自律神経系の解剖 
- 自律神経系は解剖学上明らかに二種類の系、すなわち交感神経と、副交感神経に分けられる。
節前繊維は有髄線維、節後繊維は無髄線維である。
- 交感神経は胸髄、腰髄の側角（側柱）に存在する細胞体から前根をとおり末梢に分布する。
- 副交感神経は中脳、橋・延髄、仙髄から発し、末梢に分布する。
- 中脳からは動眼神経、
- 橋・延髄からは顔面神経、舌咽神経、迷走神経のそれぞれの脳神経核から出、
- 仙髄からは側角に存在する細胞体から前根を通り、末梢へ分布する。
- 一般に交感神経節は比較的中枢に近く、副交感神経節は効果器官の近く、又はその中に位置する。
自律神経系及び運動神経の化学伝達物質による分類
- 神経伝導
これは細胞膜内外の陽イオンと陰イオンの濃度差が関与している。
この状態での細胞膜の電位を静止膜電位といい、ニューロンでは−70〜−90mVを示す。
- 細胞が刺激を受けると、Na+チャネルが開口し、濃度勾配にしたがってNa+が細胞外から細胞内に流入する。
細胞内の電位は急速に逆転して＋に傾き、30〜50mVで最高になる。このとき電位を活動電位とよび、活動電位を生じる過程を脱分極という。
逆転した膜電位は隣接した局所電流を発生させ、この局所電流が刺激として働き、隣接部の脱分極を引き起こし、神経伝導が行われる。 - Na+チャネルの開口に少し遅れて、K+チャネルの開口が起こり、K+が細胞内から細胞外へ流出する。 細胞内の電位は再び−に戻る。 この過程を再分極という。
- 再分極直後の細胞は細胞内外のNa+、K+の濃度勾配が活動電位発生前よりも減少している。 このままでは次に刺激があっても十分に脱分極できないので、Na+、K+-ATPaseの働きにより、細胞内にK+を取り込み、細胞外にNa+を排出する。
交感神経系に作用する薬物
1,アドレナリン作動性神経のシナプス伝達機構
一般的に交感神経系の節前繊維はコリン作動性、節後繊維はアドレナリン作動性である。
一般的に交感神経系の節前繊維はコリン作動性、節後繊維はアドレナリン作動性である。
- 神経刺激により膜電位依存性Ca2+チャネルが開口し、Ca2+が神経終末に流入する。
- アミン顆粒（シナプス小胞）から開口分泌によりNAｄが遊離する。
- 遊離したNAdが、シナプス間隙に拡散し、NAd受容体と結合する。
- シナプス後膜の脱分極により、効果器を興奮させ、生理作用を示す
- 遊離したNAdは、大部分がそのまま神経終末のアミントランスポーターを介して再取り込みされる。
- シナプス間隙のNAdが増すと、神経終末のα2受容体と結合し、NAdの遊離を抑制する。
カテコールアミンの生合成・代謝
- カテコールアミン
生体内に存在するカテコールアミンはドパミン（DA）、ノルアドレナリン（NAd）、アドレナリン（Ad）などがある。 - カテコールアミンの生合成
NAdは、生体内ではアドレナリン作動性神経に取り込まれたチロシンより合成され、ドパ、ドパミンと変化し、アミン顆粒に取り込まれ、NAdとなって貯蔵され、必要に応じて遊離される。
副腎髄質および中枢神経内では、さらにメチル化されてアドレナリンになる。
生合成系の律速段階の酵素はチロシンヒドロキシラーゼ（TH）である。
- カテコールアミンの代謝
神経終末から遊離されたNAdは、大部分がそのまま神経終末のアミントランスポーターを介して再取り込みされる。アミントランスポーターを阻害する薬物にコカイン、三環形抗鬱薬がある。
再取り込みされたNAdは、モノアミンオキシダーゼ（MAO）により酸化的脱アミノ化される。
さらに一部は神経外に出され、COMTにより代謝される。
またシナプス間隙のNAdは、シナプス間隙でCOMTにより代謝されるほかCOMT活性の高い肝や腎で代謝される。
COMTで代謝されたNAdもMAOの作用をうけることがある。 - カテコールアミンの分解酵素
モノアミンオキシダーゼ（MAO）
・MAOは、神経終末、副腎髄質クロマフィン細胞（クロム親和性細胞）やその他の細胞のミトコンドリアの外側に多く存在する。
・カテコールアミンの酸化的脱アミノ化することにより、不活性化する。
分類
MAOA：ノルアドレナリン、セロトニンを基質とする。
MAOB：ドパミン、チラミンを基質とする。
カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ（COMT）
・COMTは、シナプス間隙、血液、肝、腎の可溶性分各に存在する。
・カテコールアミンのｍ位の水素基をメチル化する。
交感神経興奮薬
基本構造：フェニルエチルアミン
- 3位、4位に両方にOH基あり（ジ置換）
α・β刺激作用最強、中枢作用なし、経口投与無効、COMTにより代謝される。 - 3位又は4位のいずれか一方のみにOH基あり（モノ置換）
受容体刺激作用はジ置換よりも弱い。 - 3，4位いずれにもOH基なし
消化管吸収増大、交感神経興奮量以下で中枢興奮作用を発揮する。 - 一級アミン（-NH2）
α受容体刺激作用強力 - 二級アミン（-NH-R）
Rの大きさに比例してβ受容体刺激作用増強 - α位炭素のメチル化
MAOによる影響減少。 - β位炭素の水酸化
α・β受容体刺激作用増強。水溶性の増大により中枢興奮作用減弱。
直接交感神経興奮薬
アドレナリン
ノルアドレナリン
イソプレナリン
ノルアドレナリン
イソプレナリン
- α刺激薬
- フェニレフリン
α1刺激作用強力
作用はアドレナリンより弱いが（約１/５）、COMTにより代謝も神経終末への再取り込みも受けないため、持続時間は長い。
経口投与可能 - ナファゾリン
α刺激作用を持ち局所作用が強い。
［応用］結膜・鼻粘膜の充血 - エチレフリン
α、β刺激作用を持つ。 - メトキサミン
α1刺激作用をもつ。作用は弱いが持続的である。
- フェニレフリン
- β1刺激薬
- ドブタミン
β1刺激作用を持ち、心収縮力増大作用を示す。
ドパミン構造を有し、肝のCOMTにより急速に代謝される。 - デノパミン
心臓のβ1受容体を選択的に刺激する。
肝のCOMTにより分解されないので経口可
- ドブタミン
- β2刺激薬
- サルブタモール
β2受容体を比較的選択的に刺激する。
気管支を拡張する。 - トリメトキノール
気管支β2受容体を刺激（β2＞β1）
［応用］気管支ぜんそく - テルブタリン
β2受容体を比較的選択的に刺激する。［応用］気管支ぜんそく - プロカテロール
β2受容体刺激作用を持つ。
他のβ刺激薬に比べてβ2受容体に対する選択性が強く、強力かつ持続的 - リトドリン
子宮平滑筋のβ2受容体を選択的に刺激することにより子宮弛緩作用を現し、子宮運動を抑制する。
- サルブタモール
間接型交感神経興奮薬
チラミン
トランスポーターで交感神経終末に取り込まれ、アミン顆粒でNAdと置き換わり、NAd遊離を促進し交感神経興奮作用を示す。
トランスポーターで交感神経終末に取り込まれ、アミン顆粒でNAdと置き換わり、NAd遊離を促進し交感神経興奮作用を示す。
混合型交感神経興奮薬
- エフェドリン
- メチルエフェドリン
- ドパミン
交感神経遮断薬
- プラゾシン
- タムスロシン
- ブナゾシン
- ナフトピジル
副交感神経系に作用する薬物
コリン作動性神経のシナプス伝達機構
アセチルコリンの生合成と代謝
生合成
代謝
副交感神経興奮薬（コリン作動薬）
直接型副交感神経興奮薬
間接型副交感神経興奮薬
副交感神経遮断薬（抗コリン薬）
ベラドンナアルカロイド（アトロピン、スコポラミン）
アトロピン代用薬
自律神経系に作用する薬物
自律神経刺激薬
自律神経遮断薬
競合的節遮断薬
脱分極節遮断薬
問題
交感神経系
１、コリン作動性神経終末へはアセチルコリンが取り込まれ、アドレナリン作動性神経終末へはノルエピネフリンが取り込まれる。
２、コカインはノルエピネフリンの昇圧反応を増強する。
３、エピネフリンは、副腎皮質で生合成されて、交感神経の興奮のより血液中に放出され、マンデル酸に代謝され、尿中に排泄される。
４、エピネフリンは血管平滑筋のα受容体に直接作用することで血管を収縮させる。
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