その他99

 モニターに映る痩身の若者。美青年といっても良いだろう。
 だけど眼の辺りにはどこか気まぐれな感じがする。

「やあディスプレイの前のミンナ〜元気かにゃ〜?ボクの名前は“這い寄る混沌”。因果律を捻じ曲げて、“物語”をつぐむネ申様さ。
 今日は試しに魔法少女を作ってみることにした。
 主人公に当たる少女には当然魔法の素質を持たせてある。
 家族構成はどうしようかな〜。う〜ん、メンドイや父親存命にしてしまえ。
 あ、あとキーパーソンとなり、マスコットとなる小動物がいるといいにゃ〜。うんそうだ。この「ネ○ま!」みたくフェレットにしよう。
 勿論、神話的要素をふんだんに盛り込むつもりさw
 衰退いちじるしい漁村、謎の魔法書、ポナペ島沖……うん、ラスボスは当然クルウルウに決定♪」

 突然、銀色の眩い閃光と共に、ナイスミドルな白人のおじ様が登場!

「そんな毎週ラストに、視聴者にSANチェックをやらせるような魔法少女などやらせんぞ、ナイアルラトテップ!」
「ゲゲェ!貴様はランドルフ・カーター!」
「もうゆるさないぞ!くらえ!銀のカギ・パ〜ンチ!」

 ガッ!

「ブフッーーー!そ、それ銀のカギじゃない!素手じゃないか!!」
「銀のカギ、銀のカギ、銀のカギ!」

 マウントポジションを取って一応“神様”をボコボコにする人間

「ごめんなさい、もうしません」
「わかりました。もうやりません」



「……なにこれ?」

 無限資料室で、もっとも最下層に位置する古い本を見つけたユーノ・スクライアは、書かれてある内容の余りにも稚拙さにあきれ返っていた。
 それは小説の要諦を全くといっていいほど得ていない文章であった。
 書籍自体からは魔力も何も感知できない。つまり、落書き当然の自費出版物といって良い内容だった。

「作者名は……“HPL”?一応、なのはたちの世界と同じ言語で書かれてあるけど……さては誰かがイタズラで資料室に放り込んだのかな」

 ユーノは苦笑いをし、本を「処分」と書かれたトレーに載せると、無重力空間のホールから出て行った。
 すでに勤務時間はとっくに過ぎている。
 しかし、ユーノは知るゆえも無かった。
 本を見つけてしまった事こそが、物語を紡ぎだす“カギ”であることを……。
 その日、遠く離れた地球。南極大陸、南太平洋沖、ヴァージニア州、ユゴス……因果律が捻じ曲げられ、あるはずの無いモノが出現した。

  【 続かない 】

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2007年08月13日(月) 08:37:43 Modified by beast0916




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