FINALFANTASYν(ニュー)まとめwiki - 第121話「新たな旅路」
・バロン城、王の間
 玉座に座るゴルベーザに次の行動の指示を確認するバルバリシア。

バルバリシア
「ゴルベーザ様、本当によろしいのですか?」
ゴルベーザ
「私が望んでいたシナリオとは違う形になってしまったが……。魔女の協力を得られなかった今、別の方法をとるしかあるまい。
私はまだ傷が癒えきっていない。私の代わりにルビカンテとともに向かうのだ」
バルバリシア
「わかりました。しかし……本当にセシル=ハーヴィは我々の行く先に現れるのですか?」
ゴルベーザ
「あれに働きかけているのは私だけではない。……パラディンに到るために、あの男は必ず現れる」
バルバリシア
「わかりました……」

 風を纏い、姿を消すバルバリシア。

ゴルベーザ
(……もう一つの道……パラディン。己で切り開いた道の先にあるもの……。私と道は違えども、辿り着く結論は……同じはずだ。
この試練を乗り越える事ができなければ……それまでの男という事だな)


・古代図書館
 古代図書館を訪れ、学者の一人に迎えられているテラ。

学者
「お久しぶりです。テラ様」
テラ
「すまんのう。急な訪問になってしまって」
学者
「いえ。他ならぬテラ様の頼みです。既に本の在り処は判っておりますので、ご案内いたします」
テラ
「うむ」

 歩きかけた学者が走ってきたギルガメッシュにぶつかる。

ギルガメッシュ
「おっと! すまねぇな」

 出口へ向かうギルガメッシュを見送るテラと学者。

テラ
「ん? 誰じゃ? 今の赤い鎧の男は?」
学者
「名前は存じないのですが……。さきほど急にこちらにいらっしゃったようです」
テラ
「この場所には縁の無さそうな風体の男じゃが……」
学者
「確かに……。なんだかアヤシイですね」
テラ
「まぁ、よかろう。本の場所に案内してくれい」
学者
「わかりました。こちらです」


FINAL FANTASYν
第121話「新たな旅路」


・大型ホバー船、大部屋
 土のクリスタルの手がかりを得るため、ダムシアンへ向かう。
 メンバーは、バッツ、レナ、ファリス、ガラフ、マッシュ、セシル、ローザ、リディア、エアリス、エリア、クラウド、ティファ。

バッツ
(土のクリスタルの手がかり……か)


―ティンバーマニアックス社、編集室前の廊下(回想)
 ラグナに話を聞きに来たバッツ。

バッツ
「古代図書館……ですか」
ラグナ
「うむ。俺もどういうところかはよく分かってないんだが、資料室から出てきた記事によると、ダムシアン地方にあるらしい。
色んな文献が保管されているらしいし、もしかしたら最後のクリスタルが何処にあるかがわかるかもしれないぞ!」
バッツ
「わかりました。今のところ行く当ても無いですし、そこに行ってみます。それはそうと……」
ラグナ
「何だ?」
バッツ
「慌しくて聞きそびれちゃってたんですけど。ラグナさん達はどうして急にナルシェからこっちに帰ってきたんですか?」
ラグナ
「いつか言っただろ? 女の子を捜してるって」
バッツ
「そういえばそうでしたよね。……あ、見つかったんですか!?」
ラグナ
「いや、見つかったってわけじゃあないんだけどさ。もしかしたらっていう目撃情報みたいなものが会社に入ったんだ」
バッツ
「そうなんですか……。俺はとりあえずエドガー達と一緒にカルナックまで帰ります」
ラグナ
「そうか。じゃあ、元気でな。レナちゃんやティナちゃんにもよろしく言っておいてくれ」
バッツ
「はい。それじゃあ」

 廊下を歩き去るバッツ。

ラグナ
「…………」

 編集室から男が一人出てくる。


「ラグナ君」
ラグナ
「あ、編集長」
編集長
「情報が入ったということは……“帰る”のかい?」
ラグナ
「はい。編集長にはお世話になりました。またすぐにお世話になる事になるかもしんないですけどね」
編集長
「いつ帰ってきてもらってもかまわんよ。私は君の書く記事が好きだからな」
ラグナ
「嬉しいですね。それじゃあ、キロスとウォードを待たせてるんで。
色々ありがとうございました」
編集長
「ああ。達者でな」
ラグナ
「失礼します」


―火力船、バッツの部屋(回想)
 エドガーに古代図書館のことを伝えたバッツ。

エドガー
「古代図書館か……」
バッツ
「エドガー、聞いたことあるか?」
エドガー
「名前だけはあるにはあるが……。確か古代文献の解読を中心に行っているダムシアン地方にある施設のはずだが。
確かにクリスタルの所在を調べるにはうってつけかも知れない。幸い、ダムシアンはリターナーと協力関係にある。入国は難しくないだろう」
バッツ
「そうか……。とりあえず、土のクリスタルの情報が全く入ってこない以上そこに向かってみるよ」
エドガー
「そうだな。ダムシアンはカルナックの隣国。丁度この船はカルナックへ向かっている所だし、そこから向かうのが一番だろう。女王にも砂漠を越えられる大型のホバー船の手配を頼んでおこう」
バッツ
「あと、エドガー。一つお願いがあるんだけど」
エドガー
「何だ?」
バッツ
「ティナをしばらく休ませてあげたいんだけど……どうだろう?」
エドガー
「フム……。確かにそうだな。ここのところ、彼女には色々ありすぎた。君たちのダムシアン行きの間は、休ませてあげるのがいいかもしれないな。
セリスとロック、それにザンガン殿をしばらくは軍備の心細いカルナックに駐留させる予定だったから、彼女もカルナックで休んでもらうというのはどうだ?」
バッツ
「そうだな……。ダムシアンや古代図書館から帰ってくる時に必ずカルナックには立ち寄るはずだし。うん、そうしよう」


・大型ホバー船、大部屋
 改めて同行するメンバーを見回すバッツ。

バッツ
(けど、あらためてこう見ると大所帯だよな〜。カルナックに最初に向かったメンバーと同じだけど。
……レナとファリスは、もう大丈夫みたいだな。隣同士に座ってるし)
「そういえば……ガラフ」
ガラフ
「なんじゃ?」
バッツ
「ガラフ、管制塔の戦いの時にケアルラ使ってたよな? もしかして記憶が少し戻ったんじゃないのか?」
ガラフ
「う〜む。何とも言えんのう。あれは追い込まれた時にポーンと頭から湧き出るように唱えられたんじゃ。ほぼ無意識で唱えたに近い感じじゃな」
バッツ
「そうか……」
ガラフ
「でもそのことがあって記憶の方も、案外どうにかなるかもしれん気がしてきたぞい」
バッツ
「どうしてだ?」
ガラフ
「何かきっかけがあれば思いだせることがわかったからじゃよ。お主達についていけばそのきっかけにめぐり合える確率は高そうじゃしな」
(……そうじゃ。もののついでに聞いておこうかの)
「バッツ、お主実際の所誰が……」

 突然、ホバー船が大きく揺れる。

ガラフ
「うおっ!」
エリア
「な、な、な、何なんですかー!」
エアリス
「落ち着きなさい、エリア!」
エリア
「でも〜!」
セシル
「モンスターかもしれない! 戦える人は外に出るんだ!」


・砂漠
 外へ出て襲撃者を探す、バッツ、セシル、クラウド、マッシュ、ファリス。

マッシュ
「いない!?」
バッツ
「どこにいったんだ!?」
クラウド
「…………」

 砂の中から忍者のような格好の少女が現れる。

セシル
「!!」
ファリス
「砂の中か!」
忍者娘
「ここであったが百年目! 覚悟しろ、暗黒騎士! 火遁の術!」

 どこからか出てきた水がファリスに直撃する。

ファリス
「うわっ!」
忍者娘
「あっ! ミスった!」
セシル
「君は……!」
ファリス
「この野郎! やってくれたな!」

 風水士の力で砂嵐を起こすファリス。

忍者娘
「うわわわ! 目が!」
セシル
「暗黒波!」

 手加減したセシルの暗黒波を食らい、忍者娘が倒れる。

マッシュ
「あれがファリスの風水士の力か……!」
ファリス
「砂漠だから、砂嵐か。なるほど」
クラウド
「……感心している場合じゃない」
セシル
「そうだね。……僕を狙う理由を教えてもらわないと」
バッツ
「?」

 忍者娘に近づくクラウド。

忍者娘
「く〜! 一発で仕留めてやる予定だったのに〜!」
クラウド
「……立て」
忍者娘
「立てっていわれても、さっきので尻餅ついちゃって立てないんだよ!」
クラウド
「そうか」
セシル
「あ! 待ってくれ、クラウド!」
忍者娘
(……こいつも単純か。楽勝楽勝)
クラウド
「ならば……」

 クラウドが忍者娘を殴って気絶させる。

忍者娘
「うげっ!」
バッツ
「ク……クラウド!?」
クラウド
「……気絶したようだな」
バッツ
「気絶したようだなって、いくらなんでも……」
クラウド
「こいつは俺達を襲った。その相手に手加減をする必要がどこにある?」
バッツ
「まぁ、確かにそうだけど……」
クラウド
「俺達はダムシアンに向かっている。丁度いい。然るべき所にこいつを突き出してやればいい。それまでは俺がこいつを見張っておく」
バッツ
「わ、わかった……。頼んだ、クラウド」
セシル
「……実は、前にもこの娘に襲撃された事があるんだよ」
マッシュ
「本当かよ? セシル!?」
セシル
「うん。コルツ山でなんだけど……。詳しい事はホバー船の中で話すよ」
ファリス
(……服、濡れちまったな)


・大型ホバー船、大部屋
 バッツ達に事情を話したセシル。

バッツ
「マテリア……ねぇ。エッジからはそんな話は聞いてなかったけど」
セシル
「レナ、心当たりはあるかい?」
レナ
「ううん。エッジさんからはマテリアについて一度も聞いたことないわ」
セシル
「そうか……。ますます話が見えてこなくなったな」
ローザ
「でも、どうして黙っていたのよ、セシル」
セシル
「それは、みんなに心配をかけたくなかったから……」
マッシュ
「おいおい、セシル。俺達は仲間なんだぜ? それくらい遠慮なく言えばいいじゃないか」
ローザ
「マッシュさんの言うとおりよ。何でも自分で抱え込んじゃだめ。私たちにちゃんと相談して?」
セシル
「そうだね……。ごめん、みんな」
バッツ
「よし! とりあえずあの忍者娘についてはダムシアンについてからにしよう。もうすぐ到着するらしいし」
エアリス
「レナちゃんってダムシアンには行ったことあるの?」
レナ
「はい。ダムシアン王だけでなく、ギルバート王子にも何度かお会いしたことがあります。ただ、最近王はお体のほうがあまりよろしくないと聞いています」
マッシュ
「ダムシアンの軍備は、あまり十分とはいえないんだろ? ってことはそのギルバート王子に国の未来がかかってるってことだよな。大丈夫そうなのか? その王子様は?」
レナ
「……う〜ん。……どうなんでしょう」
エアリス
「レナちゃんが唸るってことは……あんまり頼りにならなさそうね……」
レナ
「凄く優しい人なんですけど……、争いを好まないっていうか……何と言うか……」
マッシュ
「まぁ、会ってみればわかるだろうよ。……ところでファリス。いつまで服濡らしてるんだ? 着替えればいいじゃないか?」
ファリス
「ぬ、濡れてるのはちょっとだけだから別に乾かさなくても……!」
マッシュ
「おいおい、この天気だぜ? 脱いで乾かしとけばいいじゃねえか」
エアリス
(……これは!)
「マ、マッシュさん。いいじゃない、そ、それくらい」
ガラフ
「そうじゃぞい。気にする必要は無い。ほれマッシュ。いくぞい」
ファリス
「あ……あ……! やめろってば!」
バッツ
「や、やめろガラフ!」

 ガラフとマッシュに服を取られるファリス。

マッシュ
「ほらよ……っと……!!」
ローザ
「え……!?」
ガラフ
「な……なんと……!!」
バッツ
(しまった……!)
ファリス
「…………」
エアリス
「……バレちゃったわね」
ローザ
「嘘……ファリスさんて……女の人だったの!?」
セシル
「…………(ゴクッ)」
リディア
「じゃあじゃあ、ファリスお兄ちゃんじゃなくて、ファリスお姉ちゃんだったんだ〜!」
ファリス
「……服、返せよ」
マッシュ
「あ……! す、すまん」
ファリス
「……遅かれ早かれバレそうな気はしてたんだ」
セシル
「本当に……女性なのかい?」
バッツ
「……そうだよ。ファリスは女だ」
セシル
「バッツ、知っていたのかい!?」
レナ
「バッツだけじゃないです。私も知っていました。それに、エアリスさんも」
エリア
「姉さんも!? いつの間に……」
エアリス
「まぁ、色々あってね……」
ファリス
「…………」
ガラフ
「うむ……」
エリア
「でも、どうして黙っていたんですか?」
ファリス
「……バッツにも言ったけど、海賊の頭が女だと舐められるからだよ」
エリア
「でも、確か女性のおかしらさんもいたような……」
ファリス
《地団駄を踏み》
「! あいつと一緒にするんじゃねぇ!」
エリア
「ふぇ、ふぇえ〜! すいませ〜ん!」
バッツ
「落ち着けって、ファリス」
ファリス
「…………!」
バッツ
「みんなも、あまり茶化さないでやってくれ。ファリスはファリスだ。別に男だろうと女だろうと関係ないさ」
ガラフ
「そうじゃな。ファリスが女じゃったからって、特に何か変わるわけではないしのう」
ファリス
「……ジジイ。元はといえばお前のせいでもあるんだぞ」
ガラフ
「ん……? そうじゃったかのう? あ痛たた……。頭が痛くて思い出せんわい」
ファリス
「ジジイ……!
……ふぅ。もういいや、別に。ばれちまったもんは仕方がない。着替えてくるよ」

 別の部屋へ行くファリス。

バッツ
「…………」
エアリス
「まぁ一つしがらみが無くなったってことでいいんじゃないかしら」
レナ
「そうですね……」


・大型ホバー船、倉庫
 クラウドとティファが気絶した忍者娘を見張っている。

ティファ
「まさか、クラウドがついて来てくれるとは思わなかったな」
クラウド
「……まだダムシアンに行ったことがなかった。もしかしたらダムシアンにあいつの手がかりがあるかもしれない。だからついて来た。それだけだ」
ティファ
「…………」
クラウド
「…………」
ティファ
「……あのこと、みんなには言わないの?」
クラウド
「……あの事?」
ティファ
「五年前の……」
クラウド
「……別にわざわざ言う必要も無いだろう」
ティファ
「そう……ね」
忍者娘
(……ハッ!
うぐぐぐ……捕まるなんて下手こいちった。手足も縛られてるし……!
でも、これぐらい大したことじゃないね! 何たってアタシは忍者! この程度の縄くらい、縄抜けの術でチョチョイのチョイってね。
ここをこうして、こうすると……!!
《縄抜けを試みる》
あれ……おかしいな……。ムム! こっちの方が余計にこんがらがっちゃったし!
…………。
……脱出の機会はまだあるはずだわ! それまで耐えるのよ、ユフィ……!
……それにしてもこの乗り物、かなり揺れる……ウプ!
はぅ……。乗り物酔いが……。は、早く止まって〜!)


・ダムシアン城、城門前
無事到着し、レナが代表して兵士に話をつける。

ダムシアン兵
「お待ちしておりました。レナ姫様、そしてお付きの方々。ようこそ、ダムシアンへ。王がお待ちです。早速ご案内いたします」
レナ
「わかりました。
《皆を振り返り》
ダムシアン王には私とバッツ、それからマッシュさんでお会いしてきます。みんなはゆっくり休んでいてください」
クラウド
《ユフィを突き出し》
「その前に、こいつを牢に入れておいてくれ」
ダムシアン兵
「牢にですか?」
クラウド
「ああ。俺達がここへ来る途中に襲ってきた。油断できない奴だから厳重に警戒を頼む。逃げ出そうとしたら多少強引に扱っても構わない」
ダムシアン兵
「わ、わかりました」
エアリス
(……容赦ないわね)
ユフィ
(クッソー! この金髪トンガリチョコボ頭め! 後でアタシのとっておきの忍術をぶちかましてやるんだから〜!!)


・ダムシアン城、王の部屋
 病床のダムシアン王と面会する、レナ、バッツ、マッシュ。

ダムシアン王
「そうか……。とうとうエドガー殿が立たれたか」
レナ
「はい。でも、ガストラ・バロン両国に対抗するにはまだそれだけでは足りません。ダムシアンの力も必要なのです」
ダムシアン王
「……私はエドガー殿の父、つまり前フィガロ王とも旧知の仲。エドガー殿からの要請、断れるはずも無い。
しかし、ゴホッゴホッ……。ご覧の通りの有様じゃ。私のこの体では世界中を廻る事もできん……。
《マッシュを見て》
マッシュ殿か。見違えたものじゃ。前に会ったときはわしよりも小さい少年じゃったのに、こんなにも立派になられるとは……」
マッシュ
「…………」
ダムシアン王
「私の息子のギルバートにも、これくらい威厳があれば憂いは無いのじゃがのう……。
いや、マッシュ殿だけではない。そこにおる、バッツ=クラウザー……。君の事は風の噂で聞いておるよ。
ガストラの将軍とも互角に渡り合ったと聞いておる。それほどの勇気と力が息子にもあれば……。
おっとすまぬ……ゴホッ。ついつい愚痴ってしまったのう……」
バッツ
「あの、ダムシアン王」
ダムシアン王
「なんじゃ?」
バッツ
「クリスタル……っていう言葉を、聞いたことは無いですか?」
ダムシアン王
「クリスタル……フム……。すまぬ、覚えがないのう……」
バッツ
「そうですか……」
ダムシアン王
「それについてはわからぬが、事前に頼まれておった古代図書館への連絡は取り付けてある。しばらくここで休んだ後、向かえば良かろう」
バッツ
「わかりました。……ありがとうございます」
(王のこの反応……、ダムシアンにはクリスタルはないか……)


・ダムシアン城、市場
 エアリス、ファリス、エリア、ガラフが市場にやって来る。

エアリス
「それにしても、あっさりバレちゃったわね」
ファリス
「……もうその話はいいだろ」
エアリス
「……そうね」
(う〜ん、この状態のファリスさんと話すのは難しいわね……。バッツはレナちゃんと行っちゃったし、クラウドとセシル君達は忍者娘の尋問に行っちゃったし。でも後の二人はいてもいなくても一緒かもしれないけど)
エリア
「交易で栄えてるって言うだけあって、色んな人たちがお城の中にいますよね」
ファリス
「そうだな。俺も噂くらいには聞いたことがあったが……。すれ違う商人の売り物も、珍しいものが多いな」
ガラフ
「わしらでは手の届かん値段なんじゃろうな」
エアリス
「そういえば、ガラフさんって記憶喪失になる前にお金とか持ってなかったの?」
エリア
「そうですよね。手ぶらであのあたりをお爺さんが徘徊してるって話、冷静に考えるとかなりおかしいです」
ガラフ
「ムム……、お金……お金……。
思いだせんのう……。でも、もしかしたら実はワシは億万長者じゃったということもありうるかもしれんのじゃな」
エアリス
「確かにね……! そうだ、こういう話は早めにしておきましょう。ガラフお爺さま。記憶の戻ったあかつきには服をプレゼントしてくれませんかしら?」
エリア
「あ! どうしてそんな話になるんですか!」
エアリス
「何言ってるの。私のケアルにはガラフさんもお世話になってるのよ。もしガラフさんが億万長者なら多少のお礼くらい貰ってもいいじゃない?」
ファリス
「服って……。旅をする分は何でもいいだろ?」
エアリス
「旅が終わった後でいいのよ。それに、ファリスもそういったことに気をつけてみてもいいんじゃない?」
ファリス
「……! 俺はいいんだよ! 俺は!」
ガラフ
「ハッハッハ! いいぞい。もしわしが億万長者なら、服でも何でも買ってやるぞい。エリアも、それにファリスもじゃ」
エリア
「本当ですか!?」
エアリス
「あら嬉しい! 丁度この前サウスフィガロの街でいいワンピース見つけた所なのよ〜。ありがとう、ガラフさん!」
ファリス
「お……お……俺はいいって!」
ガラフ
(……ま、万に一つもそんなことはないじゃろうけど)
エリア
「ん……? 何か聞こえませんか?」
エアリス
「この音色は……」
ファリス
「リュート、だな」
エアリス
「ちょっと気になるわね。行ってみましょう!」

 リュートの音が聞こえる方へ歩いて行くエアリス達。
一人の吟遊詩人の周りに人が集まっている。

エアリス
「なかなか素敵ね」
ガラフ
「うむ、いい腕じゃのう」
エリア
「歌声も綺麗です……」

 女性が一人、歩いてきてエアリス達に話しかける。

女性
「ギルバートのリュート、素敵な音色でしょ?」
エアリス
「ギルバート……?」
ファリス
「ギルバートは、ここの王子様の名前だろ」
エアリス
「あ、そうそう。ということは、王子様自身がリサイタルしてるってことかしら」
女性
「そうなんです。私、一度彼の演奏と唄を聞いたときから彼のことが頭から離れなくなって……。ここまでついてきてしまったんです」
エアリス
「ついてきたって……。熱心なおっかけね」
女性
「おっかけというか……家を出て、彼に付いていくと決めたんです」
エリア
「家を出てって……か、駆け落ちしたってことですか〜!?」
女性
「そういうことになるのかもしれません」
エアリス
(こんな綺麗な人を虜にするなんて……。レナちゃんの話だとただのヘタレかと思ってたけど、やるわね)
女性
「でも、やっぱりずっとこのままでいるわけにもいかないので、話し合いのために今日お父様をここに呼んでいるんです」
ガラフ
「なるほど。でも、こんなに綺麗な娘さんなら相手が王子様といえども嫁に出したくない気持ちはわかるのう」

 突如、僅かに城が揺れる。

女性
「フフフ。それならいいんですけどね……!」

 爆音が轟き、城が大きく揺れる。


 第122話へ続く