「ザオリク!」

ミレーユの声が辺りに響き渡る。
と、同時にハッサンは長い眠りから目を醒ました。

(ここはどこだ…?俺は一体何を……)

どうも状況が把握出来ずにいたハッサンだったが、見慣れた仲間達の顔を見て少しずつ記憶が蘇る。。

「ハッサンよかった!生き返ったんだな!」

(そうか…俺はムドーとの闘いの最中に倒れて……)

時間が経つにつれて、あの苛烈を極めた闘いの記憶が鮮明に蘇る。
それと同時に仲間に先んじて死んでしまった、自身への情けなさが徐々に芽生えてきた。

「みんなすまねぇ……。デカい事言いながらさっさと死んじまって……。」

「そんな事ないさ!」
「そうよ!ハッサンは立派だったわ。」
ハッサンは仲間の励ましに心を打たれた。

「エニクス、ミレーユ、チャモロ、バーバラ……みんなありがとう!
ところで、ムドーは…?」

「ああ!ムドーは何とかやっつけたぜ!
ただ……。」

「ただ?ただ、なんだよ。」

「また、新しい魔王が出てきたみたいなのよ。デスタムーアと言うらしいわ。」

「なんてこった…せっかくムドーを倒したってーのにまた新しい魔王だなんてよ……。」

ハッサンの表情に落胆の色が浮かんだ。
しかし、持ち前の短絡さで直後にはいつものテンションに戻る。

「でも心配する事ねえって!こんだけ仲間がいりゃーその…デスなんとかもちょちょいの……あれ?」

ハッサンはここで漸く疑問を抱いた。

「なんか人がやたら増えてねーか?」

キョトンとしたハッサンの表情に慌てエニクスが答える。

「あ、ああ!ごめんごめん紹介してなかったよな!
ムドーを倒した後に仲間になったんだ!
右からテリー、アモス、ドランゴだ!」

「お、おう!そうだたのか!いやーこんだけいりゃー百人力だぜ!
よろしくな!みんな!」

突然の事に驚きを隠せないながらも、新しい同志を迎える。
新メンバーはどうも戸惑いがちだが、そんなものには目もくれない。

「よっしゃ!そうと決まれば早速そのデスなんとかを倒しに行こうぜ!」

ムドー戦の名誉挽回に燃えるハッサン。
(今度こそ俺が仕留めてやる!)

しかしハッサンのそれとは対照的に、他の仲間の表情にはどこか困惑の色が見える。

妙な雰囲気の中、ミレーユが重い口を開いた。

「う、うん…そうなんだけどね。
ただ…ムドーの時と同じで、デスタムーアと闘えるのは4人までなの。
だから……。」

そこまで話してミレーユはまた口を噤む。
瞬間、沈黙を嫌うようにエニクスが口を開いた。

「だ…だからさ!
今回はタイマンで討伐メンバーを選抜しようと思ってたんだ!
やっぱ直接闘って強い奴決めるのが手っ取り早いと思ってさ。」

努めて明るく演じて話すエニクス。

「ただ…。」

漸く本題を持ち掛けようするエニクス。
しかし、それをまたもハッサンが遮る。

「おお!確かにそりゃいいな!
負けてもそれなら諦めもつくし!」

ハッサンの目は更に輝きを増している。

「う、うん…。で、でもさハッサンはとりあえず今回はちょっと休んどきなよ!
生き返ったばっかでほら…無理しない方がいいし!」

「そうよ!そ…それに、もしかしたらまた新しい魔王が現れるかもしれないんだし。その時の為にも今は体をゆっくり休めとくべきよ!」

皆がハッサンに休養を促した。
しかし、名誉挽回に燃えるハッサンが彼らの本意を汲み取れるはずがない。

「だーいじょうぶだって!体だってほら!お陰様で全開だぜ!」

「いや、だから…」

懸命の制止もまるで効果を為さない。
全く耳を貸さないハッサンを前に、メンバーの間にも諦めムードが漂い始める。

懸命の制止もまるで効果を為さない。
全く耳を貸さないハッサンを前に、メンバーの間にも諦めムードが漂い始める。

「えーっと。俺を入れて8人だから…
相手決まってないのは誰なんだ?」

「……あたし。」

辺りを見渡すハッサンと目が合い、おずおずとバーバラが右手を挙げた。

「おーバーバラかあ!女相手はちとやりにくいけどしゃーねえ!手加減無しでいくぜ!」

「えっ…あ、うん。それはいいんだけど……。」

最早乗り気になったハッサンを止める者はいない。

(ちょっとエニクスどーすんのっ!?ハッサンチョーやる気まんまんだよー)
(仕方ないよ…バーバラ悪いけど一丁相手頼む!!)

「おーいバーバラ!始めようぜい!!」
「う、うんっ!!」

(もう…どうなっても知らないからね!!)


エニクスとバーバラの内緒話を遮るように、ハッサンはバーバラを呼び寄せた。

向かい合う2人。

「行くぜバーバラ!」

「う、うん…(どーしよーっ!もう知らないっ!)」

そんな2人を少し離れた場所から眺めながら、チャモロがエニクスの耳元で囁いた。

「エニクスさん……。
やっぱりハッキリと言った方が良かったんじゃないですか…?」

「って言うけどさあ…そんな事言えないよ!
『ムドー戦の後から今までずっと生き返らせるの忘れてた』なんてさ…。」

「でもそうでもしないとハッサンさんが……。」

「そうだよなあ…ハッサンのLvはムドー戦の時のまんまだからせいぜい20ぐらいしかないもんな。」

「そうです。しかも転職もしてませんし。今の彼ではLv87のバーバラさんを相手に戦うなど無謀です。」

「うーん…。」

「まぁ良いんじゃないかしら。死んだってまた生き返らせれるんだし。
ハッサンも言ったって止めそうにないし、バーバラちゃんに任せましょ。」

悩む2人をミレーユが諭す。

そんな仲間の心配を余所に、今、決戦の火蓋が切られようとしていた。

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