yuji dogane / 銅金裕司 / media art / メディアアート/環境/CO2 - 美容音楽


beauty music 美容音楽 

                       
来場すると、あなたは両手に銀の手袋をはめる。
あなたは鏡の前に座って、頬に両手をあてて、頬杖をついて眼をつぶる。
そしてまず、あなたは心を静かにして、まるで植物になったかのような気分を想像する。それから自由に連想をはじめる。
この状況であなたの両方の頬からの生体電位を測り、その生体電位で、音楽が生成される。銀の手袋から採取したあなたの生体電位はだれのものとも違い、個性的で、自分だけの表現である。これは、十人十色で、しかも精度よく採取できる。そして、脳波を反映している印象が強い。というわけで、あなたの精神の状態が頬の生体電位に影響を与えて、それが、あなたの肌の状態になり、それが音楽に変換され、あなただけの音楽が自らの美容にどのように影響を与えるか、というコンセプトである。とはいえ、現実は、あくまでも、あなたの肌の様子が知れるだけである。たぶん、beauty music が美しいときは、あなたの身体も元気ハツラツであり、ブルーなときは静謐な音楽を奏でるだろう。
そこで、心と精神のもちようで、明日への活力が生まれ、その音楽がひいては美容に貢献するだろうと想像している。しかし、まだ実績が少なすぎる。この展示はその実験も兼ねることになるだろう。そして、自分の皮膚が奏でる音楽をじっくり聞き込んで、そこから、心に湧いて出てくる自分らしいイメージと、それに伴う美しい音楽を奏でるように試みること。曇りのない眼で世界を見る訓練にもなるだろう。確かに音楽は人の精神をどこかに連れて行ってくれるが、音楽の重要さは聞くだけではなく、心と精神で奏でてみることだと思う。
さて、肌や皮膚の活性化を考えるとき、もともと肌や皮膚は脳の一部であったということを思い出したい。正しく言うと同じ根っこに脳と皮膚は由来している。そのおおもとが2つに分かれ、一方は脳に、一方は皮膚になってゆく。これは、発生生理学で明らかにされている。人の脳は主体となり感情を持ち、意識を持ち、理性を持つにいたった。一方、皮膚はどうだろうか?それは植物的で、原始的に思える。しかし、五感とか気配などというものは皮膚感覚に属するだろう。すなわち、肌を活性化し、五感を研ぎ澄ませることは、もしかしたら、思い込みが激しく堂々巡りを繰り返す現代人の脳をリセットして、意識や理性の向こうにある新しい精神を生み出すのに好適かもしれない。
beauty music は、聞いただけでは美しくはなれない。よくある環境音楽やイージーリスニングではない。そうではなく、beauty music は自らの肌と美しくなりたいという願望とが奏でる音楽である。
















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