白き異界の魔王6話

月匣内:キャロ・ル・ルシエ
羽を寄せキャロとエリオを乗せたフリードが高速で飛ぶ。
すでに何度も攻撃魔法を唱え魔王を名乗る少女、ベール・ゼファーに直撃させている。
だが、全て避けられ、弾かれ、止められている。
ベール・ゼファーの投げた黒い球がフリードを追い、徐々に差を詰める。
キャロは肩越しに黒い球を見つめる。
ギリギリまで引きつけて羽を広げ急旋回。
黒い球は結界の堺にぶつかり消滅した。
「あら、なかなかいい竜ね。よく見せて」
前にベール・ゼファーがいた。
「フリード!」
フリードは首をひねり、ベール・ゼファーと距離を取る。
「そんなに逃げなくてもいいじゃない」
ベール・ゼファー手のひらをフリードにそっと向ける。
「アポート」
開いた手を握りながら返す。
フリードの目の前にベルがいた。
「そんな、こんなに速く・・・」
周りを見回していたエリオが叫ぶ。
「ちがう!引き寄せられたんだ」
「当たり。周りにある物を引き寄せるのがこの魔法よ」
ベール・ゼファーはフリードの下あごを踏みつけ、上あごを持ち上げた。
「フリード、逃げて!」
口を開くことも、閉じることもできない。
ベール・ゼファーの手をふりほどくこともできずフリードはもがく。
「大切に育てられているのね。それでいて甘やかされているわけでもない。いい飼い主なのね。でも・・・」
かざしたベールゼファーの手の上に黒い球体が大きくなっていく。
「私と戦うのは100年は生きてからにした方がよかったわね」
エリオがフリードの背で動いた。
「Sonic Move」
球体が放たれる寸前に、ストラーダがベール・ゼファーの目の前を走る。
ベール・ゼファーはフリードをはなし、一歩下がる。
宙を斬るストラーダを持ったエリオが落ちていく。
「エリオ君」
キャロの心を感じたフリードがエリオを追う。
「高速移動はいいけど、空を飛べないんじゃ無謀よ」
空を踏み、エリオに追いつこうとするベール・ゼファーの周囲に雷が走った。

月匣内:フェイト・T・ハラオウン
「疾風、迅雷!」
高速移動でベール・ゼファーの行く手を遮るのはザンバーフォームのバルディッシュを握り、ソニックフォームのバリアジャケットをまとうフェイト。
「スプライト」
巨大な金の刃が輝きを増す。
「ザンバーーッ!」
切っ先で結界の境を削りながらベール・ゼファーに振り下ろす。
衝撃。
「すごいわね」
ザンバーはベール・ゼファーの手の中にあった。
金色の刃も、はじける雷も傷一つつけられない。
「でも・・・ここまでね」
ベール・ゼファーの手からザンバーにヒビが走る。
実体化するほどの高密度の魔力が少女の手によりへし折られた。
「そん・・・な」
衝撃で飛ばされる
結界の境が目に入った。
「キャロ!エリオ!あそこに飛んで」
ベルディシュが削った結界の境の一点に、穴ができていた。
フリードが穴めがけて飛ぶのが見えた。
フェイトも穴に向かって飛ぶ。
「待ちなさい!」
黒い球を背中に感じながらフェイトは急旋回を繰り返す。
フリードが結界の外に出る。
フェイトも結界の外に片手がかかった。
「あの速さに狙いをつけるのは面倒ね」
ベール・ゼファーの手の間に光がともる。
光は、周りの光を吸い込みながら徐々に大きくなっていく。
フェイトは今までとは違う魔力を感じ、振り返る。
「収束魔法!?」
ベール・ゼファーの手の間の光が臨界に達する。
「リブレイド」
光の帯がフェイトを遅う。
フェイトは結界の外に飛び出し旋回を繰り返すが、光は屈折を繰り返しついにはフェイトを直撃した。
「きゃああぁあああああああっ」
「フェイトさん」
放物線を描き、落ちるフェイトをフリードが追う。

月匣内:ベール・ゼファー
もはや壊れた月光に意味はない。
赤い月は消え、周囲の星空は正常に戻る。
「これでおわりね」
フェイトとは少し離れてしまった。
魔法が届かなければ意味がない。
少し飛ぶことにした。
「え?なに?」
ベール・ゼファーが少し前に拾ったインテリジェンスデバイス、オッドに顔を向ける。
オッドの声は持ち主にしか聞こえない。
「それはそうだけど、少し待ちなさい。とどめを刺す時間くらいあるでしょ?」
オッドは激しく明滅をはじめる。
「しょうがないわね。約束だものね。でも、それならあなたの眷属を貸しなさい」
オッドにつけられているステラからいくつかの緑色の粒が落ちていく。
粒は徐々に大きさを増していき、その形をはっきりしていく。
それは緑色のイナゴだった。
その中の一匹は人より大きいどころではない。
バスほどの大きさになり、他の小さいイナゴを引きつれフェイトが落ちる方向へ飛んだ。

空:フェイト・T・ハラオウン
少し物理の復習をしてみよう。
落下する物体を考える際には、速度を下方向と横方向の二つの速度ベクトルに分解して考えるというのをやったことのある人も多いだろう。
では、下方向の速度ベクトルが突如「下がったら」どうなるか。
物体はより水平に近い軌道で落ちていくことになる。
気を失ったフェイトに起こったことはつまりはそういうことだ。
フェイトは魔法を使っていないにもかかわらず地球の重力加速度ではあり得ない軌道でゆっくり落下をしていった。

秋葉原のマンション:柊蓮司
その日の柊連司はまさに絶好調だった。
姉と食べた晩ご飯もうまかった。
かつてないほどに上機嫌の姉が作ったのだが、これまたかつてないほどうまかった。
両親は居なかったがまあ、これはいつものことだ。
なぜなら設定がないからである(マジで)。
食事の後は宿題をした。
頭の冴えは素晴らしく、あらゆる問いに正解を出していった。
今日はなんて素晴らしい日なんだろう。
明日はこの半分でいいから良い日であるといいな。
そんなことを考えながら柊蓮司はベッドに潜り込んで目を閉じた。
だが、柊蓮司は知らなかった。
彼の夜はまだ終わっていないことを。
彼の部屋の窓をめがけて金色と黒色の物体がそりゃもう、すごい勢いで突進してきていることを。

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2007年07月15日(日) 13:47:27 Modified by beast0916




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