FINALFANTASYν(ニュー)まとめwiki - 第114話「炭鉱都市ナルシェ」
・ナルシェへ向かう列車の中
 エリアとエアリス、ロックとセリス、バッツとレナ、マッシュとリディアが、席にそれぞれ座っている。

エリア
「バッツさん、元気になったみたいで良かったです」
エアリス
「そうね。それにずっとティナちゃんのところにいて寝てなかったみたいだし。今みたいに交代するようにすれば休めるし安心ね」
エリア
「今はティファさんとクラウドさんが見てくれてますし……。あ、姉さん」
エアリス
「そろそろ私達がティナちゃんの所に行く番ね」

 別の車両のティナの所へ行く二人。

ロック
「なぁセリス、本当にもう帝国はティンバーに攻めてこないのか?」
セリス
「……帝国から遠く離れたティンバーを占拠するメリットはない。それに、ティンバーの占拠はバロンの目的だったようだ」
ロック
「なんで、そんなことが分かるんだ?」
セリス
「……少し考えればわかるでしょう? 帝国が遠征するのは目的が今回のように幻獣かクリスタルが絡んでいる時だけ。
ティンバーにクリスタルはない。だから、わざわざ遠隔地にあるティンバーを占拠することはないわ。制圧なら今までどおり地道に近隣諸国を押さえてから来るでしょう」
ロック
「……そうだな。アルブルグや、ツェンの……コーリンゲンみたいに近場から占拠していくのが基本的な戦略だったな」
セリス
「バロンと共同戦線を張れば成功の確率は高いと踏んだのでしょうけど……帝国だけなら、私達の力でも追い返せる」
ロック
「さすがはセリス。ってこれで褒めちゃだめだな。考えてみれば分かる事なんだし」
セリス
「…………」
ロック
「……ん? どうしたセリス? 俺の顔になんかついてるのか?」
セリス
「いや……。それより……」

 別の車両からセシルとローザが入ってくる。

リディア
「あ〜セシルお兄ちゃんにローザお姉ちゃん!」
マッシュ
「わざわざこっちの車両までどうしたんだ?」
ローザ
「もうすぐナルシェに着くので、準備をして欲しいってエドガーさんが言っていたから伝えにきたの」
セシル
「あと……バッツはいるかい?」
バッツ
《目を覚ます》
「……ん?」
レナ
「あ……セシルさん」
バッツ
「……セシル」
セシル
「バッツ……」
バッツ
「…………」
セシル
「……昨日は」
バッツ
「待ってくれ。セシル」
セシル
「…………」
バッツ
「謝るのは俺のほうだ。セシルは悪くないってわかっていた。……だけど、抑え切れなかったんだ。
俺、どうかしてたよ。セシルのせいだけじゃない。俺が弱かったせいでもある。それなのに殴っちまって。
本当に、ごめん。セシル」
セシル
「……ありがとう、バッツ。そして僕のほうこそ、悪かった」
マッシュ
「待て待て。お前ら二人みてると延々と互いに謝り続けそうに見えてきたぞ。
二人とも、もうお互いに謝ったんだ。過去の事はそれでもう水に流しちまえよ」
セシル
「……そうだね」
バッツ
「……そうだな」
セシル
(……皆、良い人達ばかりだ。ずっと、みんなに助けられてきている。だけど……僕の力はこの人達をこれから守っていけるのか?)


FINAL FANTASYν
第114話「炭鉱都市ナルシェ」


・ガストラ陣営、将軍用テント
 新たに派遣された将軍を迎えるレオ、ガーランド、ダークナイト。

帝国兵
「将軍、こちらです!」
ガーランド
「よぉ、おっさん。久しぶりだな」
将軍
「…………」
レオ
「ブッフヴァルト将軍、わざわざご苦労様です」
ヘルズハーレー
「……ブッフヴァルトはもう随分前に捨てた名前だ。レオ将軍、今の私の名はヘルズハーレーだ」
レオ
「ですが、ガストラの名門であるブッフヴァルト家の出であるあなたのことを……」
ヘルズハーレー
「……ブッフヴァルト家が名門だったのはもう何十年も前の事。今あそこの家にいるのは過去の栄光にすがる愚か者だけだ」
ガーランド
「確かに、あっこの連中は気に入らねぇな。おっさん以外は役立たずばっかなのにプライドだけはやたらと高い。そのおっさんもあの家の名前捨てるってんだから名門も落ちたもんだぜ」
レオ
「……ガーランド将軍、口が過ぎるぞ。ブッフヴァルト家のガストラ帝国黎明期の貢献は……」
ガーランド
「言われなくてもわかってるよ。俺もガストラの人間だからな。それより、おっさんと一緒に戦うのも久しぶりだな。……あれは連れてきているのか?」
ヘルズハーレー
「……当然だ。今は部下に世話を任せている」
ガーランド
「おっさんくらいだぜ、将軍格で魔導技術に頼ってねぇのは」

 獣の声が響く。

ガーランド
「おお、この声は確かにつれてきてるようだな。……久しぶりだし、見に行くか」

 テントを出ていくガーランド。

ヘルズハーレー
「…………」
レオ
「……ガーランドの口の利き方はどうにかならないものか。ブッフヴァルト将軍は将軍内では最古参であられるのに……」
ヘルズハーレー
「……あいつの口調は死んでも直らんだろう。それに、昔私の下にいた縁もある。レオ将軍は気にする必要はない」
レオ
「……そうですか」
ヘルズハーレー
「……それより、作戦は? ヴェルヌ将軍からは概要しか聞いていない」
レオ
「そうですね。今から説明します」


・ナルシェ、長老の家
 バナン、エドガー、レナが入り、長老とガードを説得していたリターナーの男が振り向く。


「バナン様! それにエドガー様も!」
バナン
「ご苦労だった、ジュン。
《長老の前に来て》
長老、これがこちらの誠意です」
長老
「むむむ……」
バナン
「彼がフィガロ王。そしてタイクーンのレナ姫。ウォルス王やカルナック女王も休憩所で休んでもらっています」
エドガー
「はじめまして、私がフィガロの王、エドガーです」
長老
「確かに……フィガロ王じゃ」
レナ
「私たちは本気で帝国と戦うつもりでいます。そのためにはナルシェの協力が必要不可欠だと考えています」
エドガー
「このナルシェをサミットの舞台とする許可を……下ろしてはもらえませんか?」
長老
「……よかろう。各国の王族の皆様が来てくださった以上、開かざるを得んでしょう」
バナン
「ありがとうございます。苦労してここまで来てもらった甲斐がありました」
長老
「だが、帝国がこちらに向かっているとの情報をわしらはつかんでおる。お主達も、知っておろう?」
エドガー
「ええ。その帝国に対抗するための精鋭も連れてきています」
長老
「精鋭とな……?」
エドガー
「先のウォルス、カルナック両大戦で活躍した者達やバラムの若いSeeD達です」
長老
「ほう……バラムのSeeDもか」
エドガー
「あなた達の誇るガードが強力といえども、ガストラも強敵。苦戦は必至でしょう。あなた達さえよければ、私達は協力するつもりです」
ガード
「長老、ここは……」
長老
「……協力の申し出、有難く受けよう」
バナン
「長老。一つ要望があるのです」
長老
「なんじゃ?」
バナン
「戦いが終われば……氷漬けの幻獣を見せていただきたいのです」
長老
「……どうしてじゃ?」
バナン
「今、こちらに魔導の娘を連れてきています」
長老
「何じゃと!!」
バナン
「だが、今はわけあって昏睡状態に陥っている。その眠りを解く鍵をその幻獣が握っているのです。
ぶしつけですが、お願いしたいのです。魔導の娘がこちらに危害を与えない事は約束します」
レナ
(……確証はないけど、この人達を納得させるにはそう言うしかないわね)
長老
「……よかろう。何かあった場合は然るべき責任を取ってもらうがの。王族と魔導の娘には、信頼の置ける者を護衛に回す」
エドガー
「わかりました。そうと決まれば、早速作戦会議を開きましょう。この戦いはガードの皆様の意見に従うのがいいかと思われますし」
長老
「今から召集をかける。一時間後に会議を始めよう」


・森のフクロウのアジト
アジトまでゴウに送り届けられたリノアを出迎えるメンバー達。

ゾーン
「リノア!」
ゴウ
「確かにアジトまで送ったぞ。お前らも、昨日の事は気にすんな。ガッハッハ!!」

 帰っていくゴウ。

ゾーン
「大丈夫か、リノア。首領のとこにいたとは聞いていたが……」
リノア
「……ハァ」
ワッツ
「珍しくリノアが落ち込んでるっス」
リノア
「……当然でしょ」
ゾーン
「まぁ、しかたないって。首領も他のレジスタンスの皆も気にするなって言ってくれてるしさ」
リノア
「違うのよ」
ゾーン
「違う?」
リノア
「せっかくSeeDの協力を得られたんだからさ、もっといろんなことしたかったのに、これじゃこれで終わりだよ……」
ゾーン
「あ、でもそのことについてシドさんから手紙が来てるぞ」
リノア
「え!?」
ゾーン
「ほれ」
リノア
《手紙を読んで》
「……これってマジなのかしら?」
ゾーン
「手紙に書いてるんだからマジなんだろうな」
リノア
「……フフフ」
ゾーン
「リノアのこの不気味な笑みはもしかして……」

 メンバーを置いて奥へ行くリノア。

カーター
「また、よからぬ事を思いついたんだろうな」
ワッツ
「まぁ、リノアが元気になったみたいでよかったっス」
ゾーン
「だな」


・ガストラ陣営、将軍用テント
 ダークナイトが一人でいるところにガーランドが来る。

ダークナイト
「ガーランドか。何の用だ?」
ガーランド
「いや、何というか……今回の作戦で少し思うところがあってな」
ダークナイト
「……俺に言うべきことか?」
ガーランド
「レオやおっさんには言いにくいことではある。だからお前だ。ま、同じ将軍として聞いてくれ」
ダークナイト
「…………」
ガーランド
「レオも思っているだろうが……正直俺は今の段階でこの作戦に乗り気じゃない。
バロンがいないと、ナルシェ侵攻はリスクが高すぎるんだよな。バッツ=クラウザーやセリスみたいな手応えある連中と戦えるのは個人的には嬉しい限りだが……
帝国全体で考えれば俺はこの作戦を望ましいとは思わない。陛下は、幻獣やクリスタルに執着しすぎている気がする」
ダークナイト
「…………」
ガーランド
「しかも、これまでの作戦は大体ヴェルヌが唆したものだろ。陛下自身の考えがどこまでこの方針に関与しているのかは俺にはわからん。
まぁ、ヴェルヌは軍師だからあいつが作戦の方針を立てるのは当然のことなんだが……。それにしては、最近のクリスタルにしても執着しすぎている感がある」
ダークナイト
「……何が言いたい」
ガーランド
「そういった力に執着するってことは……よくある話だが、本格的に陛下は老いてきたんじゃないかと俺は思うんだ。
よくある話だろ。ガストラの歴史にも年老いて金や変な力に執着して死んでいった権力者の歴史は腐るほどある。陛下も、ご多分に漏れずその状態にあるんじゃないか?
だから、ヴェルヌの言うことを全面的に信用し、あいつを重用する。そうなると次に問題になるのが……陛下には嫡子がいないことだ」
ダークナイト
「……ヴェルヌ将軍が陛下亡き後の帝国の実権を握るのでは、と言いたいのか?」
ガーランド
「そういうことだ。お前はどう思う? 今回の作戦にしても、そのことについても」
ダークナイト
「今回の作戦については……幻獣の奪取さえ成し遂げればいいだけだ。十分成功は可能だろう。そして……
……ヴェルヌ将軍は信頼できる誠実な人間だ。帝国内の由緒ある人間を探しその人間を守り立てるだろう。帝国を奪うようなことはしない」
ガーランド
「……やっぱりお前はそう考えるか」
ダークナイト
「そういうお前はどう思うんだ?」
ガーランド
「……前にも言ったが、俺は強い奴とさえ戦えればそれでいいさ。柄にも合わない変な話をしちまったな」
ダークナイト
「……いや、興味深い話ではあった」
ガーランド
「フン……」

 テントを出ていくガーランド。

ダークナイト
「…………
強い奴と戦いたいだけ……お前の本心は本当にそれだけなのか? ガーランドよ」


 第115話へ続く