作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

ピアノ伴奏付同声三部合唱組曲「白き花鳥図」(作詩:北原白秋)

白き花鳥図シロキカチョウズ
1黎明レイメイ
2白鷺シラサギ
3白牡丹ハクボタン
4鮎鷹アユタカ
5柳鷺リュウロ

作品データ

作品番号:T21:M19nP
作曲年月日:1964年?月?日

初演データ

初演団体:関西学院グリークラブ
初演指揮者:北村協一
初演伴奏者:沖本ひとみ
初演年月日:1965年1月16日
第33回関西学院グリークラブリサイタル(於神戸国際会館)

楽譜・音源データ

音楽之友社「合唱サークル名曲選 20」(1968年刊、絶版)
所蔵先……東京文化会館音楽資料室、宮城県図書館、仁愛女子短期大学附属図書館

作品について

ピアノ付き同声合唱(初演は男声だが、出版後は女声での演奏がほとんどであった)。一部の曲目を差し替えてアカペラ混声版男声版に改作、のち混声・男声合唱版を基にピアノ付き女声合唱版に再び改作。アカペラ男声合唱版「白き花鳥図」初演時の演奏会プログラムに作曲者が記した所では、「白き花鳥図」を同声3部合唱ピアノ伴奏付で作曲・出版したあと清水脩から「君はアカペラだけ書くように」との注意を受けたとのこと。アカペラ混声合唱組曲に改作する際、終曲『柳鷺』をはずし『数珠かけ鳩』『老鶏』を加え6曲構成にし曲順も再構成された稀な大幅改訂のケースである。

タイトルは詩集の一項より。
『黎明』には“印度画趣”、『数珠かけ鳩』には“唐画”の副題が添えられている。
詩の出典
『海豹と雲』(アルス、1929年)

歌詩

黎明
白き鷺、空に闘ひ、
沛然と雨はしるなり。

時は夏、青しののめ、
濛濛と雨はしるなり。

早や空し、かの蓮華色、
二塊の、夢に似る雲。

くつがへせ、地軸はめぐる、
凄まじき銀と緑に。

白き鷺空に飛び連れ、
濛濛と雨はしるなり。
白鷺
白鷺は、その一羽、
睡蓮の花を食み、
水を食み、
かうかうとありくなり。

白鷺は貴くて、
身のほそり煙るなり、
冠毛の払子曳く白、
へうとして、空にあるなり。

白鷺はまじろがず、
日をあさり、おのれ啼くなり、
幽かなリ、脚のひとつに
蓮の実を超えて立つなり。 
白牡丹
白牡丹、大き籠に満ち、
照り層む内紫、
豊かなり、芬華の奥、
とどろきぬ、閑けき春に。

蝶は超ゆ、この現より、
うつら舞ふ髭長の影。
昼闌けぬ。花びらの外、
歎かじな、雲の驕溢を。

白牡丹、宇宙なり。
また 薫す、専なる白。
この坐、ふたつなし、ただ。
位のみ。ああ、にほひのみ。
鮎鷹
鮎鷹は多摩の千鳥よ、
梨の果の雫く切口、
ちちら、ちち、
白う飛ぶそな。

鮎の子は澄みてさばしり、
調布の瀬瀬のかみしも、
砧うち、
砧うつそな。

鮎鷹は初夜に眼の冴え、
夜をひと夜、あさりするそな。
ちちら、ちち、
鮎の若鮎。

水の色、香る泡沫
眉引のをさな月夜を
ああ、誰か、
影にうかがふ。
  註 多摩川のほとりには梨畑多し
柳鷺
鷺は棲む、正身の
白き聖。

しづりうつ雪の柳に
やや燻りて。

つくづくと、うち見やる
水、枯葦、

まさしくもみ冬なり。
白ひと色。

鷺は棲む、羽ごろもの、
笠の翁。

いとどしく、薄墨の
空飛ぶもの、

雀かと、眼は放て、
また眺めず。

言問はず、立ち舞はず、
日のくれぐれ。

鷺は燃ゆ、白毫の
明る眉間。

リンク

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます