FINALFANTASYν(ニュー)まとめwiki - 第136話「面影」
伍番魔晄炉爆破より二時間前……

神羅カンパニー本社某所

ツォン
「……さて、この昨日の最終列車内の映像に映っている彼らだが。どう思うね?」
レノ
「……間違いないぞ、と。ウォルスで俺とルードが戦ったSeeD候補生だぞ、と。ひょっとしたら、もう正SeeDなのかもしれないですけどね」
ルード
「……間違いない」
イリーナ
「どうしてSeeDがテロ活動を……?」
ツォン
「神羅諜報部の調査によれば、どうやらこのSeeD三名はリターナーの面々と行動を共にした事があるらしい。
特に、額に傷のあるこの少年はSeeDの中でも結構な有名人のようだ。名前はスコール=レオンハート……」
ルード
「……なかなかしぶとい奴だったと記憶している」
レノ
「あのボインの姉ちゃんさえ現れなけりゃ、俺達がとっくにあの世に送ってやっていたのにな、と」
ルード
「…………」
ツォン
「そして、この金髪の男……」
イリーナ
「この瞳は……」
ツォン
「ソルジャー……なのかもしれない。彼についてはこれからここに来る男に確認してもらう」
イリーナ
「誰が来るんですか?」
ツォン
「……宝条だ。こういった妙な事態においては、奴が何か知っている可能性がある」
イリーナ
「エッ……」

 宝条が部屋に入ってくる。

宝条
「全く……。私は急がしいんだ。手短に頼む……」
ツォン
「では、ご要望通りに……。宝条、この男を知っているか?」
宝条
「…………! ……クラウド=ストライフか」
ツォン
「知ってるのか?」
宝条
「ああ……。よく知っているとも。クックック……。そうか、生きていたのか……」
レノ
「…………?」
宝条
「これは面白い事になってきた……。だが、ここにこいつが現れたという事は……」

 勝手に部屋を出ていく宝条。

イリーナ
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
ツォン
「無駄だ。確認が取れただけでいい。……そうか、やはり宝条は知っていたか。となると、元ソルジャーという事かな」
イリーナ
「ほっといていいんですか?」
ツォン
「……隠し事の多い男だ。敵ではないから、勝手にやらせておけ」
ルード
「……クラウド=ストライフとは何者なんですか?」
ツォン
「私も詳しい事は知らない。ただ、ソルジャーと同じ瞳を持つこの男が少し気になったのでね。……そう、気になっただけだ」
レノ
「まぁ、ツォンさんが気になるというなら、本当に何かあるのかもしれませんし、要警戒って事でいいですかね?」
ツォン
「ああ……。頼めるか、ルード、イリーナ?」
イリーナ
「わ、私もですか!?」
レノ
「ツォンさん直々のご指名だぞ、と」
イリーナ
「りょ、了解です!」
ルード
「……了解」
ツォン
「よし、それではいつでも動けるよう待機しておけ。こいつらの動きが確認でき次第、追って命令を伝える」
レノ
「俺はどうしましょう……?」
ツォン
「……奴らのアジトが特定でき次第、ハイデッカーあたりから命令が下るかもしれん。それまで待機だ」
レノ
「了解」


FINAL FANTASYν
第136話「面影」


『大丈夫か? ……聞こえるか?』

クラウド
「……ああ」

『あの時は……ヒザすりむいただけですんだけど……』

クラウド
「……あの時?」

『今度はどうかな? 起きられるか?』

クラウド
「……あの時? ……今度は?」

『……気にするな。今は身体の事だけ考えるんだ。……身体、動かせるか?』

クラウド
「……やってみる」
エアリス
「あっ! 動いた!」

『ゆっくりな。少しずつ少しずつ……』

エアリス
「もしもし?」
クラウド
「……わかってるさ。
なあ……あんた、誰だ?」
エアリス
「もしも〜し!」

○伍番街スラム、教会
 クラウドが目を覚ますと、エアリスと花畑の上にいる。

エアリス
「大丈夫? 一応ケアル、しておいたけど。
《天井を見上げ》
どうやら、教会の屋根とこの花畑がクッションになったみたいね。……本当、ラッキーだわ」
クラウド
「あんたは、大丈夫なのか?」
エアリス
「ちょっと痛むけど、あなたよりはマシかな。本当に星の力が守ってくれたのかも」
クラウド
「星の力……?」
エアリス
「あれ、セシル君やバッツから聞いてない?」
クラウド
「……俺は、あまりあいつらと話す事はない」
エアリス
「う〜ん、確かにそうだったわね。 あ、ってことはこれはいい機会かも!」
クラウド
「……どういう事だ?」
エアリス
「私、前からあなたとじっくり話してみたかったの」
クラウド
「俺と? ……どうして?」
エアリス
「色々とあるのよ。私にも、ね」
クラウド
「……そうか」
エアリス
「そうね、何から話そうかしら。そうだ! まず、星の力っていうのは……」


クラウド
それからエアリスは、自分の身の上の事を話し始めた。星の力の事、自分の本当の母親の事、既にこの事はバッツ=クラウザーには話してあるという事。
どうして、エアリスが俺にそんな話をし始めたのかわからなかった。……だから、聞いた。


クラウド
「なぁ……?」
エアリス
「ん? どうしたの?」
クラウド
「どうしてあんたは、そんな事を俺に話す? 俺にどうかして欲しいのか? でも、俺じゃあんたの力にはなれない。俺は古代種なんかじゃないし、あんたの苦労なんてわからない」
エアリス
「……私がこんな事をあなたに話すのは、私の質問に答えて欲しかったから」
クラウド
「質問?」
エアリス
「あなた、クラスは?」
クラウド
「クラス?」
エアリス
「ソルジャーのクラス」
クラウド
「ああ、俺は……。
クラス……1STだ」
エアリス
「ふ〜ん。おんなじだ」
クラウド
「誰と同じだって?」
エアリス
「初めて好きになった人」
クラウド
「……つきあっていたのか?」
エアリス
「そんなんじゃないの。ちょっと、いいなって思ってた」
クラウド
「もしかしたら知ってるかもしれないな。そいつの名前は?」
エアリス
「もう、いいの……。もう、いい」
クラウド
「…………」

 しばし沈黙する二人。

エアリス
「……ここ、結構花咲いているよね」
クラウド
「そうだな。バレットの話だと、ミッドガル周辺は植物の育たない環境という話だったが……」
エアリス
「私、ドールで花を売っていたからわかるの。この花っていい土壌じゃないと育たないの。……もしかして、ここに土のクリスタルがあるからなのかもね」
クラウド
「……そうだとして。
その土のクリスタルがあるのに、どうしてここ以外の土の環境は日々悪化しているんだ?」
エアリス
「……ん。確かにそうよね。あっ、でも!」
クラウド
「どうしたんだ?」
エアリス
「私、ここに土のクリスタルがあると思うの」
クラウド
「…………」
エアリス
「さっきの魔晄炉でのプレジデントの言葉……。入れ物がどうたらって。あれって、もしかしたら神羅の人工クリスタルの事なのかも!」
クラウド
「人工クリスタル?」
エアリス
「えっと……。難しい事はわからないけど、クリスタルの中のエネルギーを別の容器に移し替える事が可能みたいなの。そうやってできたものを、実際にカルナックでもタークスが使ってた。
もしかしたら、あの魔晄炉も単に土のクリスタルのエネルギーをミッドガル全体に供給するためのものにすぎないのかもしれないわ」
クラウド
「……なるほど。でも、仮にあんたの言う事が正しかったとしても、ここに花が咲く理由にはならない。魔晄炉による別の作用が働いているというのなら、話は変わってくるが」
エアリス
「それは……。いいじゃない、別に! 植物って結構たくましいのよ。ここの植物は、魔晄炉による土のエネルギー吸い上げにもめげずに頑張っているのよ!
あと、そろそろ『あんた』っていうのは止めて。前にも言ったでしょ。私にはエアリスっていう名前があるんだから」
クラウド
「……わかった。エアリス」
エアリス
「さて、ゆっくり休んだし帰りましょ」
クラウド
「そうだな……」
エアリス
「……ちょっとティファが羨ましいし、私もおねだりしてみようかしら」
クラウド
「?」
エアリス
「クラウド。あなた、結構色んな仕事してきたらしいわね」
クラウド
「…………」
エアリス
「ボディガードやってくれない?」
クラウド
「ボディガード……? あんたのか?」
エアリス
「そう! ティファ達のいる所までね。報酬は……デート一回でどう?」
クラウド
「デ、デート?」
エアリス
「うん! お願いできる?」
クラウド
「…………。
どっちにしろここで別れるのは危険だ。一緒に戻るしかない。自分でできる範囲でなら、自分で身を守ってくれ」
エアリス
「了解♪」
クラウド
(……何が目的なんだ、この女は?)

 ルード、イリーナが神羅兵を連れて現れる。

ルード
「……見つけた」
クラウド
「……その服……タークスか」
エアリス
「あ、あなたはカルナックの時の!」
イリーナ
「久しぶりね。……ツォンさんから連絡が来た時は驚いたけど、まさかあなたがツォンさんの探している古代種だったなんて……」
エアリス
「もうバレちゃったか……」
ルード
「……タークスの情報網をなめるな」
イリーナ
「昨日のテロから、監視カメラに映っている怪しい奴らを片っ端から調べていったわ。で、今日も映ってたあなた達を警戒してたわけ」
クラウド
(……ミッドガルは奴らのホームグラウンド。でも、こんなに早く居場所を特定されるとは……)
イリーナ
「電話越しで、ツォンさんもちょっと驚いていたわ。わざわざあなたがミッドガルに来るなんて、ってね。最初に警戒していたのはそっちの金髪の方だったんだけど、思わぬ大物がヒットしたわ」
ルード
「……イリーナ、しゃべりすぎだ」
イリーナ
「あ! すみません!」
エアリス
(ペラペラしゃべる癖は治っていないようね……)
イリーナ
「さぁ、無駄な抵抗はよして投降しなさい! 既にこの教会は神羅の兵士が囲んでいるわ!」
エアリス
「どうする? クラウド?」
クラウド
「……とりあえず、こいつらをどうにかするしかない」
エアリス
「……一つ、注文を付けたいんだけど」
クラウド
「何だ?」
エアリス
「この花の上で戦うのは止めときましょ。いい?」
クラウド
「……わかった。
《前に進み出て》
……俺達には帰らなくてはならない場所がある。そこをどいてもらおうか」
ルード
「……断る」

クラウドが切りかかるが、ルードにかわされる。

イリーナ
「てりゃ!
《クラウドに攻撃を仕掛けるが、弾き返され》
きゃ!」

ルードの攻撃をくらい、続けざまにイリーナの攻撃をくらうクラウド。

クラウド
「うぐっ……」
エアリス
「クラウド!
……サンダー!!」

 サンダーを放ち、イリーナを牽制するエアリス。

イリーナ
「ちょっと! 危ないわね!」
エアリス
《イリーナに組み付かれ》
「しまった!」
イリーナ
「あんたは大人しく捕まっときなさい!」
クラウド
《ルードの攻撃を受け止め》
(……やはりタークス二人相手では分が悪いか)
ルード
「……終わりだ」

突然窓から犬が飛び込んできて、イリーナに飛びつく。

イリーナ
「ちょっと! 何なのよこの犬!!」

天井から降りてきたシャドウが、ルード、イリーナにくないを投げつけ、クラウド達から引き離す。

クラウド
「!!」
シャドウ
「……逃げるぞ」

シャドウが煙玉を使い、辺りが煙に包まれる。

ルード
「…………!」
イリーナ
「逃げられちゃった!?」
ルード
「追うぞ」
イリーナ
「は、はいっ!」


○伍番街スラム
 教会から脱出し、シャドウに先導されながら走るクラウドとエアリス。

クラウド
「あんた、生きていたんだな」
シャドウ
「……ああ」
エアリス
「知り合いなの?」
クラウド
「……シャドウ。ウォルスに来るまでに、セシル達と世話になった」
エアリス
「ふ〜ん……」
クラウド
「どうしてあんたがミッドガルに?」
シャドウ
「……セフィロス、奴は生きていた。奴の事を調べるならここだろうと考えて、三週間くらい前にここへ来た。
……俺はあの教会を隠れ家としていた」
エアリス
「で、こっそり屋根裏から侵入して……」
シャドウ
「クラウド=ストライフ……。お前を見つけたというわけだ」
エアリス
「ねぇ、シャドウさん」
シャドウ
「……シャドウでいい」
エアリス
「じゃあ、シャドウ。あそこの花って、あなたが育てていたの?」
シャドウ
「……違う。俺があの教会を見つけた時には、既に花は咲いていた。俺は特に手を加えてはいない……」
エアリス
「……そうなんだ」
(……特に、ってことは、一応世話とかはしていたのかな?)
クラウド
「俺達はどこに向かっている?」
シャドウ
「七番街だ」
クラウド
「!」

シャドウが足を止めて振り返り、クラウドとエアリスも立ち止まる。

シャドウ
「いきなり神羅の動きが慌しくなった。奴らは七番街で何か事を起こすようだ。昨日、今日起こったテロ。そして、お前がミッドガルにいた事……」
エアリス
「……急いだ方がよさそうね」
シャドウ
「……付いて来い」

 再び走り出す三人。


○神羅カンパニー本社、社長室
 治安維持部門統括のハイデッカーを呼び報告させるプレジデント。プレジデントの前には、都市開発部門統括のリーブもいる。

プレジデント
「準備の方は……?」
ハイデッカー
「ガハハ!! 順調順調! 実行部隊はタークスです! 問題など全くありません!」
リーブ
「プレジデント! 本当にやるのですか? たかが数人の組織をつぶすのに……」
プレジデント
「いまさらナニかね、リーブ君」
リーブ
「……いいえ。しかし私は都市開発責任者としてミッドガルの建造、運営の全てに関わってきました。ですから……」
ハイデッカー
「リーブ、そういう個人的な問題は朝のうちにトイレで流しちまうんだな!」
リーブ
「市長も反対しているわけであり……」
ハイデッカー
「市長!? このビルの中でボソボソとメシを食ってるあいつか!? あいつをまだ市長と呼ぶのか?
《プレジデントに向かい》
それでは失礼します!」

 社長室を出ていくハイデッカー。

プレジデント
「君は疲れているんだよ。休暇をとって旅行でも行ってきなさい」
リーブ
「…………」

 黙ったまま、リーブも社長室を出ていく。

プレジデント
「七番街を破壊する。アバランチの仕業として報道する。神羅カンパニーによる救助活動。フフフ……完璧だ」


○神羅カンパニー本社、廊下
 ルード達から連絡を受けたツォンが部屋から出てくる。

レノ
「どうでしたか?」
ツォン
「イレギュラーの出現もあり、取り逃がしてしまったようだが……。間違いない。一緒にいた女性はエアリスだ」
レノ
「なぜわざわざミッドガルに来たんですかねぇ。俺にはよくわからないな、と」
ツォン
「さぁな。……プレジデントからの命令と並行して、エアリス奪取も同時に行う。プレジデントからの命令は、お前に全て任せる」
レノ
「了解、と」

 それぞれの任務へ向かう二人。


 第137話へ続く