作品データ
作品番号:T53:M43n
作曲年月日:1982年10月15日
吉村信良氏の昭和56年度京都市芸術奨励賞受賞を祝し献呈
初演データ
初演団体:京都産業大学グリークラブ
初演指揮者:吉村信良
初演年月日:1983年1月9日
京都産業大学グリークラブ第14回定期演奏会(於京都会館第2ホール)
作品について
合唱コンクールの常連団体からの委嘱作品ということを意識してか、他作品と比べて際立って難易度が高く、挑戦的な作風になっている。多田にしては特殊な技法に凝った作品で人数も必要なためか滅多に演奏されない。
「雷雨」ではクラスターに近い和音で稲光を表現したり、16分音符の難解な激しい動きでおどろおどろ雲や雨の表現を音だけでなく、譜面の見た目から感じるものが曲想を反映している。いずれも詩の持つ緊張感をいかんなく表現しようと試みている。
「秋」ではクラスターを多用し、虫の声を表現している。
「鬼女」は12声部(4部×3群)にまで分かれ、崖へのこだまを表現している。
「龍安寺方丈の庭」は終始単旋律である(ただし完全な斉唱ではなく、部分的にパートソロやオクターブユニゾンが使われている)。また詩に充ちている静けさと厳かさ、存在感を無声音の「KWO」で表現することを歌い手に求める、一種のチャンスオペレーションとなっている。
第7,8,9曲目の「竹」はアタッカで繋げて演奏される。
第8曲の「竹」は原詩によるテクストを歌うのが独唱だけで合唱はバックコーラスのハミングしか歌わない。
詩の出典
「雷雨」「鬼女」「龍安寺方丈の庭」「オホーツク」……『天』(新潮社、1951年)
「秋」……『絶景』(青磁社、1948年)
「岩手荒巻」「竹」「竹」「竹」……『牡丹圏』(八雲書林、1948年)
「冬」……『日本沙漠』(1948年、青磁社)※「竹林寺幻想」という連作詩の一篇。
なお「冬」については『牡丹圏』に収録される際に改作されており、改作版が「草野心平詩集」(豊島与志雄編 新潮文庫)に掲載されている。改作版の詩は本曲で用いられているものと大きく異なる。