とりあえず9

(まずい、我慢できない)

元天使、現人間の彼は年頃の男にありがちな悩みに苛まれていた。人間に成り下がりエルギオスを倒してしまった後、彼は日々煩悩との戦いを続けなければならなかった。

(何故だろう、女の子たちを自分のものにしたい)

彼以外のパーティのメンバーは全て女、とりわけ賢者にたいしてこの気持ちを抱いた。まだ、天使であったとき彼は目に涙を浮かべた賢者に抱きしめられたことがあった。このとき彼は「まだ」賢者の気持ちを理解できていなかった。しかし、今なら理解る。

最近は仲間たちと共に宝の地図を手に入れ宝探しで生計を立てるが賢者の視線を常に感じている。休息を取る際も賢者は彼の隣に座り物欲しそうな顔をする。宿に泊まるときも自分の寝床にもぐりこんできた彼女とベッドを共にすることも最近では常だ。

(彼女が欲しい、でも・・・)

天使は、決心がつかなかった。元天使の性だろう、可憐な少女を汚す、欲望をむき出しにするその行為を躊躇せざるを得なかった。

こんな生活を何日も続けているとお互いに欲求不満でおかしくなりそうだった。彼女も自分もお互いを想いあっている、なのに手が出ない。意気地なしの自分に自己嫌悪になり、ベッドの中で二人は眠れない日々を過ごした。

突破口を開いてくれたのは仲間たちだった。
ある朝、天使は女性の声で目を覚ました。いつもは天使がはじめに起き、朝の弱い賢者を優しく起こす。こんな、二人が大好きな時間も最近はとても切なかったのだが今朝は様子が違った。
起きろと耳元で何度も囁かれ天使は重いまぶたを開けた。そこに仲間のパラディンと魔法戦士がいた。何か企んでいる顔だ。長い間一緒に旅をして修羅場を抜けてくればそれくらいわかる。彼女らは天使に起きて顔を洗い着替えてくるように命じた。大切な話があるとのことだ。
顔を洗い、何のようかと尋ねると
「いいかげんにしなさい。」
とのことだ。二人は賢者を起こさないようにしていたので話の内容はだいたい見当がついていたのだが、やはり恥ずかしい。一気に目が覚めてしまった。

要は今夜、賢者と一つになれと。そのために大分前からいろいろ二人は準備をしていたらしい。
「今日は夕方まで宿の外で時間を潰してきなさい、その間に賢者にレクチャーするから楽しみにしておいてね。」
魔法戦士がニコニコ、いやニヤニヤしながら言いやがった。自分の顔が熱くなるのを感じた。
「ちょっと待って!まだ、心の準備が・・・」
うろたえると
「なーに女々しいこといってるのよ!あんたみたいなのは背中を一押ししてやならいといつまでも決心がつかないタイプなのよ!ありがたく思いなさい!!!」
パラディンが畳み掛けるようにいった。そして、宿を追い出されてしまった。

街を歩きながら天使は胸の動機が激しくなるのを感じた。エルギオスに立ち向かったときと似ていたが、冷や汗を流していたあのときとは違い体が熱い。パラディンも魔法戦士もやはり気付いていたのだ。

元天使にもかかわらず色好みな自分への罪悪感、賢者との関係を指摘された羞恥、そして今夜結ばれることへの不安と期待が入り混じっている。
街をブラブラしたが時間はまったく過ぎない、正直今夜のために眠りたいのだがこんな状態では眠れるわけがない。錬金をしようと宿に戻る。

宿のカウンターで錬金を始める。あらかたの材料はあったので星のかけら、天使のソーマ、幻魔石を錬金する。頭を使ったおかげで少し落ち着いてきた。

袋の中を整理しているとふと夢見の花が手についた。そうだこれを使えば・・・。
天使はカウンターのリッカに夜まで休ませて欲しい、夜になったら起こして欲しいとお願いし、賢者たちとは別の部屋で休むことにした。

ベッドに横になり夢見の花を見つめた。まだ、昼にもなってはいなかったが今夜のために早く寝なければならない。天使はおもむろに夢見の花を顔に近づけ香りをかぐ、甘く心地よい香りが鼻に広がり眠りの波にさらわれた。

起きて、という声に目を覚ます。リッカの顔が目の前にあった。ついに賢者と結ばれる夜になったのだ。
妙な不安を感じる。夢は見なかったのかそれとも覚えていないのかわからない。リッカにありがとうといい風呂場に向かう。いつもより丁寧に体を洗う。

体を洗っている際、賢者との今後への不安が何度も頭を過ぎる。しかし、天使は二人が過ごした時間を思い出し、二人はこの宿で出会い、そして結ばれるのだと自分に言い聞かせた。体を拭き賢者のいる部屋に向かう。

ノックをすると少し高い声でどうぞと返事がした。賢者はイスに座り本を読んでいたようだ。絹のローブを身につけ髪を下ろした姿はとても挑発的だ。窓からの月の光に照らされ賢者の顔が映える。近づき抱きしめあう。
「君が欲しい。」
天使の声は静かだがはっきりと響いた。
「優しくしてよね。んっ・・・・」
彼女の言葉と同時に天使はより強く抱きしめる。二人の動悸は激しくなるばかりだ。天使は賢者の体を抱きかかえそのままベッドへと押し倒した。
布擦れの音が響き、賢者は目をぎゅっとつぶり天使のなすがままだ。

天使は賢者の頬に手を添え、賢者は目を開き互いに見つめあう。顔を近づけ唇を奪う。
ちゅっ、と音が鳴り数秒見つめあった後今度は激しく貪りあう。賢者の髪から香る甘い香りが鼻に広がり、舌を絡めあう。
こんなことを何分か続けると互いの目線は互いの目しか見えなくなる。唇を離すとお互いの名前を呼び合う。
「天使・・・・・。」「賢者・・・・・。」
賢者の息は完全に荒く、顔色も上気してしまっている。もうその気になっているのだ。このまま賢者を貪りつくしたいと思ったが、自分を抑え首筋にキスをする。

初めてのとき、前戯は念入りに・・・・天使時代に夜の人間を観察して学んだ。

耳の筋を舌でなぞり、耳を弄り、首筋に何度もキスをする。手を賢者の胸と腰に添えて細い肢体を味わう。
「だっめ・・・!もっと優しく・・・・!」
賢者の抗議があるが説得力がなさ過ぎる。彼女はまったく抵抗しない。それどころか彼女の手は天使の背中にしっかりと絡みついている。

成長しきっていない胸を揉みしだき、先端を指でつまみ弄る。賢者はビクッと震え目に涙を溢れさせていた。
「・・・・優しくして・・・・・お願い・・・・。」
今にも泣き出しそうな顔を見て天使はますます興奮する。主導権は天使が握り賢者は為されるがままであった。口では抗議をしても体は正直で、天使に対し抵抗することもなく体が火照る一方である。

絹のローブが完全にはだけ、胸があらわになる。
「あっ・・・・やぁ・・・・。」
成長しきっていないとはいえ充分に大きい。天使は胸の間に顔をうずめ、胸を揉みしだきながらキスの雨を降らせた。
「あっつ・・・んっ、くっ・・・・・あぁん!ダメッ・・・・止めて!」
キスがされるたびに賢者は可愛く鳴く。あまりに可愛いので何度も繰り返すと鳴かなくはなるがビクッ体を震わせ、息は荒く天井を見つめるようになってしまった。

ここらで小休止しよう、そう思い天使は胸にうずめていた顔を上げて賢者の顔を見た。
目が合いしばらく見つめあう。
「ちょっとは手加減してよ・・・・・・。」
乱れた息を整えながら賢者はいった。
「ゴメン、悪かったよ。」
天使の顔に悪びれた様子はない。

そのうち手と手が絡み合い、手が重なりおさまりかけた欲望がくびをもたげ始めた。
頃合とみた天使は賢者の下半身へと手を伸ばす。そこはもう充分に濡れていたが天使はそっと指を侵入させる。
ビクンと賢者は身を反らすが、天使はお構いなしに指を動かす。彼女が必死に声を上げないよう耐えるのを楽しんでいた。
いやらしい、水っぽい音が静かな部屋に響く。
賢者の口を自分の口で塞ぎ、痙攣する彼女を自分の体で押さえつける。いやらしい音にベッドがギシギシと軋む音が混じる。

「プハッ・・・・・。」
口を離し互いをまた見つめあう。
「いいよ・・・・来て・・・・。」
賢者は天使の首を両手で抱きしめ彼の耳元で囁いた。いつもの賢者の可愛らしく透き通った声だ。もう後は本番だけである。天使はうなずき彼の欲望をむき出しにする。もう我慢できなかった。

今度は本当に優しくゆっくり彼女を気遣いながら秘所に侵入する。グググッグっと体に彼女の中に入る音が響く。前戯をじっくりとしたおかげかあまりきつくはなく彼女の顔を見る余裕はあった。
繋がりが深くなるにつれ、賢者の顔が辛そうになり、自分を抱きしめる手に力がはいってくるのがわかる。

「・・・・大丈夫?」
このときの天使は本当に優しく、前戯のときの激しさが嘘のようだった。
「・・・・う・・ん、大丈夫よ。天使・・・。(・・・っ天使・・・のが私の体の中に全部・・・)」
賢者は強がっているようだ。そんな虚勢を見せられるとまた主導権を握っていじめたい、そんな気持ちが溢れる。
賢者はもうこれ以上動くと果ててしまいそうだった。天使は彼女の背中に手を回し、力いっぱい引き寄せ強く抱きしめた。二人は必然的に深く繋がりあう。

「うぁっ!!!・・・いやッ・・・だめ・・・あああああああ!!!!」
賢者の泣き声が響く。天使は激しく痙攣する彼女を押さえつけ動き出した。
「はん!・・・そんなっ!だめっ・・・天使ぃ・・・・・あぁん!!!」
賢者の艶っぽい声が部屋に響き、天使をさらに興奮させる。

「見える?・・・・ッ・・賢者ぁ!君の中にボクは今!」
「わかる!・・・天使が私の中にみっちり入っているのが・・・わかる!」
さっきまで経験したことのない感触に戸惑っていた賢者であったがいやらしい音とベッドが軋む音、二人の甘い声が混じりあううちに女の悦びを感じ、天使に身をまかせ、快楽に堕ちてしまった。

二人は立ち昇る甘い香りに酔いしれ、自我を失いながら互いを貪りあう。今すぐ自分の前にいるこの異性が欲しい、ただ一つの感情に支配されていた。

だが、この甘い時間はそう長く続かなかった。天使は下半身の力が抜け快楽が失われるのを感じ、賢者も自分の中に何かが注がれるのを感じた。二人は果て、ベッドの中で荒い息をして寄り添う。

「ごめん・・・・おかしくなっていた。あまりにも君が可愛かったから・・・・。」
「もっとマシな言い訳をしてよ・・・・。」
「・・・・・・手厳しいね。」
賢者の汗ばむ額や頬に貼りついた髪をそっと拭う。二人は幸せに満ち足り、賢者は天使に身をまかせ彼の腕の中で幸せを噛みしめていた。
息が落ち着きこのまま寝てしまおうかと思ったがふとあることを思い出した。
「そういえばパラディンと魔法戦士のレクチャーは役に立った?」
ニヤニヤと笑いながら唐突に天使は意地悪な質問を賢者にする。賢者の汗で湿った顔がまた上気する。
「あっ・・もう全然役に立たなかったわよ。あなたに攻められるだけで余裕がなかったし。」
「どんなことを習ったの?」
「え?・・・や・・・いや、その・・・男の人を喜ばせる・・・・テクニック・・・とかよ。」
賢者の顔は今やトマトのようだ。

「じゃあそれをしてもらおうかなー。」
天使の目が獲物を追い詰めた狼のようにギラギラしだす。賢者の手首をつかみ、首筋にキスをする。

「ちょっと!まだやる気なの!?」
「まだ夜は長いよ。男の前でそんなレクチャーを受けたなんてことを暴露した君が悪いんだよ。ふふふっ、今夜は諦めて、お互い自分に素直になってトロトロに融けて混ざりあおうよ。」
天使の声で色魔のような言葉を賢者の耳元で囁く。

「いやーーー!だめよ!やめなさい、この堕天使!!!」
賢者の断末魔が部屋に響き、今度は本気で抵抗されたが天使はやめるつもりなどなく、彼女を骨の髄までしゃぶりつくしたい欲望に従う。
結局、おたのしみは賢者が力尽き天使の腕の中で眠ってしまうまで続いた。





この報いは翌日の昼に訪ねてきたパラディンと魔法戦士にセントシュタインの家をプレゼントされ、賢者が危ない日であると告げられる形で受けることになる。
2011年04月04日(月) 00:07:24 Modified by palta




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