413 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:43:21 ID:1domDwb10
私立桐華学園入学式の日。
心地よい春の日差しを浴びて、桜舞う道を僕は歩いているのだろうか?
柔らかなそれは、風に乗って僕の頬を撫でていく。
桜の花弁だ。きっと桜色をしているのだろう。
だけど僕にはその色を確認することが出来ない。
僕の視界はあのときからずっと暗闇に包まれたままだ。

「秀人お兄ちゃ〜ん!」
校門と思われる位置に差し掛かったとき、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。
一応振り向くが見えるわけではない。だが、相手は分かっている。
義妹(いもうと)の真奈だ。
足音がだんだんと近づいてくる。
「もうっ、下駄箱の前で待っててって言ったじゃない!」
そういえば、そんな約束をしたような……。
「ごめん」
とりあえず謝る。
「ぷー」
見えないが、真奈は怒っているようだ。
そして、下から上目遣いで僕を睨んでいるはず。
これは、真奈の幼い頃からのクセだ。僕の頭の中にはその時の真奈が思い出される。
今はどんな顔をしているのだろう?どのくらいの位置から僕を見上げているのだろう?
昔から幼児体形だったから、そんなに変わらないかな?
と、取りとめも無い想像は真奈の言葉で打ち切られる。
「お兄ちゃんは、真奈が居ないとダメなんだから、ちゃんと言うことを聞いてよぉ」
「ああ、わかったよ」
「よろしい。それじゃ、帰ろっ!」
真奈は僕の手を取って、先導するように歩き出した。


414 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:44:04 ID:1domDwb10
あの事故が起こったのは、4年前の、雨の日だった。
僕と真奈は一つの傘に身を寄せ合うように歩いていた。
ふいに突風が吹いて、傘が飛ばされた。
傘を失くしてしまっては義母に怒られると思った僕は、傘を追って車道へ飛び出した。
そこへやってきたトラックに、僕は跳ねられた。
幸い、大した外傷は無かったが、僕の目は見えなくなっていた。
医者が言うには、僕の目が見えない原因は心因性のものらしい。
何かのきっかけさえあれば、見えるようになるという。
だが、そのきっかけが何なのかは、今も分からない。

先ほど真奈が言った通り、僕は真奈が居なければ、何も出来ない。
外を歩くときは真奈に手を取ってもらわなければならないし、
食事だって真奈に食べさせてもらっている。
他人から見れば異様な光景だろうが、僕たちにとっては、それが当たり前の日常となっている。

夜、眠れないので部屋の窓を開ける。
夜空を見上げてみるが、もちろん、星など見えない。闇があるだけだ。
それでは寂しいので、僕は星を想像する。すると、闇だらけの世界に星が瞬く。
これは、僕だけが見ることの出来る、想像の世界。
例えば、見知らぬ人と出会ったとする。
その人の声や話し方などの情報から、想像を膨らませ、視覚的なイメージを創り上げる。
男か?女か?背は低いか?高いか?髪は長いか?短いか?太っている?痩せている?どんな服を着ている?
そうやって想像した人物を、僕の想像の世界に住ませるのだ。
小説を読んで、その場面を脳裏に思い浮かべるような感覚。
もちろん、実際の姿とはだいぶ違っているだろう。
残念ながら触るなどして確認する機会がほとんど無いので、致し方無い。
これは意味の無いことのように思う人もいるかも知れない。だが、僕は想像することをやめない。
この想像の世界こそ、僕が見ることの出来る全てだから。

415 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:44:26 ID:1domDwb10

※回想がチョイチョイ出てきて時系列が分かり辛いので秀人の来歴をまとめる。
・母親を亡くす。
・秀人の父が真奈の母と再婚。真奈が妹となる。
・隣の家のまどかと知り合う。
・まどかが引っ越す。(6年前)
・事故に遭って光を失う。(4年前)
・秀人の父親が、秀人の目が見えなくなったのは真奈のせいだと真奈を疎むようになり、離婚し家を出ていく。
・義母が秀人を施設に入れようとするが秀人は拒否。
・秀人の世話に疲れた義母は男を作って蒸発。秀人と真奈は二人暮しになる。
・桐華学園に入学。ゲームスタート。

416 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:45:33 ID:1domDwb10
【鮎川真奈】秀人の義妹かつクラスメイト。

ある日の夜。秀人がお風呂に入っていると、背中を流そうと真奈がやってきた。
真奈は秀人の股間のモノを弄んで面白がった。
「や、やめろって!僕たちは兄妹同士なんだぞ!」
「でも、血は繋がってないよ。真奈は昔からお兄ちゃんのこと……」
真奈はいきなり秀人のモノを咥えた。
秀人の頭の中は真っ白になり、とうとう真奈の口の中に出してしまう。
以来、秀人は1人の女の子として真奈を意識し始める。

そんなある朝、突然秀人の義母が男を連れて家に帰ってきた。
義母は真奈を引き取り、そして秀人を施設に入れると言う。
それを秀人は拒否し、男の前に立ちふさがった。
「お前は邪魔者なんだよ!」
と、秀人は男に突き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
秀人は、自分の目が見えれば真奈を守れるのに、と思いながら意識を失う。
気が付くと秀人は闇の世界にいた。
そこには「闇の巫女」と名乗る少女がいた。
彼女は、光を取り戻したければ、光を他人に求めるのではなく、
自らが光を与えるようにすればいいと言う。
「あなたの光は真奈ちゃんなの。ずっと気付いていたはずだよ。
ここから先はあなた次第。あなた自身も真奈ちゃんに光を与えてあげるようにならなきゃ」
「僕に出来るかな……?」
「あなたにその気があれば、きっと伝わるよ」
闇の巫女は去って行った。

417 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:46:06 ID:1domDwb10
意識を取り戻すと、秀人は目が見えていることに気付く。
秀人は目の前に立つ男を力いっぱい殴りつけた。
義母はさらに食い下がって真奈を連れて行こうとする。
「真奈のこと考えてるなら、そっとしておいてよ!お兄ちゃんと2人、
真奈は十分幸せなんだから……」
真奈に拒絶された義母は、あきらめて男を連れて出て行った。
それから、秀人と真奈は、恋人のような、兄妹のような、曖昧で幸せな関係になった。

418 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:47:01 ID:1domDwb10
【鳴瀬美桜】格闘技美少女。

学園の廊下を歩いていた秀人は、ガーガーという奇妙な音を聞く。
それは美桜がいつも履いているというローラーブレードの音だった。
放課後、美桜の部活に付き合うようになった秀人。
だが部活といっても美桜1人だけしかいない、部室も無い寂しいものだった。

ある日、美桜は格闘技の大会に出たいと言い出す。
他校にいるという、宿命のライバルと戦うためだ。
だが、大会に出るには女子をあと4人集めなければならない。
秀人は真奈やまどかといった知り合いをかき集めて、即席の5人チームを作る。
大会の日がやってきた。秀人の応援もあってか、美桜はライバルに勝利する。
そして桐華学園の即席チームは優勝した。
「とっておきの勇気をあげる。光はキミの中にあるよ」
そう言って美桜は秀人にキスをした。
秀人は美桜のために、光を取り戻す決意を固める。

秀人は再び病院に通うことになった。以前通っていた所とはちがう病院だ。
そこの医者は、手術をすれば秀人の目は治る可能性があるという。
もちろん、失敗する可能性もあるが、美桜の励ましもあり、秀人は手術を受けることにした。
麻酔を打たれると、秀人の意識は闇の世界へと迷い込んだ。
そこには「闇の巫女」と名乗る少女がいた。
彼女は、秀人の弱い心が闇を作り、光を奪っていたと言う。
「あとほんの少しだけ、あなたが勇気を出せば、あなたは光を取り戻すことが出来るんだよ」
闇の巫女は、秀人と美桜ならきっと大丈夫だ、と言って去って行った。

目を覚ました秀人。恐る恐る包帯を取ってみると、視力は戻っていた。
その後、格闘技部は正式に発足し、部員も徐々に増えていった。
秀人はマネージャーとして、部長の美桜を支えていくことになった。

419 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:48:25 ID:1domDwb10
【氷川みるく】ネコ好きなロリっ娘の先輩。

秀人は学園内でネコの「みしぇーる」と出会う。その飼い主は、みるくだった。
みしぇーるを仲立ちにして、みるくと秀人は仲良くなる。
ある日、秀人とみるくは「シンシア」という子猫が道端に捨てられているのを発見する。
2人はシンシアを拾って助けた。やがて、シンシアは体力を回復し、元気になった。

今度はみるくが風邪をこじらせ、学園を何日も休むようになる。
実はみるくは病弱で、幼い頃から入退院を繰り返していたことを知る。
自宅で療養していたみるくだったが、やがて容態が悪化し、病院に入院することになった。
今度発作が起こったら、みるくの命が危ないと医者は言う。
見舞いに行った秀人に、みるくは、
「もうすぐ、いなくなるみるくちゃんの目、もらってくれる?」
と言った。
自分が光を取り戻せば、みるくの病気が治る、何故かそう思った秀人は、
眠っているみるくの手を握り、祈りを込める。

闇の世界に迷い込んだ秀人。気が付くと目の前にシンシアがいる。
シンシアの姿は、巫女服の少女へと変貌する。
闇の巫女と名乗る彼女は、シンシアを通じて秀人とみるくのことを見ていたという。
「神様じゃ叶えられない、あなたとみるくさんの夢を叶えてあげる」
闇の巫女はそう言って去って行った。

目覚めた秀人は目が見えるようになっていた。
みるくの容態は回復し、無事退院することになった。
生きている、そして光を取り戻した幸せをかみしめる秀人とみるくだった。

420 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:49:24 ID:1domDwb10
【結城まどか】秀人と真奈の幼馴染。

秀人は「黒沢直樹」というクラスメイトと友達になった。
直樹は、目の見えない秀人に、好奇でも哀れみでもなく、普通に接してくるいい奴だった。
入学式から一週間ほど経った頃、まどかが秀人たちのクラスに編入してきた。
昔のように、秀人と真奈とまどかの3人で仲良く過ごす。
ある日、直樹は、まどかのことが好きだと秀人に言う。
直樹はいい奴だからと、秀人が一肌脱いで、直樹とまどかは付き合うようになった。

放課後、まどかと直樹が言い争いをしている所へ秀人が通りかかった。
「私の本当に好きな人は、秀人君だから」
まどかがそう言うのを聞いて嫉妬に狂った直樹は、まどかに手を上げようとする。
秀人が割って入ったので、なんとかその場は収まった。
「まどかは俺の女だ。忘れるな」
ドスを効かせた声で直樹はそう言って去って行った。
その後、秀人とまどかは、昔3人でよく遊んだ思い出の神社で話をする。
秀人が直樹のことを「いい奴だ」と言ったから、まどかは直樹と付き合うことにしたのだという。
「私は、真奈ちゃんの代わりになりたいの。秀人君は、私じゃダメ?」
確かに秀人は誰かの助けがなければ生きていけない。
だが、まどかを巻き込みたくないと秀人は思っている。だからまどかの申し出は拒否した。
秀人は、まどかのために目を治すことを心に誓うのだった。

421 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:49:41 ID:1domDwb10
まどかが秀人の瞼にやさしくキスをする。
すると、秀人の意識は闇に飲み込まれた。
そこには闇の巫女と名乗る少女がいた。彼女の役目は、闇の世界で光を守ること。
彼女は、この世界を出たら秀人は光を取り戻すことが出来ると言う。
「希望の光があなたを待ってる。光が…まどかさんがあなたを待ってる。
あの娘が、あなたにいっぱいの光を与えてくれたんだね」
役目を終えた闇の巫女は、約束のあの場所でまた会おうと言って、秀人に背を向ける。

元の世界に戻った秀人は、光を取り戻していた。
夕日に染まる神社で、まどかと秀人は愛を確かめ合った。
直樹と秀人はしばらく険悪なムードになっていたが、やがて仲直りした。
まどかと秀人、そして真奈と直樹、4人で仲良く過ごす日々が続いていく。

422 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:50:45 ID:1domDwb10
【天乃皐月】学園の保険の先生。

皐月と知り合った秀人は、皐月に母親の面影を重ねる。
やがて放課後に、用も無いのに毎日保健室に通うようになる。
皐月は、秀人にカウンセリングというものを施す。それは普通とは違ったやり方だった。
皐月は秀人の額へと自分の額をくっつけ、目を閉じて意識を集中させる。
そうすると、心の中が見えるのだと皐月は言う。
そして何回か目のカウンセリングのとき、秀人は海を感じた。
秀人の心の中が皐月に見えるように、皐月の心の中が秀人にも少しだけ見えたのだった。
皐月は、数年前に婚約者を海難事故で失っていて、その心の傷を今も引きずっていたのだ。

その次のカウンセリングのとき、秀人は皐月の心を救いたいと強く願った。
すると、秀人の意識は皐月の心の闇に入り込んだ。
そこには暗い海に飲み込まれそうになっている皐月がいた。
秀人は皐月を助けようと思ったが、皐月は闇に飲まれて消えた。
「あきらめちゃダメだよ!あなたも皐月先生も、きっと救われない」
闇の巫女が現れて、秀人を励ました。
「彼女は光を見つけたの。秀人君という、希望の光。
そして、闇に消えた皐月先生は、今度はあなたの光となって蘇る」
闇の巫女はそう言い残して消えた。

現実の世界に戻ってきた秀人は、目が見えるようになっていた。
そのことを皐月に言う秀人。すると皐月は秀人を抱きしめて、
「ありがとう秀人さん。私の過去はもう十分癒されました」
と言った。
幸せな日々が過ぎていき、皐月はトラウマを克服した。
秀人も、皐月に母親の面影を重ねるのを止め、1人の女性として愛することに決めた。

423 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:51:36 ID:1domDwb10
【水無月紫音】生まれつき全盲だという謎の少女。隠れキャラ。

学園の廊下でバッタリと、秀人は紫音と出合った。
紫音は、全ての色を溶かし込んだ黒い服が似合う少女だと秀人はイメージした。
放課後、秀人は約束の場所、すなわち図書室へと行き、そこで待っていた紫音と話をする。
似たもの同士の2人はすぐに仲良くなった。
そして毎日図書室で会うようになった。紫音も秀人と同じように想像の世界を持っていた。
ある日、紫音は秀人を、想像の世界に行こうと誘う。
紫音は秀人と額をくっつけ合わせた。すると、2人の意識は想像の世界へと飛んだ。
想像の世界で2人は、いろいろなものをイメージし、創り出して遊んだ。
そこで秀人は、紫音が好きだと告白する。
「わたしも秀人君が好き。だから、秀人君に光を取り戻して欲しいの」
「わかった。2人で青い空を見よう」
やがて、別れの時間が来た。
「真実に目を逸らさないでね。きっとわたしを探し出してね」
紫音はそう言って消えた。

想像のの世界から帰ってくると、秀人は光を取り戻していた。
辺りを見回したが、そこにいるはずの紫音の姿は無かった。
それ以降、紫音は図書室に来なくなった。秀人は現実の世界の紫音を捜し求めた。
どうやら紫音は学園の生徒ではないらしい。
皐月に尋ねてみると、名前に聞き覚えがあると言う。
皐月に連れられて、紫音が入院しているという病院を訪ねる。
そこには何も見ていない、ただ虚空を見つめるだけの現実の紫音がいた。
紫音は数年前事故に遭い、それ以降想像の世界へと逃避するようになっていたのだった。

424 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:52:33 ID:1domDwb10
紫音を連れ戻すべく、秀人は想像の世界へと入る。
そこには巫女服の少女がいた。
「わたしは闇の巫女。そして、紫音によって創り出されたもう一人の紫音」
彼女が言うには、この世の全ての人が持っている想像の世界は、繋がっているという。
そして、闇だらけの想像の世界の中で、光を守るのが彼女の役目らしい。
「光はね、わたしたちの中に存在するの。希望という光が」
闇の巫女は、紫音を取り戻すには、皆の光を少しずつ分けてもらうことが必要だという。
秀人は真奈に、皐月に、まどかに、みるくに、美桜に呼びかける。
彼女たちの光、そして秀人の光が、紫音を現実へと引き戻した。
役目を終えた闇の巫女は消え、紫音の中へと戻った。

紫音は光を取り戻し、そして心の傷も癒え、退院して学園に通うようになった。
「わたしは、あなたのいるこの世界が大好き」
そう言って紫音は微笑んだ。

426 名前:光を…[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:56:03 ID:1domDwb10

※現実のヒロインの姿について文章で書いてもしょうがないので書きません。
美桜やみるくはかなりのギャップがある、と言っておきます。
参考サイト http://www.getchu.com/soft.phtml?id=27764
 パッケージイラスト:紫音(現実)
 サンプル画像上段左から:
  みるく(想像)、真奈(想像)、みるく(現実)、真奈(現実)、まどか(現実)、美桜(現実)
 下段左から:義母と男(想像)、闇の巫女、紫音(想像)

※無印とDELUXEのストーリーの違いは無いと思われます。一応自分がやったのは無印です。

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