冱寒小景 | ゴカンショウケイ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | 備考 | |
1 | 山峡の良夜 | ヤマカイノリョウヤ | Andante | 4分音符=72 ca. | ト長調 | 4/4 | |
2 | 鶺鴒 | セキレイ | Allegro | 4分音符=132 ca. | ニ長調 | 4/4 | |
3 | 物臭太郎 | モノグサタロウ | Andante | 付点4分音符=72 ca. | ト短調 | 12/8 | |
4 | 雪中思慕 | セッチュウシボ | Larghetto | 4分音符=63 ca. | ヘ長調 | 4/4 | |
5 | 雪後の曇り | セツゴノクモリ | Andante | 4分音符=72 ca. | ニ長調 | 4/4 | Tenor solo |
6 | 北山時雨 | キタヤマシグレ | Andante | 2分音符=72 ca. | ホ短調 | 2/2 |
「冱寒(ごかん)」とは凍り閉ざされるほどの寒さのこと。
前作「西湘の風雅」に続いての小田原に縁のある詩での希望により、「厳寒の小田原の風情」をテーマにした。
小田原男声合唱団の創立35周年のために今年作曲された最新作で、なんと「タダタケ」65作目の男声合唱組曲にあたるそうです。
タイトルは「ごかんしょうけい」と読み、「冱寒」とは非常に寒さが厳しい様を表す言葉だそうですが、北原白秋の冬に関係する詩をテキストとしていることと、昨冬の厳しい寒さの中で作曲されたためこのタイトルが付けられています。(パナムジカ新刊案内より)
前作「西湘の風雅」に続いての小田原に縁のある詩での希望により、「厳寒の小田原の風情」をテーマにした。
小田原男声合唱団の創立35周年のために今年作曲された最新作で、なんと「タダタケ」65作目の男声合唱組曲にあたるそうです。
タイトルは「ごかんしょうけい」と読み、「冱寒」とは非常に寒さが厳しい様を表す言葉だそうですが、北原白秋の冬に関係する詩をテキストとしていることと、昨冬の厳しい寒さの中で作曲されたためこのタイトルが付けられています。(パナムジカ新刊案内より)
なんといふ紫の
峡の良夜ぞ、
雪のつもつた竹、
林泉の石、
敗荷を閉ぢた氷の面。
鷭よ、朝から持ちつづけたこの閑けさを
少しでも、むざと、乱してくれるな。
月は宵から中天にあるが、
あの片われの半面の深さ、
光をひそめた紫の濃さ、
ああ、その縁に銀星がまたたく、
三千年の昔のまたたきが。
鷭よ、林泉の雪に黙んで
せめては仙家の秘薬を練つててくれ。
峡の良夜ぞ、
雪のつもつた竹、
林泉の石、
敗荷を閉ぢた氷の面。
鷭よ、朝から持ちつづけたこの閑けさを
少しでも、むざと、乱してくれるな。
月は宵から中天にあるが、
あの片われの半面の深さ、
光をひそめた紫の濃さ、
ああ、その縁に銀星がまたたく、
三千年の昔のまたたきが。
鷭よ、林泉の雪に黙んで
せめては仙家の秘薬を練つててくれ。
山川のたぎつ瀬の、
瀬の、瀬の岩に
ゐる鳥の、
尾を振る鳥の、
鶺鴒の、
ふと、その岩を飛び去んぬ。
山川のたぎつ瀬の、
瀬の、瀬の岩に
ゐた鳥の、
尾を振る鳥の、
鶺鴒の、
まだゐるやうで、寒い冬の陽。
瀬の、瀬の岩に
ゐる鳥の、
尾を振る鳥の、
鶺鴒の、
ふと、その岩を飛び去んぬ。
山川のたぎつ瀬の、
瀬の、瀬の岩に
ゐた鳥の、
尾を振る鳥の、
鶺鴒の、
まだゐるやうで、寒い冬の陽。
物臭太郎が日向ぼこ
ぬうらりくうらり温かろな。
物臭太郎が父さまも
どこかでぼんやり温かろな。
物臭太郎がお母さま、
日永に去られて温かろな。
物臭太郎がお祖父さま、
お墓の下でも温かろな。
物臭太郎がお祖母さま、
なむあみだぶつで温かろな。
物臭太郎が日向ぼこ、
物臭づくめで温かろな。
物臭太郎がひとりごと、
明日もやつぱり温かろな。
ぬうらりくうらり温かろな。
物臭太郎が父さまも
どこかでぼんやり温かろな。
物臭太郎がお母さま、
日永に去られて温かろな。
物臭太郎がお祖父さま、
お墓の下でも温かろな。
物臭太郎がお祖母さま、
なむあみだぶつで温かろな。
物臭太郎が日向ぼこ、
物臭づくめで温かろな。
物臭太郎がひとりごと、
明日もやつぱり温かろな。
雪は霏々として、蒲の穂につもり、
灰いろのへら鷺も今は姿をひそめた。
わたしは小さな簑笠を着た童、
この雪に日の暮に何処へ行つたものか、
片手にはまだ亀の子の温かみがあるのに、
遠い母里の金のラムプも見つからぬ。
ああ、霏々としてふる雪の郷愁。
灰いろのへら鷺も今は姿をひそめた。
わたしは小さな簑笠を着た童、
この雪に日の暮に何処へ行つたものか、
片手にはまだ亀の子の温かみがあるのに、
遠い母里の金のラムプも見つからぬ。
ああ、霏々としてふる雪の郷愁。
ひさしぶりの楽しい暇だ、
今日は本でも読まうよ。
なにかしら親しいこの曇りに
わたしは餅でも焼きたくなつた。
あの寒枇杷の向うの
蜜柑山の斑ら雪、
聖ヶ嶽はまつしろだが、
閑かな湿つた低空である。
見ていると、つい、近くの孟宗の上を
弧をかいて落つる小鳥もある。
硝子戸越しゆゑつめたいけれど、
ぴいちくぴいちく鳴く声もする。
炭火に片手をかざしながら、
わたしは独を楽しんでゐる。
斑らの雪も光りはしないが、
何かしねずみに匂つてゐる。
今日は本でも読まうよ。
なにかしら親しいこの曇りに
わたしは餅でも焼きたくなつた。
あの寒枇杷の向うの
蜜柑山の斑ら雪、
聖ヶ嶽はまつしろだが、
閑かな湿つた低空である。
見ていると、つい、近くの孟宗の上を
弧をかいて落つる小鳥もある。
硝子戸越しゆゑつめたいけれど、
ぴいちくぴいちく鳴く声もする。
炭火に片手をかざしながら、
わたしは独を楽しんでゐる。
斑らの雪も光りはしないが、
何かしねずみに匂つてゐる。
1
榧の梢と檜の森は
いつも時雨にすくすくと。
「北山時雨がお好きなら
釣棹かたげて鮒つりに、
その鮒買ひましよ、いくらです。
一貫五百にまけておこ、
それでも高いと突つぱなす。」
今朝の、サイサイ、寒さは身に染みる。
2
欅林の鳥の巣見れば、
いつも薄陽にさえざえと。
「北山時雨がお好きなら
釣棹かたげて鮒つりに、
その鮒買ひましよ、いくらです。
一貫五百にまけておこ、
それでも高いと突つぱなす。」
早やも、サイサイ、日暮の鐘のこゑ。
榧の梢と檜の森は
いつも時雨にすくすくと。
「北山時雨がお好きなら
釣棹かたげて鮒つりに、
その鮒買ひましよ、いくらです。
一貫五百にまけておこ、
それでも高いと突つぱなす。」
今朝の、サイサイ、寒さは身に染みる。
2
欅林の鳥の巣見れば、
いつも薄陽にさえざえと。
「北山時雨がお好きなら
釣棹かたげて鮒つりに、
その鮒買ひましよ、いくらです。
一貫五百にまけておこ、
それでも高いと突つぱなす。」
早やも、サイサイ、日暮の鐘のこゑ。
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