FINALFANTASYν(ニュー)まとめwiki - 第122話「勇気の音色を」
・バロンの飛空挺、甲板
 ダムシアンへ向かうルビカンテとバルバリシア。

バルバリシア
「もうすぐダムシアンね……」
ルビカンテ
「…………」
バルバリシア
「今回の作戦は少し急すぎている気がしない? ルビカンテ?」
ルビカンテ
「ゴルベーザ様が今動くべきと判断したのだ。ならば、我々はそれに従うしかあるまい。……そろそろ行くぞ。飛空挺はメーガス三姉妹に任せておけ」
バルバリシア
「……わかったわ」


FINAL  FANTASYν
第122話「勇気の音色を」


・ダムシアン城、王の部屋
 兵士からバロン襲来の知らせを聞くバッツ達。

バッツ
「赤い翼だって!?」
ダムシアン兵A
「はい! 突如バロンの飛空挺が一艇現れ、わが城に向かって砲撃を行いました! 威嚇のつもりなのか、その後は沈黙したままです!」
マッシュ
「バロンってことは、もしかしたらセシルの言っていたゴルベーザっていう奴が来てるかもしれねえ!」
バッツ
「砲撃を行ってこないっていうことは……奴らエブラーナの時みたいに、直接乗り込んでくる気か!?」
レナ
「どうする、バッツ!?」
バッツ
(こんな時、エドガーならどう言うだろう……。そうだ!)
ダムシアン王
「ゴホッ……。わしが行かねば……」
バッツ
「いえ、ダムシアン王はここに残っていてください!」
ダムシアン王
「だがしかし……」
バッツ
「俺達がなんとしてでも奴らを食い止めます! だから王はここに残っていてください!」
ダムシアン王
「うむ……、申し訳ない……。……こんな時にギルバートは何をしておるのだ」
レナ
「バッツ、私がギルバート王子を探してくる!」
バッツ
「ああ。そのあとレナは避難の手伝いをやってくれ。ギルバート王子と協力するんだ!」
レナ
「わかった!」
マッシュ
「よし、いこうぜ!」


・ダムシアン城、市場
 バッツ達と同じく、エアリス達もバロン襲来の知らせを聞く。

エアリス
「まさかここでもバロンと遭遇するなんて……」
ダムシアン兵B
「皆さん! 落ち着いて我々の指示に従ってください! 脱出ルートは既に確保してあります!」
ガラフ
「よし、わしらは敵の元へむかうぞい!」
エリア
「はい! アンナさんたちは……。
……って! アンナさんがいませんー!」
ファリス
「お、おい! 王子もいないぞ!」
エリア
「ま……まさか……」
エアリス
「真っ先に逃げ出したっていうの!?」
ガラフ
「なんという……」
エアリス
「……と、とりあえず、王子様はほっときましょ! 私たちに出来る事をしないと!」
ファリス
「……そうだな。行こう!」


・ダムシアン城、牢屋
 牢に入れられたユフィの尋問をしていたセシル達も知らせを受ける。

セシル
「赤い翼……!」
ローザ
「セシル!」
ダムシアン兵C
「我がダムシアンの兵力では太刀打ちできません! ご助力願えませんか!?」
セシル
「……わかりました」
クラウド
「こいつはどうする? 俺達がいなくなれば、この混乱に乗じて逃げ出すのは目に見えているぞ?」
ユフィ
(くっくっく〜。いいタイミングで来てくれたわ! 私にはこの国がどうなろうと関係ないもんね。さっさとトンズラこいちゃおっと!)
セシル
「……逃げたいなら逃げればいい」
ユフィ
「!!」
セシル
《牢の中のユフィに向き直り》
「何度も言うようだけど、君の言うマテリアについては何も心当たりが無いんだ。それに、君が僕を狙うというならまた会う機会もあるはずだ。この話はまたその時にすればいい」
ユフィ
「…………」
セシル
「行こう、ローザ」

 先に走り出すセシル。

ローザ
「あ、待って! セシル!」

 ローザもセシルを追って走り出す。
ティファも追いかけようとするが、牢の前から動かないクラウドに気づき振り返る。

ティファ
「クラウド?」
ユフィ
「……何だよ」
クラウド
「……セシル=ハーヴィがバロンにいた時にエブラーナに攻め込んだのは事実だ。だが、あいつがマテリアを盗んだという話は事実ではない」
ユフィ
「あ、あんたがどうしてそう言い切れるのさ!」
クラウド
「……あいつは嘘をつけない人間だからな。お前も薄々感づいてるんじゃないか?」
ユフィ
「…………!」
クラウド
「俺はお前とセシルの間のいざこざには興味ない。そして、あいつがいいと言ってるんだ。さっさとここから消えろ。
いくぞ、ティファ」
ティファ
「え、ええ……。行きましょう」

 牢屋を出ていくクラウドとティファ。

ユフィ
「…………」


・ダムシアン城、大広間
 侵入してきたルビカンテとバルバリシアを迎え撃つダムシアン兵達。

ダムシアン兵D
「く……」
バルバリシア
「邪魔よ。あなた達では私達には敵わないわ」

 兵の一人がバルバリシアの風に吹き飛ばされる。
 そこへ駆けつけるバッツとマッシュ。

マッシュ
「もう入ってきてやがったか!」
バルバリシア
「あら、少しは骨のありそうなやつが出てきたわね」
ルビカンテ
「……待て、バルバリシア」
バルバリシア
「何よ」
ルビカンテ
「あの茶色い髪の男……恐らくバッツ=クラウザーだろう」
バッツ
「!」
(俺の名前を知っている!?)

 エアリス達も駆けつける。

エリア
「バッツさん!」
ファリス
「何だあいつらは!? あいつらがバロンの連中か!?」
ガラフ
「炎のマントの男も、隣におる女性もただの人間とは思えんのう。女性の方はえらく別嬪さんじゃが」
バルバリシア
「あら、私の魅力を理解できる人間がいてくれたのね。最近デリカシーの無い男ばかりだったから、少し嬉しいわ。私がお相手をしてあげようかしら」
ガラフ
「ほほっ。こんな老いぼれのお相手をしてくれるとはありがたいのう」
エリア
「ガラフさん! 今はそんな事いってる場合じゃあないですよ!」
ガラフ
「冗談じゃよ。さすがに魔物はお断りじゃい」
マッシュ
《前に出ながら》
「バッツ、ゴルベーザの目的がクリスタルだっていうのなら、奴らがお前の名前を知っていたって何もおかしくはないぜ! それに……。
バロンの手先ども! お前達の探しているクリスタルはここにはないぞ!」
バルバリシア
「……ですって。どうする、ルビカンテ?」
ルビカンテ
「ならばもう一つの目的を果たすまで。セシル=ハーヴィが来るまで、こいつらの力を試せばよかろう」
バルバリシア
「あら、あなたらしくないわね。いつもならもっと一対一の勝負に拘るじゃない?」
ルビカンテ
「この状況では、あちら側が許してくれないだろう」
バルバリシア
「それもそうね。それじゃあ……。
見せてあげるわ! ゴルベーザ四天王、風のバルバリシアの力を!」
ルビカンテ
「……ゆくぞ」
マッシュ
「引く気は無いのか! なら、オーラキャノン!」

 マッシュがルビカンテにオーラキャノンを放つ。

マッシュ
「……チッ! あまり効いてねえぜ!」
バッツ
「多分、あのマントが攻撃を軽減しているんだ!」
エアリス
「いくわよ! サンダー!」
エリア
「ブリザドです!」
バルバリシア
「ウフフ……。そんな低級魔法、弾き飛ばしてやるわ。
エアロラ!」

 バルバリシアのエアロラがエアリス達の魔法を弾き返す。

エリア
「きゃあ!」
バッツ
(俺のエアロラよりも強力だ……!)
マッシュ
「やっかいな相手だぜ。俺達だけでどうにかなるのか……?」
バッツ
《前に出る》
「俺達だけでなんとかするんだ!」
(セシルやクラウド達が来てくれれば、こいつら相手でも……!)


・ダムシアン城、廊下
 国民の避難を手伝いながら、いなくなったギルバートを探すレナ。

レナ
(もしかしたらと思ったけど、さすがに避難しようとしている人の中にはいないか……)

 ギルバートがアンナを連れて現れる。

アンナ
「離して! ギルバート!」
レナ
《ギルバート達の方に行き》
「ギルバート王子!」
ギルバート
「レ、レナ姫! ……そうだった、今日はレナ姫が城に来る日だった」
レナ
「……何をしているんですか? ギルバート王子?」
アンナ
《ギルバートの手を振り払い》
「手を離して、ギルバート!」
ギルバート
「アンナ……」
アンナ
「あなたはこの国の王子でしょう? あなたが来るべき場所はここではないわ!」
レナ
「ギルバート王子、まさか……」
アンナ
「まだ避難していない人を助けに行きましょう? 私達にだってそれくらいならできるはずよ!」
ギルバート
「……駄目だよ。ここにいた方が安全だ! 戻ると何が起こるか……!」
アンナ
「大丈夫よ! 行きましょう、ギルバート!」
ギルバート
「でも……。……怖いよ」
アンナ
「! …………。もういいわ! 私、戻るから!」

 来た道を駆け戻っていくアンナ。

ギルバート
「ア、アンナ!」
レナ
「……ギルバート王子」
ギルバート
「……レナ姫」
レナ
「確かに、王子は戦うことはできないかもしれません。でも一国の王子として、この緊急事態にできることはたくさんあるはずです。なのに、真っ先に逃げ出そうとするなんて……!」
ギルバート
「…………」

 リディアがやって来る。

リディア
「レナお姉ちゃん!」
レナ
「リディア! 今までどこにいたの!?」
リディア
「えっと、セシルお兄ちゃん達と一緒に牢屋に行ってたんだけど、つまんないから抜けだして来たの。それより、何か起こってるの? さっきから凄い音がしてるよ!」
レナ
「バロンが攻めてきたのよ。今バッツ達が戦っているはずだわ」
リディア
「本当!? だったら、セシルお兄ちゃんやマッシュおじちゃん達を助けに行かないと!」

 走っていこうとするリディア。

レナ
「あ! リディア!」
リディア
「大丈夫だよ! あれ……? そこのお兄さんは何もしないの?」
ギルバート
「……僕には無理だよ。行ったってなにも出来やしないさ……」
リディア
「お兄ちゃん男でしょ! おどおどしてないでしっかりしないと!」
ギルバート
「でも……こんな状況なら誰だってこうなるだろ?」
リディア
「弱虫!」
ギルバート
「!」
リディア
「だったらいつまでもそこにいればいいじゃん! でもそれって男としてサイテーだと思うよ! マッシュおじちゃんやセシルお兄ちゃんならすぐに他の人を助けにいくもん!」

 走り去っていくリディア。

レナ
「……ギルバート王子。あんな小さい子供にまで言われて、何とも思わないんですか!?」
ギルバート
「…………」
レナ
「とにかく、アンナさん……でしたか。このままでは彼女も危険です。彼女の所に行きましょう」
ギルバート
「……わかったよ」


・ダムシアン城、大広間
 ルビカンテ、バルバリシアと戦い続けているバッツ達。

マッシュ
「爆裂拳!」
バッツ
「魔法剣エアロラ!」

 ルビカンテに爆裂拳、エアロラ剣を放つマッシュとバッツ。

ガラフ
「てやぁっ!」

 続けてガラフがルビカンテに斬りつける。

ファリス
「大地の精霊よ……俺に力を!」

 炎の攻撃をバルバリシアに放つファリス。

ルビカンテ
「……ファイガ」
バルバリシア
「エアロラ!」

 ルビカンテのファイガ、バルバリシアのエアロラをくらうバッツ達。

バッツ
「くっ、あの赤いマントの奴、全然ダメージをくらっていないのか!?」
エアリス
「風で攻撃が弾き飛ばされちゃうわ!」

 バルバリシアの髪の攻撃をくらうエリア。

エリア
「きゃあ!」
ガラフ
「その上ムチのような髪を自在に操るか……。やっかいじゃのう」
マッシュ
「せっかくの鳳凰の舞も、こいつら相手には使えそうにないな……クソッ!」

駆けつけたセシルが暗黒波で敵を牽制。クラウド達も続く。

セシル
「大丈夫か!? みんな!」
バルバリシア
「あら、いつかの元ソルジャーさんじゃない」
クラウド
「……竜騎士を助けた化け物か」
ローザ
「いくわよ!」

 ローザがバルバリシアに矢を射かけるが、風に弾かれる。
 続いてリディアが駆けつける。

リディア
「出でよ! チョコボ!」

 チョコボを召喚するリディア。

バルバリシア
「チョコボ程度では私の風には立ち向かえないわよ!」

 バルバリシアの風に消されるチョコボ。

リディア
「あっ! チョコボが!」
バルバリシア
「さすがに敵の数が多すぎるわね。どうしましょう?」
ルビカンテ
「……非戦闘員はおおかた避難したようだ。これで思う存分私も力を発揮できる」
バルバリシア
「ということは、作戦通りにやるの?」
ルビカンテ
「……ゴルベーザ様の命令を優先する。今からマントの防御を解放し、全力の火燕竜を放つ。その隙を狙うのだ」
バルバリシア
「……わかったわ」
マッシュ
「何をごちゃごちゃと!」

 ルビカンテが火燕竜を放ち、吹き飛ばされるバッツ達。
その隙にバルバリシアが髪をローザとリディアに巻きつける。

ローザ
「いやっ! 髪が!」
リディア
「何これ〜!」

 ルビカンテがさらに火燕竜を放ちバッツ達を牽制、バルバリシアがローザとリディアを捕らえる。

セシル
「しまった! ローザ!」
ローザ
「う……」
リディア
「離してよ〜!!」
バルバリシア
「おっと。あなたたちが手を出したら……この娘達がどうなっても知らないわよ」
ファリス
「人質か……!」
ルビカンテ
「このような手を使いたくは無いのだが……。
セシル=ハーヴィ。ゴルベーザ様から言伝てを預かっている」
セシル
「!」
ルビカンテ
「カインとの決戦の場を設けてある。場所はバロン城。それに相応しい力を持って現れよ。期日は三週間後……」
セシル
「カインとの……決戦?」
ルビカンテ
「私から一つ忠告をするならば……今のお前のままでは、ゴルベーザ様はおろか、カインにすら勝てまい。今一度己を省みるのだな」
セシル
「…………!」


・ダムシアン城、廊下
 牢を逃げ出したユフィがレナとギルバートに出くわす。

ユフィ
「げっ!」
レナ
「あなたは!」
ユフィ
(クッソー! こんな所で見つかっちゃうなんて! ……でも、この女ならどうにかなるかも)
レナ
「……あなたは、エッジさんの知り合いなんですか?」
ユフィ
「え!? なっ、なんだよいきなり!」
レナ
「あなたがどうしてそこまでエブラーナにこだわるのか不思議に思ったから……」
ユフィ
「アタシとエブラーナの関係なんて、あんたにはどうだっていいことだろ!」
レナ
「いいえ、そんなことはありません」
ユフィ
「えっ……」
レナ
「私はタイクーンの王女、レナです。タイクーンとエブラーナは昔から親交が深いですし、エッジさんのことも良く知っています」
ユフィ
(……王女様だったか)
レナ
「今攻めて来ているのはバロンです。エブラーナを滅ぼした張本人。そしてエッジさんは行方不明。もしかしたらエッジさんがどこにいるか手がかりを掴めるかもしれません。
あなたがもしエッジさんの知り合いなら……協力してくれませんか?」
ユフィ
「!」
(いきなり何なのサ、こいつ……。襲い掛かってきた相手に、手を貸してくれだなんて……)
レナ
「お願いします」
ユフィ
「う……」

 アンナがやって来る。

ギルバート
「アンナ!」
アンナ
「ギルバート!」

 ルビカンテの火燕竜の余波がここまで届く。

レナ
「危ない!」

 アンナが炎に巻き込まれる。

アンナ
「きゃあ!!」
ギルバート
「アンナ!!」

 アンナに駆け寄るギルバート。

ギルバート
「アンナ! しっかりするんだ、アンナ!!」

 ダムシアン兵がやって来る。

ダムシアン兵E
「あ! ギルバート王子! 大変です!
侵入者に小さな女の子と弓使いの女性が捕らえられてしまいました! 人質に取られ、手出しが出来ません!」
レナ
「もしかして、リディアとローザ!?」
ギルバート
「アンナ! アンナ!!」
アンナ
「ギル……バー……ト……」
レナ
《ギルバートの隣へ行き》
「ギルバート王子。アンナさんの怪我は、今捕まっている女性になら治せるかもしれません! 一緒に彼女を助けましょう!」
ギルバート
「…………」
レナ
「何とか言ってください、ギルバート王子!」
ギルバート
「駄目だよ、僕にはそんな力は無いよ……。それに……怖い……」
レナ
「あの女の子に、リディアに、弱虫と言われたままでいいんですか!?」
ギルバート
「……そうさ、僕は弱虫さ」
レナ
「…………!」
ギルバート
「だから、ずっとここにいるんだ! もう何もかもどうでもいいんだ! 僕の気持ちなんかレナ姫にわかるもんか!」

 レナがギルバートの頬を叩く。

ギルバート
「…………!」
レナ
「いい加減にしてください。ギルバート王子」
ユフィ
(……っていうか! アタシなんでこいつらの話聞いちゃってんのさ! この間にさっさと逃げ出しとけば良かった……。
……でも、色々話聞いちゃってなんかこのままとんずらこいちゃうと、良心が痛みそうだし!
それに人にものを頼まれるっていうのも言うほど悪い気はしないし……。もう、こうなったらどうにでもなれ!)
「……手伝ってやるよ」
レナ
「!」
ユフィ
「手伝ってやるって言ってんだよ! この大忍者ユフィ様がさ!」
レナ
「本当ですか!」
ユフィ
「あんたの睨んだ通り、アタシはエッジの兄貴の知り合い……っていうか従兄弟。確かにエッジの兄貴の安否はアタシも気になってた。それに……。
相手に気取られないように行動するのが忍者! あんたらの目的にピッタリだ!」
レナ
「ありがとうございます! ……でも、どうするんですか?」
ユフィ
(……しまった。大口叩いちゃったけど、何も考えてなかった! ……ん?)
《ギルバートに向かって》
「あんたが持っているそれ……楽器だよね?」
ギルバート
「う……うん」
ユフィ
「あんた、その楽器掻き鳴らしながら人質をとってる奴の前に出てってくれない?」
レナ
「え!?」
ユフィ
「あー、手短に話すと、人間には五感っていうもんがあるの。そんくらい、わかるでしょ?」
レナ
「それはわかりますけど……」
ユフィ
「目で物を見るのと耳で音を聞くっていうのは別口の感覚ってわけ。で、例えば緊迫した場面にいきなり美しい音色の音楽が流れ始めたら、あんたどうする?」
レナ
「多分、一瞬音に気を取られてしまうんじゃないでしょうか?」
ユフィ
「そうでしょ! 音を聞くことに注意がいっちゃって、目で捉えるほうの感覚が少し疎かになる。そこでアタシの登場よ!
敵の注意が音にいってる間に、感づかれないようにこっそりギリギリまで近づいて、煙球でかく乱! そのスキにササッと素早くアタシが人質を助ける! これで完璧!」
レナ
「上手くいくんでしょうか……?」
ユフィ
「やってみなきゃわからないでしょ! それに、やらずに後悔するよりは絶対マシ!」
レナ
「……そうですね。やってみましょう!
ギルバート王子、お願いできますか?」
ギルバート
「……でも」
アンナ
「勇気を……出し……て……ギルバー……ト……。あなた……な……らでき……るわ」
ギルバート
「……わかったよアンナ。やってみる」
ユフィ
「よし! なら早速やるよ! 音楽を鳴らすタイミングは全部あんたに任せる! いつ始まっても、この天才忍者少女ユフィがカンペキに合わせてやるよ!」


・ダムシアン城、大広間
 ローザとリディアを人質に取られ、手が出せないバッツ達。

ルビカンテ
「……もしお前がバロン城に現れなかったら、人質の命は無いものと思え。以上だ」
バルバリシア
「それじゃ、そろそろ退散しようかしら」

 どこからかリュートの音色が流れてくる。

バルバリシア
「……ん? 何よこの音楽?」
ファリス
「あれは……!」

 リュートを奏でながらギルバートが現れる。

エアリス
「ギルバート王子!」
バッツ
「ギルバート王子!?」
リディア
(あれ……? この音楽を聞いてると……力が湧いてくる……)

 煙玉の煙が辺りを包む。

バルバリシア
「これは!?」

 ルビカンテ達のすぐ傍にユフィが現れる。

ユフィ
「いくよ! 水遁!」

 ルビカンテとバルバリシアに水遁の術を放つユフィ。

ユフィ
(よし、この怯んだ隙に……!)
ルビカンテ
「ファイガ」

 ユフィが人質を救出しようとするが、ファイガに阻まれる。

ユフィ
「うわぁ!
《尻餅をつく》
痛てて……せっかく上手く決まったのに!」

 煙が晴れる。

ルビカンテ
「まだいたか……」
マッシュ
「あいつは! 忍者娘!」
エアリス
「どうしてあの子がここに!?」
ルビカンテ
「無駄だ。この炎のマントがある限り、水、氷系の魔法や術の類は受け付けない」
バルバリシア
「人質がいるって言ってるのに……。わかっていないようね……!」

 リディアがシヴァを召喚する。

バルバリシア
「え!?」
ティファ
「あれは、シヴァ!?」

 シヴァがダイヤモンドダストを放ち、バルバリシアが怯む。
 その隙に逃げ出すリディア。

バルバリシア
「あ!」
ユフィ
(今だ!)

 リディアを連れてバルバリシアから遠ざかるユフィ。

バルバリシア
「待ちなさい!」
クラウド
「……させるか。
Limit Lv2……破晄撃!」

 クラウドの破晄撃をくらうバルバリシア。

バルバリシア
「ぐっ! あの状況で召喚魔法を唱えるなんて……」
ルビカンテ
「……人質は一人いれば十分だ。帰還するぞ」
バルバリシア
「…………!」
ローザ
「……セ……シル……!」
セシル
「ローザぁ!!」

 セシルが飛び出すが、ルビカンテとバルバリシアはローザを連れ姿を消す。

マッシュ
「リディアは助け出せたけど……」
バッツ
「くそっ! ローザさんが奴らに!」
ファリス
「く……」
セシル
(僕は……僕は……)

 床を殴りつけるセシル。

セシル
「僕は……何も出来ないじゃないか!」
バッツ
「……セシル」
セシル
《さらに床を殴る》
「何が暗黒騎士だ! 人を救うための力だ! 救えた人なんて……誰もいないじゃないか!
……僕は……なんて無力なんだ」

 黙ってセシルを見つめるバッツ達。
そこにテラが現れる。

リディア
「テラお爺ちゃんだ!」

 膝を突いていたセシルが立ち上がる。

テラ
「……おぬしは無力なのではない。おぬしは戦士としては優しすぎるだけじゃ」
セシル
「テラさん……! どうして……ここに?」
テラ
「憎しみの感情を糧とする暗黒騎士の力……おぬしには向いておらんのじゃよ」
セシル
「…………!」
テラ
「……じゃが、おぬしのその性格と素質。天職といえる職業がある」
セシル
「…………?」
テラ
「……パラディンを目指しなされ」


 第123話へ続く