最終更新: chorus_mania 2023年02月08日(水) 02:14:04履歴
東京景物詩 | トウキョウケイブツシ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | |
1 | あらせいとう | アラセイトウ | Allegretto | 4分音符=104 | ニ短調 | 3/4 |
2 | カステラ | カステラ | Moderato | 4分音符=100 | ヘ長調 | 2/4 |
3 | 八月のあいびき | ハチガツノアイビキ | Moderato | 4分音符=96 | ト短調 | 4/4 |
4 | 初秋の夜 | ショシュウノヨル | Allegretto | 4分音符=120 | ハ短調 | 4/4 |
5 | 冬の夜の物語 | フユノヨノモノガタリ | Andantino | 4分音符=80 | ヘ長調 | 4/4 |
6 | 夜ふる雪 | ヨルフルユキ | Andante | 4分音符=72 | ニ短調 | 5/4 |
初演団体:東京大学音楽部コールアカデミー&東京大学コールアカデミーOB合唱団アカデミカコール合同
初演指揮者:多田武彦
初演年月日:1991年12月14日
東京大学音楽部コールアカデミー第38回定期演奏会(於東京芸術劇場)
初演指揮者:多田武彦
初演年月日:1991年12月14日
東京大学音楽部コールアカデミー第38回定期演奏会(於東京芸術劇場)
「冬の夜の物語」はもともと組曲『雪と花火』の1曲として考えていたものの、組曲の構成上の理由から当時は作曲しなかった詩。ただ、この詩を忘れがたかったため、34年後にこの詩を軸にした組曲『東京景物詩』を作曲した。
『カステラ』は北原白秋が後に大幅に改作した版がある。以下引用。
カステラの縁の渋さよな。
褐色の渋さよな。
粉のこぼれが眼について、
ほろほろとが泣かるる。
まあ、何とせう、
赤い夕日に、うしろ向いて
ひとり植ゑた石竹。
カステラの縁の渋さよな。
褐色の渋さよな。
粉のこぼれが眼について、
ほろほろとが泣かるる。
まあ、何とせう、
赤い夕日に、うしろ向いて
ひとり植ゑた石竹。
「カステラ」……『思ひ出』(東雲堂書店、1911年)
「初秋の夜」……『水墨集』(アルス、1923年)
上記以外……『東京景物詩及其他』(東雲堂書店、1913年):第3版からは『雪と花火』に改題。
「初秋の夜」……『水墨集』(アルス、1923年)
上記以外……『東京景物詩及其他』(東雲堂書店、1913年):第3版からは『雪と花火』に改題。
人知れず袖に涙のかかるとき、
かかるとき、
ついぞ見馴れぬよその子が
あらせいとうのたねを取る。
丁度誰かの為るやうに
ひとり泣いてはたねを取る。
あかあかと空に夕日の消ゆるとき、
植物園に消ゆるとき。
かかるとき、
ついぞ見馴れぬよその子が
あらせいとうのたねを取る。
丁度誰かの為るやうに
ひとり泣いてはたねを取る。
あかあかと空に夕日の消ゆるとき、
植物園に消ゆるとき。
カステラの縁の渋さよな、
褐色の渋さよな、
粉のこぼれが手について、手についてね。
ほろほろとほろほろと、たよりない眼が泣かるる。
ほんに、何とせう、
赤い夕日に、うしろ向いて
ひとり植ゑた石竹。
褐色の渋さよな、
粉のこぼれが手について、手についてね。
ほろほろとほろほろと、たよりない眼が泣かるる。
ほんに、何とせう、
赤い夕日に、うしろ向いて
ひとり植ゑた石竹。
八月の傾斜面に、
美くしき金の光はすすり泣けり。
こほろぎもすすりなけり。
雑草の緑とともにすすり泣けり。
わがこころの傾斜面に、
滑りつつ君のうれひはすすり泣けり。
よろこびもすすり泣けり。
悪縁のふかき恐怖もすすり泣けり。
八月の傾斜面に、
美くしき金の光はすすり泣けり。
美くしき金の光はすすり泣けり。
こほろぎもすすりなけり。
雑草の緑とともにすすり泣けり。
わがこころの傾斜面に、
滑りつつ君のうれひはすすり泣けり。
よろこびもすすり泣けり。
悪縁のふかき恐怖もすすり泣けり。
八月の傾斜面に、
美くしき金の光はすすり泣けり。
月は十六夜、
ほんの欠け初め。
稲妻だ、幽かな。
濡れて光るわづかの星、
綿雲のうす紫。
稲妻だ、幽かな。
絶えずまたとどろく海、
嵐の名残。
稲妻だ、幽かな。
月はいよいよ澄み、
揺れそよぐ斜丘の小竹、
稲妻だ、幽かな。
ああ、そして一面の虫の音、
初秋の露。
稲妻だ、幽かな。
ほんの欠け初め。
稲妻だ、幽かな。
濡れて光るわづかの星、
綿雲のうす紫。
稲妻だ、幽かな。
絶えずまたとどろく海、
嵐の名残。
稲妻だ、幽かな。
月はいよいよ澄み、
揺れそよぐ斜丘の小竹、
稲妻だ、幽かな。
ああ、そして一面の虫の音、
初秋の露。
稲妻だ、幽かな。
女はやはらかにうちうなづき、
男の物語のかたはしをだに聴き逃さじとするに似たり。
外面にはふる雪のなにごともなく、
水仙のパツチリとして匂へるに薄荷酒青く揺らげり。
男は世にもまめやかに、心やさしくて、
かなしき女の身の上になにくれとなき温情を寄するに似たり。
すべて、みな、ひとときのいつはりとは知れど、
互みになつかしくよりそひて、
ふる雪の幽かなるけはひにも涙ぐむ。
女はやはらかにうちうなづき、
湯沸のおもひを傾けて熱き熱き珈琲を掻きたつれば、
男はまた手をのべてそを受けんとす。
あたたかき暖炉はしばし息をひそめ、
ふる雪のつかれはほのかにも雨をさそひぬ。
遠き遠き漏電と夜の月光。
男の物語のかたはしをだに聴き逃さじとするに似たり。
外面にはふる雪のなにごともなく、
水仙のパツチリとして匂へるに薄荷酒青く揺らげり。
男は世にもまめやかに、心やさしくて、
かなしき女の身の上になにくれとなき温情を寄するに似たり。
すべて、みな、ひとときのいつはりとは知れど、
互みになつかしくよりそひて、
ふる雪の幽かなるけはひにも涙ぐむ。
女はやはらかにうちうなづき、
湯沸のおもひを傾けて熱き熱き珈琲を掻きたつれば、
男はまた手をのべてそを受けんとす。
あたたかき暖炉はしばし息をひそめ、
ふる雪のつかれはほのかにも雨をさそひぬ。
遠き遠き漏電と夜の月光。
蛇目の傘にふる雪は
むらさきうすくふりしきる。
空を仰げば松の葉に
忍びがへしにふりしきる。
酒に酔うたる足もとの
薄い光にふりしきる。
拍子木をうつはね幕の
遠いこころにふりしきる。
思ひなしかは知らねども
見えぬあなたもふりしきる。
河岸の夜ふけにふる雪は
蛇目の傘にふりしきる。
水の面にその陰影に
むらさき薄くふりしきる。
酒に酔うたる足もとの
弱い涙にふりしきる。
声もせぬ夜のくらやみを
ひとり通ればふりしきる。
思ひなしかはしらねども
こころ細かにふりしきる。
蛇目の傘にふる雪は
むらさき薄くふりしきる。
むらさきうすくふりしきる。
空を仰げば松の葉に
忍びがへしにふりしきる。
酒に酔うたる足もとの
薄い光にふりしきる。
拍子木をうつはね幕の
遠いこころにふりしきる。
思ひなしかは知らねども
見えぬあなたもふりしきる。
河岸の夜ふけにふる雪は
蛇目の傘にふりしきる。
水の面にその陰影に
むらさき薄くふりしきる。
酒に酔うたる足もとの
弱い涙にふりしきる。
声もせぬ夜のくらやみを
ひとり通ればふりしきる。
思ひなしかはしらねども
こころ細かにふりしきる。
蛇目の傘にふる雪は
むらさき薄くふりしきる。
タグ
コメントをかく