白き異界の魔王14話

秋葉原:柊蓮司
秋葉原からアニエス・バートンの封印までは特に何もなかった。
せいぜい、空を飛ぶためにバリアジャケットに着替えたところを一般市民に見つかって
「なんのコスプレですか」
「写真取らせてください」
と騒ぎになったり、仕方ないから制服に着替えたらまた
「なんのコスプレですか」
「写真取らせてください」
と騒ぎになった程度だ。
第97世界の服は持ってきてはいなかったフェイト達はまた柊の財布を軽くしてしまった。
電車に乗ったら、お婆さんが立っていたのでフェイトが席を替わった。
お婆さんと話しているうちに何故かフェイトが未婚の母親と言うことになって、しかもリンゴをもらったりもした。
キャロはとてもおいしいと喜んでいた。

アニエス・バートンの封印:フェイト・T・ハラオウン
空を飛んでいたフェイトは空気がぬるりと粘りを持ったような感覚を一瞬だけ味わった。
その途端、目の前の風景が変わる。
それまでフェイトが見ていたのは緑豊かな森だった。
今見えているのは色こそ同じ緑だが無数の蝗だった。
周囲の木々は蝗に食われ、緑の葉はすでに無い。
蝗の緑の色が木々のはのかわりに山を彩っている様子にキャロは小さく声を上げる。
エリオがそんなキャロの手を握るが、フェイトはエリオの手もまた震えているのを見逃していなかった。
木々を食い尽くした蝗は獲物をさらに求めるが、それでもまだ足りないと植物ばかりでなく岩や土すら食べている。
動物もまた同じだ。
本来ならこの森の恵みを受けていたであろう兎や猿、熊が新しい白骨を晒している。
眼窩の中から出てくる蝗がそれらが辿った運命を饒舌に語っているようだった。
柊蓮司が空を指し示す。
「月匣だ」
そこにあるのは赤い月。
「月匣でこいつらを隠しているんだ」
山1つ分くらい覆っているとはいえ、この辺りは人も少ない。
なにかを目標としていなければこの月匣に気づくものがいるとは思えない。
そして、フェイトはその目標を目にした。
結界の中心には黒いドームがあった。
蝗たちはドームを守るように周りに無数にいるが門番の役目を果たそうとするものはおらず、食事に没頭している。
ドームのすぐそばに降りたフェイト達はその表面が鱗のようになっており、それが時折ざわめくのを見た。
「そこで待っててくれ」
柊蓮司はフェイト達を少し下がらせ、ドームの表面に手を伸ばす。
「ん?」
ドームの表面をこすり、探る。
「なんだこりゃ、こんな封印しらねえぞ」
柊蓮司はドームを上から下まで見渡すがなにかが見つかるわけではなかった。
「柊さん、それ、私の世界の結界だと思います」
フェイトがキャロとエリオをその場に前に出る。
「破れるか?」
「やってみます。バルディッシュ」
「Yes sir.」
フェイトはバルディッシュをザンバーフォームに変え、頭上に構えた。
「はぁあああああ・・・・」
息を少しずつ肺からしぼりだし、魔力を集中させていく。
バルディッシュの巨大な刀身の輝きが眩しいほどに増していく。
「スプライトザンバーーーーーーっ」
飛翔しながら刃を体ごと振り下ろす。
光る刃がドームの表面にぶつかり、稲光をあげる。
「バルディッシュ!お願い」
「Yes sir.」
刀身の輝きがさらに増す。
全身に魔力と力を込め、さらに押す。
「きゃあああああああっ」
バルディッシュごとフェイトが弾かれる。
宙を舞うフェイトをエリオが受け止めようとするが、支えきれずに潰される。
「あ、エリオ?」
「いた・・・大丈夫です。フェイトさんは?」
「大丈夫。エリオ、ありがとう」
キャロと柊蓮司が倒れた二人に手を貸す。
「できそうか?」
「いえ・・・バルディッシュと私だけじゃ・・・」
スプライトザンバーには結界破壊の特性がある。
だが、それを持ってしても完全に力負けしていた。
なのはのスターライトブラスターを合わせたら・・・。
可能性はあるかも知れない。
「私の仲間がいれば破れるかも知れません」
「仲間?」
「はい、柊さんと会う前、ベール・ゼファーと戦ったときにはぐれてしまった仲間です」
「その仲間と連絡は取れないのか?」
フェイトの顔に影が差す。
「・・・できないんです」
「そうか・・・」
蝗が山を食う音が聞こえる。
「フェイトさん・・・あれ」
キャロが結界の境界を見ている。
外側からはわからないが内側からなら結界の境界がよく見えた。
「大きくなってます」
キャロの言うとおりだった。
入ってくるときには結界の外にあった川が今は結界の中にある。
川は緑色に染まってそこにも蝗がいることを示している。
そして、蝗の密度は結界が広がってもなお変わることはなかった。
「喰ってる端からでかくなってるわけか」
柊蓮司が足下の地面を蹴りつけた。
今になっても蝗は柊達に無関心だ。
まだ食事を続ける蝗の羽音はフェイト達を無駄なことはするなとあざ笑っているかのようにも聞こえた。

アニエス・バートンの封印:柊蓮司
「ん・・・・・?」
柊蓮司はポケットを押さえた。
入れていたO-Phonが振動している。
通話ボタンを押した途端に電話の相手はあらん限りの声でわめいてきた。
「柊さん!今、一体どこにいるんですか?」
相手が誰かは考えるまでもなかった。
なるべく会いたくないが会わざるを得ない。あるいは無理矢理に会うことになる相手。
間違いなくアンゼロットだ。
「いや、どこにいるかって言われてもよ」
「とにかく!急ぎです!すぐ来てください!良いですね?」
ものすごく機嫌が悪そうだ。というか、間違いなく悪い。
アンゼロットはそれだけ言うと、電話を切ってしまう。
「・・・・・・・・」
電話をかけ直して今は用事があるからダメだ、と言おうかとも思ったが止めた。
「なあ、フェイト。フェイトの仲間を捜せそうなヤツに当てがあるんだが・・・」
「ほんとうですか?お願いします」
フェイトは柊蓮司の手を握る。
そこから必死さが伝わってきたように柊蓮司は感じた。
「わかったよ。案内する。俺のいうとおりに飛ばしてくれ」
「はい」
キャロがケリュケイオン胸の前で会わせてフリードの本当の姿を召喚する。
柊蓮司達を乗せて、フリードは空に羽ばたいた。

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2007年08月12日(日) 09:57:40 Modified by beast0916




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