白き異界の魔王15話

アンゼロット城上空:キャロ・ル・ルシエ
キャロは自分がどういうふうにフリードに飛んでもらっていたかはわかっていたつもりだった。
だが、柊蓮司指示通り飛んでいるうちに周りの景色はいつの間にか変わってしまう。
今キャロ達が見ているのは次元空間に浮かぶ荘厳な城。
いつの間にか、しかも自然に現れた城の上空をキャロ達は旋回していた。
「あそこに降りてくれ」
キャロはフリードの首を叩く。
「フリード」
フリードは一声鳴き、城の中庭へと降りていった。

アンゼロット城中庭:柊蓮司
中庭に降りてフリードが小さくなった頃、城の中からスーツを着た男が出てきた。
「お待ちしておりました。お久しぶりです。柊蓮司様」
「前ここに来てから1週間たってないような気がするんだが・・・」
「いえ、今まででもっとも間が開いています。こちらへおいで下さい。お連れの方も」
柊蓮司は5歩ほど歩いた後、後ろをついてくるフェイト達に振り返りこう言った。
「いいか。1つだけ言っておく。お茶を出されても絶対飲むなよ。いいな、何があっても飲むなよ」
犠牲者は増やしたくはなかった。

アンゼロット城内:フェイト・T・ハラオウン
フェイト達は自分たちが通された部屋を見て思わず感嘆の声を上げた。
客をもてなすために作られたのでエア労組の部屋の天井は見上げるほどに高く、壁には豪華なそれでいて上品な彫刻が刻まれている。
部屋の隅に置かれた装飾品も高価な物であることはわかるが、それが嫌みにならないようさりげなく置かれていた。
中央に置かれた机に柊蓮司が慣れた様子で座るのを見たフェイトはエリオとキャロがの椅子を引いた後に座った。
「柊さん。ここはどういうところなんですか?」
「そうだな・・・世界を守るウィザードの中でもいろんな意味ですごいヤツの城なんだが・・・実際に会った方が早い」
苦笑いを浮かべる柊蓮司の言葉の意味を考えているうちに、自分たちが入ってきたのとは別の扉が開く。
入ってきた少女を見てフェイトは思わず息を飲んだ。
彼女の判断を超えた少女だったからだ。
ただの少女ではないことは一目でわかる。
年はエリオより少し上、柊よりは下のようにも思える。
まだ子どもといえるが白銀の髪と黒い目からは神秘的な光を放っているようにも思える。
その仕草の全ては品を感じさせる。
フェイトはこの少女がいかなる人物であるか思考を巡らすが結論はいっこうに出なかい。
少女はフェイト達の向かいに座ると、透き通るようなそれでいて底知れぬ威厳を感じされる声で語りかけてきた。
「ようこそ、私の城へ。私はアンゼロット。この城の城主であり世界の守護者です」
フェイトは言葉の意味がわからず、隣でやけに緊張している柊蓮司に聞くことにした。
「柊さん、守護者ってなんですか?」
「言葉の通りさ。この世界を守るためにいろいろしている存在、ってとこだな」
時空管理局のトップに相当する役職なのかな。
フェイトはそう考えることにした。

アンゼロット城内:柊蓮司
柊蓮司は正面のアンゼロットの動きをわずかでも見逃すまいとしていた。
なにをするか。何が起こるか。
油断などできるものではない。
「皆さん。紅茶でもいかがですか?」
柊蓮司達4人の前に薫り高い紅茶を湛えたティーカップが置かれる。
「飲むなよっ」
ティーカップを持ち上げたキャロがあわてて皿に戻した。
「柊さん。失礼ではないですか?」
「何が起こるかわからん紅茶を勧める方がよっぽど失礼だ!」
ほぅ。
アンゼロットがつまらなそうにため息をつく。
「では、柊さん。まずはあなたに弁明してもらいましょう」
「弁明?なにをだよ」
心当たりはない。
「決まっています。あなたには重大なお話があるのですよ。居場所は知らせてもらわないと困ります」
「いや、用事があるんならさっきみたいに携帯に電話すればいいだろ」
「それではつまらないではありませんか!」
「はぁ?」
アンゼロットの背後の床に穴が開き、そこから新しい床がせり上がってきた。
その床には、マジックハンドやらクレーンやらやたらでかい掃除機やら人間サイズのゴキブリ捕獲機やら他にもいろいろな物が置いてある。
その全てには「柊専用」の2文字が書かれている。
「あなたを拉致」
「をい」
「もとい、歓迎するために作ったこれらを使えないではありませんか」
アンゼロットはそれがさも当然と言ったように語る。
「使うな!てゆーか、普通に呼べっ」
「せっかく作ったのに」
「作るなっ」
柊蓮司はここで引いたが最後、自分の人間としての大切ななにかが無くなってしまうような気がしていた。
「まあ、でも今回は私もあまり怒る気にはなりません。私も野暮ではありませんから。そちらの方は新しい愛人ですか?」
「違うわっ。てゆーか、愛人ってなんだよ」
「いつの間にお子さん、お二人もお作りになったんですか?言ってくれればご祝儀くらい出したのに」
「違うって言ってるだろ!てゆーか、それはもうくれはがやった!!」
「ちっ」
「ちっ、じゃねえ!ちっ、じゃ」
だんだん息が切れてきた。
「あ・・・あの」
フェイトがおそるおそる声を上げる。
「なんですか?」
「さっきのくれはさんもそんなこと言ってたんですけど、柊さんってその・・・愛人というかそういう人が多いんですか?」
「をい」
柊蓮司はとりあえず無視される。
「ええ・・・そうですね。彼は世界を何度も救っているのですが、そのたびに新しい女性と・・・」
「そ、そうなんですか?」
「はい。おまけに行った先で現地妻まで」
「まてや、おい」
また無視される柊蓮司。
「かく言う私も以前彼に獣のように・・・それなのに彼にあっさり捨てられてしまって。酷いですわ、柊蓮司」
フェイトは席を立った。
キャロとエリオをかばう位置に行き、柊蓮司から10メートル離れる。
「嘘を吹き込むな!嘘を!フェイトも、信じてんじゃねえ!!!」
叫ぶ柊蓮司。
その間に、アンゼロットは自分の紅茶を優雅に飲み終える。
「・・・軽いジャブのような冗談はこのくらいにして」
「ジャブかよっ。ボディブローのように効いてるじゃねえかっ」
フェイトはさらに20メートル離れてる。
珍しく大声を出してきた。
「柊さん、愛人のことはホントに嘘や冗談なんですよね?」
「あたりまえだ!!」
柊蓮司はあらん限りの誠意を持って叫ぶ。
溢れそうなくらいの誠意がこもっていた。
安心したのかフェイトは元との席に戻ってくる。
「では、嘘や冗談の追求はおいておくことにして」
再びフェイトが30メートル離れた。
「そういう誤解される言い回しは止めろぉ!!」
また戻ってくるフェイト。
「これで安心しました。柊さんは絶好調のようですね」
「なんでだよ」
「柊力が全開のようですから」
「どうしてそうなるんだ」
「男が下がり続けています」
「お前が下げてんだろうがよ」
柊蓮司の絶叫はやまない。

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2007年08月12日(日) 10:43:04 Modified by beast0916




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