- 12 雪と涙と罪悪感[sage] 2009/10/24(土) 08:52:52 ID:wJqR/soA
- カレシは断然年上でしょ。
だって年下とか同学年の男子って低レベルな奴ばっかり。みんな馬鹿みたいに見えるんだもん。
あと嫉妬とか束縛とか面倒くさいから嫌。
嫉妬とかって何か醜いし。
私恋愛していても自由でいたいし。
大人っぽい人とスマートな恋愛がしたいんだ。
あたしは。
なんて、思ってたんだ。
「ごめん今日図書館寄るから先行くわ」
「じゃーねーやのちん」
「ま、また明日!!」
「寒……」
首に巻いたマフラーに顔を少しうずめ、手をブレザーのポケットに突っ込んで廊下を歩いた。
こんな日にはもう冬なんだなぁとしみじみ思う。
昇降口まで来て、足が止まった。
壁に背をもたれて、立っている彼を見つけたから。
「風早」
その姿を見つけて、思わず声を掛けてしまったことを少し後悔した。
でも、あたしの声に気づいた風早は何も知らずにこっちを向いて微笑んだ。
「あ、矢野。……さわ…黒沼知らない?」
『爽子』
2人きりの時はそう呼んでるんだ。
そりゃそーか。
何を今更、と思いつつ胸はずきずき痛んだ。
「…さっきまで教室で一緒だったから、今来るんじゃない?」
「そっか」
短くそう言って、風早はまた視線を外した。
風早の吐き出す息が白く漂う。
- 13 雪と涙と罪悪感[sage] 2009/10/24(土) 08:55:24 ID:wJqR/soA
- 「今日さみーなー」
何気なく呟いた風早の言葉に、あたしは返事をすることが出来なかった。
風早のもたれかかっている壁に私も背をつけて、彼の右隣に立った。
風早の横顔を、見るだけでせつなくて、泣きそうなのに、なんであたしここにいるの。
それでも一緒にいたいとそう思っている自分が嫌だ。
━━いけない。
これじゃ、いつものあたしじゃないみたいに見えるかもしれない。
あたしは痛む胸をぐっとこらえて、口を開いた。
「あんた、ちゃんと爽子と上手くやってるんでしょーね」
「…………っきゅ、急に何言って…!?」
風早の頬が一気に赤くなるのが見てわかる。
また胸がずきん、と痛んだ。
「だって気になるんだも〜ん。ねぇ、どこまで進んでんのよ。」
「言えるか!!!」
そんな事わざわざ聞かなくったって、爽子の様子を見ていれば分かることだった。
日に日に可愛く、そして綺麗になっていく爽子。
上手くいっていないはずがない。
「大切にしてよね〜。私の可愛い可愛い親友なんだからさ」
「…言われなくても分かってるよ!」
風早は頬を赤く染めて、視線をそらした。
窓からは寒々しい空から雪がしんしんと降っているのが見えた。
知ってる。
あの髪も声も全て私のものになんてならないっていうことも。
…知ってる。
あの弾けるような笑顔も、優しい声も、あたしに向けられたものではないっていうことも。
「………あたしの可愛い…親友…」
小さく呟いた言葉は誰に届くわけでもなく、虚しく宙を舞って落ちた。
- 14 雪と涙と罪悪感[sage] 2009/10/24(土) 08:58:26 ID:wJqR/soA
みんなみんなみんな
彼の全てが
あたしの可愛い親友に向けられたものだっていうこと。
知ってる。
知ってるよ。
だから、今だけは
「─…風早」
「━━━━え?」
彼の襟を掴んで唇を奪った。
このまま、
時が止まってしまえばいいのに。
唇を離すと熱い吐息が漏れた。
「…矢野っ!?」
当然の如く、風早は今何が起きたのかわからないようだった。
慌てふためく彼の姿が愛おしい。
「練習よ、練習〜。じゃ、あたし行くから」
まだ風早は何かを言っていたようだけど、あたしは背を向けて昇降口を後にした。
一瞬だけでいいから、
あたしのこと見てほしかった。
考えてほしかった。
だから。
「ばっかみたい………」
空からは雪が途切れることなく降ってきて、その様子があたしの心を表しているように見えた。
おわり
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