最終更新:ID:uLsTZkvA6g 2023年04月01日(土) 12:20:13履歴
中原中也の詩から | ナカハラチュウヤノシカラ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | 備考 | |
1 | 北の海 | キタノウミ | やや遅く,瞑想的に | 4分音符=約76 | 変ロ長調 | 5/4 | Ten. Solo |
2 | 汚れっちまった悲しみに | ヨゴレッチマッタカナシミニ | 中庸の速度で,悲しく | 2分音符=約88 | ト短調 | 2/2 | |
3 | 朝鮮女 | チョウセンオンナ | 遅く,しみじみと | 4分音符=約69 | ト長調 | 2/4 | |
4 | 雲雀 | ヒバリ | 可成り早く,明るく | 4分音符=約144 | ヘ長調 | 4/4 | |
5 | 六月の雨 | ロクガツノアメ | 遅く,美しく | 4分音符=約72 | イ短調 | 4/4 | Ten. Solo |
6 | 月の光 | ツキノヒカリ | 遅く,静かに,悲しみを超えて | 4分音符=約58 | ト長調 | 3/4 |
「汚れつちまつた悲しみに……」…『山羊の歌』(文圃堂、1934年)
上記以外……『在りし日の歌』(創元社、1938年)
初出誌
「北の海」……『歴程』第一次創刊号(1935年5月)
「汚れっちまった悲しみに」……『白痴群』第六号(1930年4月)
「朝鮮女」……『文学界』1935年5月号
「雲雀」……『文学界』1935年4月号
「六月の雨」……『文学界』1936年6月号
「月の光 その一」……『文学界』1937年2月号
上記以外……『在りし日の歌』(創元社、1938年)
初出誌
「北の海」……『歴程』第一次創刊号(1935年5月)
「汚れっちまった悲しみに」……『白痴群』第六号(1930年4月)
「朝鮮女」……『文学界』1935年5月号
「雲雀」……『文学界』1935年4月号
「六月の雨」……『文学界』1936年6月号
「月の光 その一」……『文学界』1937年2月号
海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。
曇った北海の空の下、
浪はところどころ齒をむいて、
空を呪つてゐるのです。
いつはてるとも知れない呪。
海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。
曇った北海の空の下、
浪はところどころ齒をむいて、
空を呪つてゐるのです。
いつはてるとも知れない呪。
海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む
朝鮮女の服の紐
秋の風にや縒れたらん
街道を往くをりをりは
子供の手をば無理に引き
額顰めし汝が面ぞ
肌赤銅の乾物にて
なにを思へるその顔ぞ
――まことやわれもうらぶれし
こころに呆け見ゐたりけむ
われを打見ていぶかりて
子供うながし去りゆけり……
輕く立ちたる埃かも
何をかわれに思へとや
輕く立ちたる埃かも
何をかわれに思へとや……
・・・・・・・・・・・
秋の風にや縒れたらん
街道を往くをりをりは
子供の手をば無理に引き
額顰めし汝が面ぞ
肌赤銅の乾物にて
なにを思へるその顔ぞ
――まことやわれもうらぶれし
こころに呆け見ゐたりけむ
われを打見ていぶかりて
子供うながし去りゆけり……
輕く立ちたる埃かも
何をかわれに思へとや
輕く立ちたる埃かも
何をかわれに思へとや……
・・・・・・・・・・・
ひねもす空で鳴りますは
あゝ 電線だ、電線だ
ひねもす空で啼きますは
あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ
碧い 碧い空の中
ぐるぐるぐると 潜りこみ
ピーチクチクと啼きますは
あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ
歩いてゆくのは菜の花畑
地平の方へ、地平の方へ
歩いてゆくのはあの山この山
あーをい あーをい空の下
眠つてゐるのは、菜の花畑に
菜の花畑に、眠つてゐるのは
菜の花畑で風に吹かれて
眠つてゐるのは赤ん坊だ?
あゝ 電線だ、電線だ
ひねもす空で啼きますは
あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ
碧い 碧い空の中
ぐるぐるぐると 潜りこみ
ピーチクチクと啼きますは
あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ
歩いてゆくのは菜の花畑
地平の方へ、地平の方へ
歩いてゆくのはあの山この山
あーをい あーをい空の下
眠つてゐるのは、菜の花畑に
菜の花畑に、眠つてゐるのは
菜の花畑で風に吹かれて
眠つてゐるのは赤ん坊だ?
またひとしきり 午前の雨が
菖蒲のいろの みどりいろ
眼うるめる 面長き女
たちあらはれて 消えてゆく
たちあらはれて 消えゆけば
うれひに沈み しとしとと
畠の上に 落ちてゐる
はてしもしれず 落ちてゐる
お太鼓叩いて 笛吹いて
あどけない子が 日曜日
畳の上で 遊びます
お太鼓叩いて 笛吹いて
遊んでゐれば 雨が降る
櫺子の外に 雨が降る
菖蒲のいろの みどりいろ
眼うるめる 面長き女
たちあらはれて 消えてゆく
たちあらはれて 消えゆけば
うれひに沈み しとしとと
畠の上に 落ちてゐる
はてしもしれず 落ちてゐる
お太鼓叩いて 笛吹いて
あどけない子が 日曜日
畳の上で 遊びます
お太鼓叩いて 笛吹いて
遊んでゐれば 雨が降る
櫺子の外に 雨が降る
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
お庭の隅の草叢に
隠れてゐるのは死んだ兒だ
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
おや、チルシスとアマントが
芝生の上に出て來てる
ギタアを持つては来てゐるが
おつぽり出してあるばかり
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
お庭の隅の草叢に
隠れてゐるのは死んだ兒だ
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
おや、チルシスとアマントが
芝生の上に出て來てる
ギタアを持つては来てゐるが
おつぽり出してあるばかり
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
関西学院グリークラブ80年史(PDF):初演指揮者のコメント
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