白き異界の魔王13話

赤羽神社庭:柊蓮司
急いで書庫を飛び出し、玄関へ。
「がんばってねー、柊」
靴を履く柊蓮司とフェイト達に手を振るくれは。
「って、お前はこないのかよ」
くれはこれでもウィザードだ。
アニエス・バートンという大物が関わっている事件では絶対協力してほしくなる。
「ごめん。柊が来る少し前にね、アンゼロットさんから連絡があったの。世界結界が不安定になってて、これから大変なことが起こるかも知れないから待機しててるようにって。柊には連絡無かったの?」
そんな連絡はない。
念のために、ウィザード用携帯電話O-Phonの受信履歴を見てもそれらしきものはない。
「いや、ないな」
つま先で地面を叩いて足を靴に押し込んだ。
「俺たちは行くけど、なんかあったら連絡してくれ」
「うん、わかった。いってらっしゃーーい」
手を振るくれはを背中に、柊蓮司とフェイト達は石段を駆け下りていった。

アニエス・バートンの封印:ベール・ゼファー
緑色の鱗で構成された大きな部屋。
その鱗は絶えずうごめき、場所を駆けている。
部屋の中央にはこれも緑色の鱗を積み上げ、固めて作った祭壇がありそこにはステラを着けたインテリジェンスデバイス・オッドが差し込まれている。
交互に点滅を繰り返すステラとインテリジェンスデバイス本体の球体の前で、ベール・ゼファーは額に手を当ててため息をついていた。
「アニエス、そういうことは先に言いなさい」
オッドの点滅が早くなる。
「無理だったのはわかってるわ。でも、二度手間は嫌いなの。あの時、執政官の娘を殺しておけばって思うじゃない」
時間が無かったのは確かだ。
アニエスはファー・ジ・アース帰還のための際に世界結界に穴を開けている。
そのため、異世界で集めたプラーナが枯渇寸前にまでなっていたのだ。
早く頭蓋骨のある、この地に来なければ消滅の危険すらあった。
しかし、追い詰めたことを考えると・・・がっかりも良いところだ。
「それでも、執政官の娘とその仲間がこの結界を破って、復活前のあなたを倒してしまうってのは面白くないし・・・」
鱗の部屋は月匣内に作られている。
月匣自体強力な結界だが、この月匣には弱点がある。
アニエス復活のためのプラーナ収集に必要な入り口だ。
だが、入り口からウィザードが入るのは不可能だ。
入り口は異世界で広域結界と呼ばれるものを応用して閉じてあるから。
「でも、異世界から来た時空管理局の娘達なら可能性はある・・・」
ベール・ゼファーは耳を澄まし部屋に満ちる蝗の羽音を聞く。
「執政官は見失ったようね。え・・・・?」
羽音がベール・ゼファーに新たな情報をもたらす。
「そう、なにをしているのかはわからないけど派手なことになっているようね。私もパーティに入れてもらいましょう」
軽くステップを踏むベール・ゼファーの姿が聞える。
「病み上がりは大人しくしてなさい」
残るのは無数の蝗。
その蝗をステラと対になるインテリジェンスデバイス本体の球が両目のように輝き、見つめていた。

内火艇:八神はやて
空間に浮かぶ無数のディスプレイには周囲の地形や胴体の情報が表示されている。
この作戦の前に、周囲にはセンサーを配置している。
これをくぐり抜ける者はまずいない。
別の情報を表示するディスプレイもあった。
クラウディアからの情報のダウンロード状況と応援部隊の進行状況を示すディスプレイだ。
どちらも100%になるにはまだ時間がかかる。
この両方が100%になったとき、この世界が第97管理外世界かそれとも、よく似た別の世界かがわかる。
はやては、また別のディスプレイに目を移す。
応援部隊誘導のためのビーコンの情報をあらわすものだ。正常に動いている。
警報が鳴り出した。
各ディスプレイも色を変え、警告を示す。
ディスプレイを戦闘用の配置に変更。
センサーとレーダーの範囲内に何者かが侵入していることをあらわす交点が出てくる。
それは無数にあり、またそれぞれが魔力を有していることもあらわしていた。
「予想どおりやな。ま、かがり火つけてるみたいなもんやしな。みんな、準備はええ?」
「スターズ1。こっちはいつでもいいよ」
「スターズ3。OKです」
「スターズ4。いけます」
外の三人からの応答が聞こえる。
「こっちもです。八神部隊長」
ヴァイスのサムズアップ。内火艇も問題ない。
「ぞれじゃあ、みんな、始めるよ。殺しに来てるかもしれん相手に非殺傷設定やって無茶なこというけど、後から友達になるかもしれんのや。くれぐれも頼むね」
「わかってるよ」
「わかりました」
「了解」
外からの交点の動きが速くなる。
スターズを示す交点がそれに合わせて散らばっていった。

森:スバル・ナカジマ
森の中には様々な障害物外ある。
茂み、木の根、岩。
地面の凹凸も移動を妨げる要因となる。
しかし、スバルにとってはそれらは障害とならない。
地面すれすれに作られたウィングロードを走れば舗装された地面と同じになる。
敵は銃を持った頭から足まで来るずくめの特殊部隊の兵士。
生える木々を遮蔽にして銃弾をかわしながら1人ずつ殴り、昏倒させていく。
だが、ウィングロードにも欠点はある進行方向が敵に悟られやすいのだ。
「しまった!」
直線になったウィングロード上に特殊部隊の兵士飛び乗り、スバルめがけてサブマシンガンをフルオートで放つ。
「Protection.」
最初の数発はマッハキャリバーが防いでくれる。
「これでっ」
次は、シールで防ぐ。
腕に伝わる衝撃が長くは持たないことを教えてくれるが、なのはから聞いた灯の狙撃ほどではない。
シールドの限界までに十分近づける。
「リボルバーシュートっ」
光に撃たれた兵士が倒れるのを見ながら蛇行させたウィングロードを走る。

丘:ティアナ・ランスター
ティアナが選んだのは少し高い丘になっているところだった。
「ヴァイス陸曹。本当にここで良いんですか?」
このポイントを選んだのはヴァイスだ。
ここに来てから何もない。
ときどき念話で聞こえてくる通信からわかるスバルの奮闘がティアナを焦らせる。
「狙撃ってのはな、じっくり待つもんだぜ・・・ほら来た」
空間にモニターが投影される。
そこにはあと1分もしないうちに敵がティアナの射程圏内にはいることを示す交点が移されている。
しかも、ご丁寧に狙撃する順番を示す番号まで書かれている。
「その順番に撃ってみな。敵さん、超一流のスナイパーがいると勘違いしてくれるぜ」
「はぁ・・・」
半信半疑ながらも狙いをつける。
「シュート」
小さくつぶやく。
一発一発、丁寧に撃っていく。
モニターの表示が敵が行動不能になっていくのを示していった。
1/4も倒したとき、敵の集団が後退していくのがわかった。
「本当だ・・・」
自分でも驚くほどにスムーズにできた。
「ティアナ、スバルが囲まれかけとる。そっちの援護に行って」
「了解」
フェイクシルエットを1つだけ残して走る。
幻影が囮になっている間、いくらか時間が稼げるはずだ。

空:高町なのは
敵の攻撃は空にも及ぶ。
森に隠れた敵から放たれたロケット弾は弧を描きながらなのはを追っていく。
「アクセル・・・シュートっ」
追ってくるロケット弾は3つ。
それから離れながら魔力弾で打ち落とす。
爆発。
爆発。
爆発。
突如、後方が明るくなる。
無数のロケット弾がなのはを撃墜すべく、火を噴きながら迫っていた。

地上:ジェームズ・T・ホーク
ジェームズ・T・ホークは絶滅社が誇る対エミュレーター用に訓練された最精鋭の特殊部隊の中でもひときわ腕利きの男である。
ロケット弾の群れが次々とエミュレーターに激突していくのを見た彼は自分の仕事に満足していた。
数発の対エミュレーター用ロケット弾で追い込んだ上での飽和攻撃。
彼が指揮する部隊が得意とする戦術だ。
彼の部隊はこの戦術で街1つを一夜にして滅ぼしたエミュレーターを倒した実績を持っている。
その時は13発のロケット弾でエミュレーターを倒した。
今回使ったのは30発。
その時の実に2倍以上の量である。
「全弾の着弾を確認しました」
部下の報告を聞く。
まさにパーフェクトな出来だ。
「敵、エミュレーターの撃・・・・」
部下の報告が止まる。
「どうした」
空を見上げる部下の視線を追ってジェームズは空を見た。
そこでジェームズが見たのは、徐々に薄れていく縛炎の中から現れた赤い光がともる杖を持った白いエミュレーターだった。
白いエミュレーターの口が動く。
「ごめんなさい」
なんだ、なにを謝っているだ。誰に謝っているのだ。
理解できなかった。
その時、ジェームズは思い出した。
人間とは全く相容れない強力なエミュレーターの話を。
「ま・・・魔王」
赤い光が放たれた。
彼の部下を次々となぎ倒していく。
「白い・・・魔王」
彼と彼の部下が着けている装備は極めて強力な耐魔法防御が施されている。
よほど強力な攻撃であっても一撃でやられると言うことはない。
しかし、赤い光は苦もなく彼の部下を倒していく。
光が彼に迫ったとき、彼はそれまでの経験も誇りも全てそぎ落とされ叫ぶしかなかった。
「うわーーー、だめだーーーー」

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2007年08月06日(月) 13:39:42 Modified by beast0916




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