ある晴れた日のお昼前。
昨日帰国したばかりの衣梨奈を含めた生田家4人は、遥と朱音の顔を見せに譜久村家の黒塗りのセンチュリーに乗って実家に向かっていた。

「いつ乗っても緊張すると…」と超高級車にガチガチになりながら後部座席の右側に乗る衣梨奈。
「大袈裟だよwリラックスして?」と同じく後部座席の左側に座り、慣れた様子でスマホをいじりながらくつろぐ聖。
「うぉー!すげー!」と助手席のジュニアシートに乗り、車の内装や譜久村家の敷地内に目を輝かせる遥。
「パパーママーおしっこー」と父母に挟まれチャイルドシートに座る朱音。

「うわぁー!もうちょっとで着くけん我慢すると!ここで漏らしたらシート代いくらかかるか分からんと!」
「がんばるー」
「うん、ファイトっちゃ朱音!…ってかいつになったら聖ん家着くと?門くぐってだいぶ経つっちゃけど。」
「うーん、聖も久しぶりだから忘れちゃったw」
「ハハハ…東京ドーム何個分とかいう次元やからな…」
 
「はーい!うんてんしゅさん しつもーん!」
「はい何でしょう、ぼっちゃま。」
「ぼっちゃまってw 遥でいいっすよーw」
「では、遥様。」
「この車いくらぐらいするんすか?」
「お答えします。車体だけでは1200万ほどですが大幅に手を加えてあるのでその価値は3倍、4倍とも言われ、具体的な価格は私にも分かりません。」
「手がでるのぉ?! ルパソカイザーみたいに?!」
「いえ、手は出ません。ただこちらは普通の窓ガラスに見えますが当然防弾性になっておりますし、タイヤは地雷を踏んでもパンクしませんし、
 万が一トラックと正面衝突してもトラックの方が大破する程度の強化ボディにカスタマイズされておりますので…」
「なーんだロボにはならないのかーつまんねー。」
「遥、運転手さんに失礼なこと言ったらいけんと。」
「ごめんなさーい…」
「いえいえ衣梨奈様、実際面白いものではありませんし防弾ガラスも強化ボディも使わないに越したことはありませんから。」
「なるほど…ってか1200万の3倍、4倍って方に衣梨は目玉飛び出そうになったったちゃけどね…一体衣梨は何人ぶっ飛ばさなきゃ稼げん額か分からんと。」
「ねぇそろそろ着くよ?」

聖の声に反応し前方を見ると2階立ての家ほどの高さはある外壁が見え、車が近づいていくと大砲でも跳ね返せそうなほど重厚な扉が自動で開いた。

「…聖ん家って、『フクムラ・インダストリーズ』みたいな名前で兵器開発とか武器商人とかやっとらんよね…?」
「まさか武器なんてw ハリウッド映画の見過ぎだよえりぽんw」

聖はそう笑って否定したが、扉をくぐった先の『豪華』という言葉では表現できない光景に衣梨奈はどうにも納得できないでいた。
 
………

その後、譜久村家の父母と祖父母、大勢の使用人に迎えられた生田家。
挨拶もそこそこに遥と朱音は遠慮することなく豪邸内を走り回り、『目に入れても痛くない』ということわざの通りに父母・祖父母たちにたっぷり甘えて遊んでもらい、
そして「いくらなんでも張り切りすぎじゃない…サミットでもあるの?」と聖が言いたくなるほどのランチを楽しんだのであった。

………

お腹いっぱいになり遊び疲れた遥と朱音をフカフカのベッドに寝かせて、食後のまったりとした時間を大人達で楽しんでいた時。

「それにしても衣梨奈クンは見るたびに逞しくなっていくなぁ。」
「いえいえ、聖と遥と朱音を守るためにもっと修行して強くならんといけんです!」
「あら頼もしい。あなたも衣梨奈ちゃんを見習って鍛えたら?ポッコリお腹になっちゃって。」
「衣梨は小学生の頃に亀の甲羅を背負っての牛乳配達から始めたんですけど、お父さんもどうです?w」
「いやいやいや!考えただけどギックリ腰が再発してしまうよw」

昔は色々あった衣梨奈と父母だが、すっかり打ち解けたようで楽しそうに会話をする三人に聖も笑みがこぼれる。

「あっそうだ。ねぇおじいちゃん、あとで離れに行ってみていい?」
「あぁ構わんよ?ただ物が散らかってるしそんなに綺麗じゃないがな。」
「聖ちゃん、昔は『ハナレなんてこわいいからやだー!』って泣いてたのにねぇ〜。」
「もう聖、子供じゃないよおばあちゃんw ねぇえりぽん?あとで行こう?」
「うん、よかよ。」 

………

譜久村家の離れとは家族が暮らしてる母家から歩いて5分ほどの場所にある平屋の日本家屋のことで、
聖の祖父はこの家で幼少期を過ごし、たった一代で現在の譜久村家を築いたそうだ。
辺りを森に囲まれ奥まった場所にあるため、幼い頃の聖は怖がって近寄ることさえしなかったという。

「はぁー…でもこういう家の方が衣梨は落ち着くー」

縁側に寝転がっている衣梨奈は、大きく深呼吸をして青空を見上げた。

「で、ここで何すると?」

室内をキョロキョロと懐かしそうに見回っていた聖に声をかけた。

「へへーっw これの練習するのー!」

聖が持っていたのは、聖と衣梨奈の青春の思い出といえるフルートの入ったカバン。

「いつの間に持ってきてたとー?」
「遥と朱音が遊んじゃうといけないから隠して持ってきたの。実はこの前さゆみさんとお茶してた時に学生時代の部活の話になってね。
 『さゆみは帰宅部だったから何もしてなかったの。』ってさゆみさんが言うから聖がフルートやってた事を言ったら是非聴きたいって言ってくださって。」
「へー。」
「でも最近全然吹いてなかったでしょ?だから練習したいなって思ったんだけどマンションで練習すると、ご近所迷惑なかって。」
「あーたしかにウチは防音工事しとらんもんね。」
「そんなときにちょうど実家に遊びにいく予定が出来たから、あの静かで誰の迷惑にもならない離れで練習しようって思ったの。」
「じゃあ久しぶりに聖のフルートが聴けるとね?楽しみやと♪」

起き上がりあぐらをかいて座り、早くフルートが聴きたいと待ちきれない様子の衣梨奈。
なんだかその光景に聖は、
 
「…学校の屋上を思い出すね。」
「…うん、そうやね。衣梨は聖と屋上で過ごすあの時間のために学校に行ってたようなもんったい。」
「えりぽん…それは聖もだよ?」
「…ミズキ。」
「…エリポン。」

自然と二人の顔が近づき、磁石のSとNのように引き寄せられて唇が重なる。
唇を触れ合わせるだけの優しいキスで学生時代の甘酸っぱい恋心を思い出して胸がキュンキュンする。
角度を変えぬままじっくり感触と温度を楽しんでから名残惜しそうに唇が離れた。

「はぁ…懐かしいキスやったと。」
「うん…。」
「最近はエッチなキスばっかりやったけんねw」
「ふふっ、ばかっw」

衣梨奈の手をペチッと叩いてから聖はフルートの入ったカバンを開けた。
が、

「…あっ!」
「どうしたと?」
「…忘れてた。」
「なにを?」
「ねぇえりぽん、フルートの前に聖に少し時間くれる?」
「うん、いいっちゃけど…?」
「ありがと!」

そう言って聖はそそくさとカバンを持って隣の部屋へ行ってしまった。

「なんやろ?」

………

それから5分ほど経って。

「えりぽーん!」

姿は見えないが隣の部屋から聞こえてくる聖の声。

「なーん?」
「いーい?」
「なにがー?」
「いーいー!」
「よく分からんちゃけど、よかよー!」

そう返事するしかない状況に仕方なく従うと、襖が開いて聖が現れた…のだが。

「…み、みずっ…!!」
「ど、どうかな…」

姿を現したのはまぎれもなく愛する妻・聖。
しかし先ほどまで着ていた服はどこかへ消えていて、代わりにビキニ姿で現れたのだから驚くのも無理はない。


 
「どどどどどうしたと!?」
「さっき久しぶりに自分の部屋の洋服タンスを開けたら学生の頃の水着が出てきたの。だから…どうかなって。」

頬をピンク色に染め、恥ずかしそうにモジモジしながら話す聖に胸の鼓動が大きくなるばかりの衣梨奈。

「どうかなって…そりゃ…最高に決まってとうやろ…」

股間と一緒に立ち上がった衣梨奈は聖のそばに寄る。

「こっちおいで?」

聖の手を握り縁側まで連れてきて太陽光の下で聖の姿を楽しむ。
目の前の見事な光景に、もう衣梨奈は溜息しか出ない。

「えりぽん、恥ずかしいよ…」
「離れなんやし誰も見とらんって。にしても…エロすぎやない?聖…」
「ふふっ…w 喜んでくれた?」

ウン!ウン!と首が取れそうなほど何度も頷く衣梨奈。
そんな衣梨奈が尻尾を振って喜ぶ大型犬みたいで聖も嬉しくなる。

「昔は身長も低くくて細かったから少しサイズが合わないけど…ほらピチピチ。」
「逆にそのアンバランスさが最高やと…」

下ろされていた髪がアップになっている事で見える美しい首筋、そして鎖骨。
透き通るように白くきめ細やかなモチ肌。ビキニの中で窮屈そうにしている深い谷間。一言話すたびに揺れる白い乳房。
程よい肉づきで自分を包んで欲しい二の腕。柔らかそうなのにしっかり締まっているお腹。そして膝枕に持ってこいのムチムチとした太もも。

先ほどまで服の中に仕舞われていた全てのパーツが衣梨奈の欲望を猛烈に掻き立ててくる。
 
「みずき…いいやろ?衣梨もう辛抱たまらんと…」
「あんっ…」

聖の身体を抱きしめ首筋にキスを落とす。軽くついばむような一度のキスにも敏感に反応する聖。
聖は衣梨奈の問いに何も答えなかったが、その表情はすでにトロけていて誰の目にも『YES』と書いてあるのが分かる。
それを心で受け取った衣梨奈は聖の首筋に顔を埋めて、高ぶらせるように何度もキスをする。

「はぁ…あぁ…んっ」
「チュッ、チュゥ…いい声やと…その声大好きっちゃ…」

そして衣梨奈はキスを続けながら聖の腕を取って頭上にあげていく。

「あはっ…んぁぁっ……んんぅ?」
「なぁ聖?さっきさゆみさんとお茶したって話しとったやろ?」
「うん…」
「実は衣梨も最近田中さんとお茶したっちゃん。」
「そうなんだ…」
「その時に衣梨、イイこと教えて貰ったと。」
「なに…?」

いくらKYな衣梨奈とはいえ、こんな時に何を?という疑問を持つ聖。
そんな表情さえもどうしようもなく愛しい衣梨奈は、腕を上げ戸惑っている聖の口…ではなく腋にキスをする。



「ひゃぁっ…!…な、なに…?」

今まで味わったことのない感覚が聖のカラダを貫く。

「聖、素質十分っちゃね…」
「え?ソシツ?な、なんで、わき…?」
「田中さんが熱弁しとったと。『腋も開発すれば性感帯の一つ!妻の腋も愛せんで夫はつとらまん!!』って。」
「さゆみさんが聞いたら怒りそう…」
「ふふふっw でーもっ…」
「はぁぁんっ!!」

今度は聖の腋を下から上へ、ベロ〜ンッと大きく舐め上げた。
さっきよりも大きな声が出てしまい頬がピンク色を通り越し紅くなる聖。

「みじゅきはココが感じようと…?w」
「うぅ…かんじるけどぉ……汚いし匂いもしそうで…」
「聖に汚いところなんて一つもなかよ?全身どこだって衣梨はおいしく舐められようけん。
 それに匂いは……スゥー……ンハァ……聖の汗とフェロモンが混じった香り……頭がクラクラしよって、今にもどうにかなりそうばい…」

いくら相手が衣梨奈とはいえプライベートな部分を見つめられ嗅がれるのはかなり恥ずかしい。
でも、おへその下の辺りからジワジワと湧いてくる『欲求』を聖は否定しようがないのも事実で…。

「…ねぇ、えりぽんフルートは…?」
「フルートは衣梨の上でも吹けるやろ?w」
「プッ……えりぽんのばか…w」
「ふふふっw まずはフルートの前に…聖の甘い音を聴かせてもらうっちゃ…」

衣梨奈はものの数秒で服を脱ぎ捨て畳の上に広げて、ヒョイと聖を抱えそこに寝かせた。
仰向けの聖の股の間に身体を入れて、自らの硬い筋肉の肌とどこまでも包んでくれる聖の柔肌を擦り合わせながら紅い聖の頬にキスをする。
そして再度聖の腕を頭上に上げさせて、ドクンドクンという聖の心音を聴きながら衣梨奈はソコに口づけた。

 
………


同時刻、田中家寝室。
昼間から当たり前のように何もつけず腕枕でタオルケットにくるまり、まどろむ二人。

「ふくちゃん家、実家に遊びにいっちょるんやって…」
「へぇー…」
「(そういえばふくちゃん、いつフルート聴かせてくれるかな…)」
「(そういえば生田のヤツ、ちゃんと開発しとーかな…)」

事後の疲れからそのままお昼寝してしまう二人でした。





田中家と聖さんと生田クンの日常 約束のフルートと開発計画編 おわり
 

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