰えるんですか」
 
ふうむ…あの男の言い分も一理は……ある!
しかし、一理はあるが一理でしかない!!

「サンダーボルト!ではこういうことならどうかッ!?
この事件を契機に、互いの信頼を高めるための交流促進を行えば良いのだ!
ちなみにネオ○チは本日朝9時を持ってして、ユーノ君を正式に『超時空特使ユーノ』として任命済みである!
 異世界と交流を結び、それをもって技術革新と進め、世界規模の貧困と格差減少を図るのだ!!
 そしてえッ!最終的には全人類規模の意識改革をッッ!!」
「ハ〜………世の中が貴方の頭みたいに単純なら、誰も苦労はありません。
むしろ異世界の存在を公にすれば、それこそ超古代文明を認める以上に地球レベルで混乱が発生しかねないと私たちは分析しているのですが。
 ユーノさん、と言いましたか。ユーノさんは私の考えはどう思いますか?」
「たしかに……間違ってはいないと思います。事実、ボク達の世界の歴史には、不要な接触が更なる流血に発展してしまった事例がいくつもありますから。
 ですが、この世界の"外"から来てしまったジュエルシードは、ボク達もこれまでに知った事のない、あまりにも危険な"力"を秘めてるんです!」
「具体的には?」
「……次元世界を滅ぼしかねない力、としか判りません」
「ふむ……」
 
 おお!小さくか弱いフェレットの姿のまま、全身のほとんどを機械化した殺戮兵器に果敢に説得しようとするその勇気!

「ブラフ(脅し)にしては幼稚すぎますね。ユーノさん、信用も無い初めて会った相手を説得するのなら、交換材料を用意しないと駄目ですよ?
 それに、もう迎えが来たようです」

 むうう!澄んだ大気を切り裂くようなエンジン音がこちらに凄まじい勢いで近づいてきた!

「では交渉は一時中断ということで……。我々の手で"保護と治療"をさせていただきます。あ、ちなみに私の行動は、日米安保の公にならない秘匿条項が定める範囲内の行動なので、日本政府からの合意があることを御理解し」
「待てィ!すぐにジュエルシードを封印して、犬を元通りにできると言ったであろうがッッ!!」
「……ボー・ブランシェ少佐。貴方が"その"上に立っていると回収の邪魔になるので、速やかにどいてくださいませんか?」
「その物言い!どうやら必要なのは、ジュエルシードで"変異した"子犬の方らしいな!!何故そう思ったか!それは貴様たち米軍がジュエルシードを何個か手に入れているからだ、どうだ!?」
「軍とCIAの防諜能力の低下には泣けてきてしまいますね……どうせ情報の出所はアーカムあたりだと思いますが」
「フッ、引っ掛かりおったな!今のがブラフだ!!」

 サンダーボルトがベレッタM9を抜いて撃ってくるが、そんな遅い動作ではいくらでも避けられるわ!
 せめてシティハンターレベルに上達せい!!
当然、私を犬から離すための攻撃だ!
いきなり電撃攻撃をしなかったのも、実験体となる犬に、電撃を食らった私の足から高圧電流が流れさせないためだ!!
もっとも電撃を加えてくるなら、事前動作として腕の内側にある赤外線照射装置を私に向けなければならないが、登場時の私の発言で封じてやったわ!
私は横にスライド移動しながら、予め念話で打ち合わせていた通りに、ヨーノ君を投げた!
場所は鳥居の近くに居る女性二人!たぶん犬の飼い主であろう気絶している女性と、それに付き添っている神咲那美さんだ!!
私の鍛え上げられた肉体によって、剛速球状態で飛んだユーノ君は魔法で減速して着地するや、二人を護るようにして結界を展開する!
 当然流れ弾などが当たらないようにするためと、人質にされないためだ!
 このサンダーボルトという男は、"軍人として"正直なため、人質などと言う下劣な事はしないと判りきっている!
 しっかぁし、目的を達成するなら如何なる手段を用いる非情さも"軍人として"持ち合わせている男なのだ!!
 軍人とは上から命令されれば余程の理由が無い限り従わなければならない!
 ましてや、世界の軍事バランスを崩すこと間違いない古代遺跡が関わるならなおの事ッ!
 
「アタタタタッ!!」

 分身移動で銃弾をかわしながらサンダーボルトのインサイドに入った私は、すかさず打撃技のコンビネーションを繰り出す!

「分身激烈脚・改ィッッ!」

 相手の周囲を高速移動による分身で埋め尽くしながら、必殺の蹴りを繰り出し、見事ベレッタを叩き落とす事に成功した!
 その他、四方から頭部めがけて出した蹴りは、サンダーボルトの両腕で捌かれ、防御されてしまった!
 いや、一応フェイントとしての攻撃なんだ!信じてくれぇ!!
 当然当たれば倒せる自信はあるが!
 私は手応えが無い時点で即座にバックダッシュで離れる!

 バチィッ!
 
後退したそばから、電撃!
 だが、両手から放たれた二条の雷は私の分身を空しく貫き、その向こうの木を破裂させる!
 4,6,8本目!!
 あたりに漂うイオン臭は、戦いが始まる前に赤外線を放って電撃の道筋を何本も作っていたことを知らしめる!
 無風状態のこの場なら非常に有効なトラップだ!
(……しかし解せん!)
 そう思った時、サンダーボルトが口を開いた!!

「言っておきますが、敗北から学んでいるのは、なにも貴方だけではないんですよ」
「……まさかマシンナーズ・プラトーンが体術、それも"合気"における「流れ」と「捌き」をマスターしていたとは……。
 私の蹴りを一本でも正直に受けていれば、お前の身体ごと吹っ飛ばしていたものを……顔面に行った蹴りを捌いて、ベクトルを変えることで防御したとはな!」
「勘違いしているようなので続けますが、マスターしたのではありません。
 我々機械化小隊は現在、まったく新たな『近接戦闘術』を生み出す"基礎"とするために、ありとあらゆる格闘技を学んでいる途中にすぎませんので……。
 それでは、今度はこちらから行きます。あ、そうそうこれから30秒間、電撃は使いません」
「ぬあにぃ〜?作戦中に情けを掛けるのか!!」
「いえ、私の調べでは神社や仏閣といった、正の霊的スポット入ると貴方の体調が、何故か極端に崩れるはずです。
 そんな現在の貴方に、近接戦闘での接触時に電撃を放つという常套手段では有意義な戦闘セータが取れません。
 事実、貴方は先ほど、攻撃を続けずに一旦引きました。
 格闘家にとって最も恐ろしいものは、相手の身体に触れる行為をした瞬間にダメージを喰らうことですからね。
 こういうのを"相性"が悪すぎると言うんでしょう。
 ま、今貴方が着用している戦闘服が絶縁能力に秀でていれば話は別です。
 ……長話をしているとヘリが到着してしまうので、行きます」

 サンダーボルトと私の間隔は6メートル以上あったが、奴はそれを一瞬で縮めた!
 速いぞッ!!
 半歩のバックステップ!

 ユーノ君がジュエルシード発動を感知した時点で身に纏ったバリアジャケットの絶縁能力が如何ほどのものかは定かではない!
 だからあのまま必勝コンボを繰り出さずに引いたのだ!
 昔の私だったら迷わず攻撃を続けていた事だろう!これが、これが成長というものなのかッッ!!
 
「うおりゃああああああ!」
 
 気合一拍!
 サンダーボルトの三連左ジャブを右手で凪いで流す!
 サイボーグの拳は鋼鉄の塊、それを高速で突いてくるのだ!ジャブとはいえ真面目に受ければどのようなダメージになるか!
 当然喰らったとしても、このバリアジャケットと、そして鍛え上げられた肉体、何より"水の心"、すなわち明鏡止水の境地による読みが、急所の命中を外させる事で致命傷を防ぐ自信がある!
 しかし、先ほどヤツが言った台詞がどうにも引っ掛かる!
 左ジャブ、下段蹴り、右ジャブを二十発、また左ジャブの連続!身体と手、両方の連動した捌きで外して避ける!
 スピードはあるが、正直単調過ぎる!
 微妙な重心の変化!ヤツが右手を繰り出してくるのが読めた!瞬間に私は左ストレートのカウンターを放つ!
 が、しかし、渾身の一撃は空を裂いただけであった!
 サンダーボルトが左側に回りこみ、私の顔面に掌をかざしている!
 外されたァッッ!!
 殺気を読んだ上での絶妙のタイミングであったと自負している!!なのにいいいッ!
 一年前、新宮流古武術の道場で関節を外され滅多打ちになりながら、全ての武術にとっての共通の奥義「明鏡止水」を会得したのではなかったのか!?
 
「これぐらいで驚かれては困ります。私はただ"機"を外したにすぎません」

 ヤツは優位に立っても、会った時と変わらず涼しい顔で微笑んでいる!
 しかし"機"だと?"氣"ではないのか!?

「"機"とは、戦闘における集中とタイミングの概念をまとめたもの……と考えておいてください。ま、これはエリア51のオタクからの受け売りなんですがね。
 ちなみにさっきの反撃をよけたものを『遊撃功律動』と我々は呼んでいます。
 こちらからリズムを急激に崩す事によって、反撃のタイミングそのものを外させます。
 こんな芸当ができるのも、全身の人工筋肉を精妙な急制動を可能にした基礎技術力の向上によるものです。
 長い失敗と敗北を重ね、機械化小隊はようやく人間をほんの一歩ですが超えられました。
 もっとも、"本気"の貴方や、朧、ルガール、最強の生物といった世界中のオーバーSランク・ソルジャーには、まだまだ劣りますが……。
 おっと、30秒経ちましたね」
「うおおおおお!!」

 私は身体をねじり、思いっきり跳躍する!
 電撃が来ると思っていたが、そうではなかった!
 サンダーボルトはその場に居た!しかし伸ばしていた手を引き、両足を肩幅よりやや広く開けた空手の構えをしている!
 10メートルは開いたこの距離で何をしようというのか!!

「よく見ていてください。何も電気エネルギーを放出して使うわけではありません。電力を電磁力に変換して工夫すればこのような芸当も可能です。
 行きますよ〜」

 ヤツは「ス〜」と深く息を吸うと、腹のそこから響くような太い声を出した!
 今までヤツが発していた紳士的な空気が変わる!
 なッ、なんだぁこの圧迫感はッッ!!

「超ォォ〜〜〜電磁ィィィ 逆 突 き ャ ア ア ア ァ ! !」



< 後編 後半戦に続く! >

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2007年08月06日(月) 13:01:29 Modified by beast0916




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