最終更新:ID:r5VYpW07Vw 2010年05月15日(土) 00:35:39履歴
- 294 desire[sage] 2010/04/14(水) 10:09:51 ID:klWa/U/X
「んっ、んむ、かっんんっ、ふ、あ!」
何度も何度も唇を貪る。
甘い。甘い。甘くて、溶けそう。
開いた隙間から、喘ぎとも抵抗ともとれる音が黒沼から漏れ出る。
それだけで、体の芯が熱くなって、もっともっとと執拗に口づける。
「風っんむっ、うぅっ、んっ」
何も、言わないで。
拒否の言葉なんて聞きたくないから。
胸元に当てられた黒沼の両手が熱い。いや、熱いのは俺だけかもしれない。
逃げないように、後頭部をしっかり掴んで、口の中を犯す。
ああ、どうしてこうなったんだっけ。
キスに集中する思考の片隅でぼんやりと考える。
ああもう、何もかもどうでもよくなるくらい、熱い――……
***
『わらびーもちー』
窓の外から、間延びした音声が飛び込んできた。
この時期になると、わらび餅やアイスを売りながら車が走るんだ。
「あ、わらび餅」
ふと黒沼が呟いて、俺は視線を彼女に向ける。
向かい合うようにテーブルについて、その上にはまるで色気のない教材の山。
夏休みの宿題一緒にしようよ、なんて誘ったはいいけど、思いの外つまらない。
- 295 desire[sage] 2010/04/14(水) 10:10:39 ID:klWa/U/X
…………というか、真剣な彼女の表情に気を取られて、一向にシャーペンが進んでくれない。
正座をして、背筋を伸ばして、ノートやプリントにペンを走らせる黒沼を、ちらちらと盗み見てはため息をつく。
不埒な思いが頭から消えない。
彼女が呟いたのはそんなタイミングだった。
「……すきなの?わらび餅」
「すき、というか、嫌いではないんだけど、夏になると食べたくなる、かな?」
黒沼は、何気ない俺の質問に一所懸命に答えてくれる。
そういえば、と思い立って俺は提案することにした。
「ちょっと休憩する?スーパーの安売りで良かったら、わらび餅が冷蔵庫に入ってたと思うから」
「えっ?で、でもそれは、誰かが食べる用に買ってあったものなのでは……!」
あわてふためく黒沼に、思わず噴き出す。
「『誰か』じゃん、俺達。待ってて、取って来る!」
勉強会、なんて口実つけずに、俺ん家おいでよって言えば良かったかな。
勉強中って、なかなか気軽に話し掛けづらい。もっと沢山話したいのに。
そんなことを考えながら、パック入りのわらび餅を二つ手にして階段を昇る。
タンタンっと足音が軽いのは、きっと、食べている間なら会話が出来るだろうから。
「お待たせっ、あ、テーブル片してくれたんだ?ありがとー!」
拡げられていた宿題が片付けられていて、飲み物以外に何も乗らないテーブルにわらび餅を置いた。
- 296 desire[sage] 2010/04/14(水) 10:11:22 ID:klWa/U/X
「ううん、でも、あの……本当に頂いてもいいのかなぁ」
「いいってば!はい、黒沼の分!」
冷たくて美味しいね、と言いながら笑い合う。
こういう時間ってすごくすきだ。
同じ空気を纏ってるみたいに思うのは、気のせいじゃない。きっと気のせいじゃない。
丁寧に両手を合わせて、黒沼は「ごちそうさまでした」と言った。
ちらりと黒沼を見遣ると、小さな口の端にきな粉が少しついていた。
「黒沼?きな粉、ついてるよ」
「えっ?」
ぽっと頬をピンクに染めて、黒沼はそっと口を拭う。
「あー、もうちょっと上」
「わーっ恥ずかしい……!こ、このあたり?」
なかなか付着したきな粉を拭えない黒沼を見て、淫らな思い付きをしてみたりする。
思ったら、もう実践せずにはいられなくなって。
「黒沼。恋人らしいこと、していい?」
「え……っ」
黒沼の答えを聞く前に、素早くにじり寄ってその腰を抱き寄せて、そう、俺の舌できな粉を舐めとった。
「…………っ、んっ」
そのまま軽く口づける。
柔らかい感触に頭がぼうっとなって、誘惑に勝てずに唇を重ねる。
抵抗するように、黒沼の両手が俺の胸元を軽く押した。
逃げないで。
俺から逃げないでよ。
完全にスイッチが入った俺は、黒沼の抵抗も何のその、半ば無理矢理に深いキスを始めたんだ。
- 297 desire[sage] 2010/04/14(水) 10:12:06 ID:klWa/U/X
っつか、そろそろキツイ。
下半身はとっくに意志を持っていて、狭く閉じ込められながらその存在を主張して来る。
あーでも。
まだ、俺達そんな関係じゃない。
ない、のに。ああ、わかってるのに。止まらない。
止めなければ、と思って唇を離すほど、さっきより強く引き寄せられる。
黒沼が、いけないんだ。
だってこんなに甘いから。
左手が黒沼の後頭部を支えたまま、俺の右手は半分無意識に黒沼の首元をうろついた。
目当てのものにたどり着くと、そのままブラウスのボタンをぷつりと外す。
黒沼の両手に込められた力が少し強くなったけど、でも、だめ。
だって黒沼が悪いんだから。
「……っ、かぜはやくん!」
突然呼ばれた自分の名前に、はっと意識を取り戻す。
えーと。俺、何して――
「〜〜〜〜っ!?ごめっ、俺……っ!」
慌てて黒沼から離れると、彼女の顔は真っ赤に染まっていて、ああ、本当に可愛い――……って、そうじゃなくて!
「すみませんでした!」
床に額がつきそうな勢いで謝る俺。
『そんな関係』なんて、キスすら数えるほどだってのに、何やってんだ本当に。
自分の理性の弱さに愕然とする。
「かっ、かぜはやく、あの、頭、あげてください……」
黒沼の震える声を受けて、俺はそーっと顔をあげる。
視線が交わる。
- 298 desire[sage] 2010/04/14(水) 10:12:47 ID:klWa/U/X
――ねぇ、どうしてそんなに色っぽい目をしてるの?
少し荒い息遣いに、ぷっくりと綺麗に色付く唇。
まるで、もっとしてほしい、って言われてるみたいに――
「きゅ、急にどうしたの……?」
戸惑った黒沼の瞳が揺れて、俺はまた我に返る。
『急に』か……
考えたことも、ないのかな。
その先に進むことなんて。
俺がそれを願ってることなんて……
「ごめん……びっくりしたよな」
触れてもいいって権利はあるんだと思う。
抱きしめて、キスをする権利だって、与えられてるんだって思う。
でも……
「ちょ……っと、だけ……」
黒沼は小さくそう言うと、顔を覆って赤面を隠した。
そうなんだ。
『触れてもいい』から触れたいんじゃない。
『触れてほしい』と思ってもらって触れたい。
黒沼が俺を欲しがってくれてから、先に進みたい。
俺の自分勝手なんかじゃなくて。
独りよがりとかじゃなくて。
「黒沼……」
手を伸ばして、彼女の長い黒髪を撫でる。
それを受け入れてくれる彼女を愛しく思う。
脆弱な理性なんて全く信じられないし、今回でそれも立証されてしまったわけだけど、俺、黒沼に無理をさせたいんじゃないんだ。
欲しがって。俺を。
箍が完全に外れてしまう前に。
早く、早く……早く。
俺のものになって。
狂おしいほどに黒沼を求める。
手に入るなら、何だって捧げる。
だから…………はやく――
おわり
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