リリカル龍騎12話

『大きな魔力反応、来るよ!』
 そのエイミィの言葉とともに、翠屋付近の空間が歪んだ。
そして、その歪みから現れたのは…P.T事件の関係者なら知っている、しかしこの場にいるのが信じられない存在だった。
「母…さん…!」
 そう、現れたのはプレシア・テスタロッサだった。

「これで全部か…全く、これは何なんだ?」
 その頃、翠屋から数百メートルほど離れた位置。蓮とヴィータ、ザフィーラが傀儡兵を殲滅したところのようだ。
「さっきも言ったろ?『傀儡兵』っていう魔力で動く鎧だって」
「魔力…か」
 蓮は未だに半信半疑のようだ。目の前でこの二人(?)の戦闘…魔法を見たというのに。
「我らは主はやてを探す。お前はどうする?」
 この日、はやてはなのは達との用事で出かけていた。その最中に傀儡兵の襲来である。
今どこにいるのかが分からない今、手分けして探したほうがいいと言う事になり、二班に分けて探していたのである。
「俺は一度翠屋に戻る。ちょうどモンスターも出たようだからな」
 なるほど、確かに翠屋の方から例の金属音が鳴っている。
「…ザフィーラ、あたし達も翠屋に急ぐぞ」
「何?どういう事だ?」
「はやてだよ!念話で聞いたんだけど、今翠屋にいるんだ!」

 そして場所は翠屋へと戻る。
「プレシアァァァァァ!!」
 怒りをあらわにし、プレシアへと飛びかかるアルフ。
そして張っていたバリアをぶち抜き、プレシアの胸倉を掴んだ。
「フェイト、あなたの使い魔はずいぶん教育がなっていないわね」
「黙れ!あんたがフェイトにしてきた仕打ち、あたしは忘れてないよ!」
 そしてアルフが殴りかかろうとする。
だが、横から出てきた何かに右腕を絡めとられ、拳を封じられた。
「な、何だ!?」
 驚き、その右腕の方を見る。すると、緑色の何かが舌のようなものを伸ばし、アルフの腕を縛っている。
「紹介するわ…私の契約モンスター、『バイオグリーザ』よ」

第十二話『プレシア・テスタロッサ』

「このモンスター、高見沢の!?」
 見覚えがあった真司が驚く。
「知っているの?真司君」
「ああ。以前高見沢グループの社長が殺された事件があったよな?
あのモンスターは…その社長がライダーとして使ってたモンスターだ!」
 それを聞き、全員がある結論に至った。
プレシアが高見沢を殺し、新たにライダーとなったという結論だ。
だが、フェイトはそれを信じたくないらしく、プレシアに聞く。
「母さん、まさか…」
 それを皆まで聞かぬうち、プレシアが笑う。効果音があったら「にたぁ」という音だっただろう。
「ええ、そうよ。あの人を殺し、ライダーになったの。
これもアリシアを生き返らせるため…そのためならいくらでも殺すわ」
「ふざけるなぁっ!」
 アルフが激昂する。だが…
「うるさいわね…バイオグリーザ、やっておしまい」
 命令を受け、バイオグリーザが舌を振り回す。
右腕をその舌で縛られているアルフも、一緒に振り回されている。
「やめて…そんな事したら、アルフが死んじゃうよ…」
 フェイトが言うが、プレシアは止める気配が無い。
「やめてよ…!やめて!」
 言うが早いか、バルディッシュを構え、プラズマスマッシャーを放とうとする。
だが、それより早くバイオグリーザから火花と衝撃音。舌がほどけ、飛ばされるアルフ。
「ザフィーラ!」「任せろ!」
 その火花を起こした張本人、ナイトが合図をする。
それと同時にザフィーラがアルフをキャッチし、降りてきた。
「蓮、お前…」
「勘違いするな、俺はそのライダーを倒しに来ただけだ」
 そう言いながら、バイザーでプレシアの方を指す。
「ふうん、ここでライダーに会えるなんて…今日は運がいいわ」

「アルフッ!」
 ザフィーラがアルフを抱えて降りてくる。それと同時にフェイトが駆け寄った。
「心配は無用だ。見た目のケガこそ酷いが、大して血も出ていない」
 ザフィーラの言葉にほっと胸をなで下ろす。だが、新たな傀儡兵が現れ、安心する暇も与えない。
「くっ、まだいるの!?」
 そう言い、身構えるフェイト。だが、そのうちの一体が爆ぜ飛ぶ。
「あたし、参上!なんてな」
 グラーフアイゼンを手に、見得を切るヴィータ。どうやら今の一発は彼女が放ったシュワルベフリーゲンだったらしい。

「二人とも、来てくれたんやな」
「たりめーだろ。もうすぐシグナムとシャマルも来るはずだ」
「あのプレシアという女は、ライダー達が片付けるようです」
「ならうちらの仕事は…傀儡兵を叩き返す事やな?」
 そう言うと、蒼天の書を開くはやて。
「いくで、リィン!」
『はいです!』
 そしてシュベルトクロイツを構え、数体の傀儡兵めがけて攻撃魔法を放った。
「刃もて、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー!」
 先代のリィンフォースが使っていた魔法、ブラッディダガー。それは、赤い短剣を高速で操り、そして撃ち込む魔法。
それが今、数体の傀儡兵を撃ち抜き、そして爆散させた。
『マイスターはやて、今のはなんなんですか?』
「前のリィンが使ってた魔法や。試しにやってみたんやけど…何とかうまくいったわ」
 そう言ったはやては、どことなく嬉しそうな表情をしていた。
「主はやて、何故今になって傀儡兵が?」
 片っ端から鋼のくびきでなぎ払いながら、ザフィーラが問う。
縛る気がないだろうという突っ込みはこの際ご遠慮いただきたい。
「えぇと、プレシアやったかな?あの女の人が操ってるらしいで」
 シュヴァルツェ・ヴィルクングで叩きのめしつつ、はやてが答える。
「何だって?じゃあ、傀儡兵呼んでたのこいつだったのか!」
 今気付いたのか、ヴィータ。

「ライダーに会えたのが幸運とは…どうやらお前も戦う気らしいな」
「ええ…それじゃ、さっそく戦いましょうか」
 そう言うと、プレシアが翠屋の窓ガラスにベルデのデッキを向け、右腕を左に振る。
「変身!」
 そしてVバックルへとデッキを装填、ベルデへと変身した。
「ついていらっしゃい。ライダー同士の戦いはミラーワールドで、でしょう?」
 それを挑発と受け取ったのか、ナイトが先にミラーワールドへと入った。それに続いてベルデがミラーワールドへと入る。
「あっ、おい!待てよ蓮!」
 それを止めようとする真司だが、時既に遅し。すでに二人ともミラーワールドへと入ってしまった。
「どうする?城戸」
「決まってんだろ、止めに行く!」
「…お前ならそう言うと思っていた。行くぞ」
 そして真司と手塚もまた、ミラーワールドへと飛び込んだ。真司は傀儡兵を一体持って。

 ナイトがウイングランサーを手に、ベルデへと向かっていく。
そのベルデは、足のバイオバイザーからワイヤーを引っ張り出し、一枚のカードを挟んで離した。
『HOLDVENT』
「なるほど…これがこのライダーの武器なのね」
 そのカードで出たバイオワインダーを見て、感心するベルデ。その隙にナイトが一撃を見舞おうとするが…
「ぐッ!?」
 爆発魔法『フォトンバースト』が飛んだ。さすがに至近距離からのは効いたらしく、多少ふらついているようだ。
「それじゃあ…死になさい」
『FINALVENT』
 バイオグリーザの舌を足に巻きつけ、デスバニッシュの体勢に入った。そして、ナイトを空中ブランコの要領で掴もうとする。
だが、その軌道上に一体の傀儡兵が飛び込んできた。
「な!?」
 慌ててかわそうとするも、間に合わない。やむを得ずその傀儡兵にデスバニッシュを食らわせる羽目になった。
それを喰らった傀儡兵だが、ぐちゃぐちゃに砕けていた。
もしこれを喰らったのが人間だったらと思うと…いや、考えるのは止めておこう。
「ここに傀儡兵を出した憶えは無いのに…どういう事?」
 その理由はすぐにはっきりした。飛んできた方向を見ると、龍騎とライアがいたのだ。
しかも龍騎は何かを野球のピッチャーのようなフォームで投げたような格好をしている。
「…さすがに3対1は不利ね。やめましょう」
 ベルデはそう言うと、さっさとミラーワールドから出て行ってしまった。
残されたナイトが龍騎・ライアの二人に聞く。
「城戸、手塚、どういうつもりだ…ライダーは敵同士だと分かっているだろう」
「そんなの関係ない。助けたいと思ったから助けただけだ!」

「それで、あの人は一体何者なん?」
 事情を知らないメンバーを代表し、はやてが問う。
プレシア撤退後、それに呼応するかのように傀儡兵も退いていった。
そして現在、翠屋であれが何者かを聞いていたところだ。
「フェイトちゃん、やっぱり私が話したほうが…」
「いや、いいよ。この事は私の口から言わなきゃいけないんだと思うから」
 そう言うと、フェイトが話し始めた。
「あの人は…私を造った人です」

「なるほどな。あの女の娘のクローン、それがお前ということか」
「…はい」
 事情の説明がちょうど終わったところだ。
話を要約すると、フェイトはプレシアの娘・アリシアのクローンで、そのアリシアを蘇らせるためにジュエルシードを集めていたということだ。
しかも集めていた当時はその事を知らなかったという。
「多分、母さんがライダーになったのも、アリシアを生き返らせるためだと思います。
ライダーになって、最後の一人になるまで生き残れば、願いが叶うって聞きましたから」
「そうか…それで、お前は次にあの女が出たとき、どうするつもりだ?」
 シグナムの疑問ももっともだ。
その女に作られたクローンだったとはいえ、一度は母として慕った存在だ。
次に会ったとき、戦うことが出来るか。それを疑問に思っているのである。
「その時は…私が止めます。あの人は、私が止めなくちゃいけないから」

   次回予告
「弁護士の北岡秀一を呼べ」
「嘘だろ…?またこうなるのかよ…」
「一体何故こんな要求を…?」
「浅倉ァァァァッ!!」
仮面ライダーリリカル龍騎 第十三話『集結』

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2007年06月15日(金) 17:44:30 Modified by beast0916




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