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キュトスの姉妹結界の六十二妹


エトラメトラトンの寵愛を受けるのは世界に唯一人、55番目・釘のナタリエル。

キュトス戦団右翼三番手。体毛を「釘」に変化させ(四肢や指などの体の一部も変化させられるという説あり)、それを打ち出す力を持つ。
戦団の中でもサンズに次いで突撃力に優れた戦士である。
主な用途は“鉄砲玉”。

哲学する戦士であり、ビレリアと特に親しい。

功績

格言

釘を刺す?

関係

杭のジャスターファイダーキュトスの71兄衆の一人。兄と呼ばれたい【姉妹】は55番目のナタリエル。

得物

フリエルカルリアの作。制作にはエトラメトラトンなどが参加した。

累卵の記述項

累卵の記述項
釘のナタリエル

衝角破城釘  犀の目

Cu1-55
釘のナタリエル。姓などは無く、”釘の”と頭に付けて呼ばれることでナタリエルを識別する。
突破力において姉妹最大級の能力を誇る魔女。
獣人のような豊かな紺碧の体毛が全身を包み、宝玉のような蒼い瞳に睨まれるとまるでその場に縫い付けられたように動けなくなると言う。「釘打ちの瞳」と呼ばれる恐るべき邪眼によって相手を「釘付け」にし、豊かな体毛を硬化させて射出する「釘撃ち」によって止めを刺すという。
対象を攻撃する時のこのようにして極めて重要な役割を果たす目であるが、その実彼女の視覚は殆ど機能していない。
本来外界からの光学的情報を受容するためのパッシヴな器官である彼女の眼球は、相手の水晶体に直接拘束呪式を投射するアクティヴな役割を課せられた事によって変質し、感覚器としての機能を減じてしまった。
その代わりというべきか、嗅覚や触覚、その他体毛の先端部位にまで通った擬似神経が微細な空気の動きをも感知するという超知覚能力を獲得した。
彼女の「釘」を生成する能力は魔術的なものというよりはより生体的生物的な能力であり、その体質に依存する所が大きい。
彼女の釘はいわば他の動物で言う所の「角」や「爪」に該当する。
彼女が体毛から生成する(ちなみに爪から生成することも可能としている)【釘】は彼女の上皮細胞が死亡し、硬化したものを固めて作ってある。
蜥蜴種や犀などと同様皮膚組織や体毛が角になるパターンであり、悪鬼や巨人族などのように骨が硬化して角になったものとは別種である。
この上皮細胞は硬化ケラチンと呼ばれる特殊なケラチン(角質のこと。細胞骨格を構成するタンパク質の一つ)で構成された中間繊維に満たされた後、死亡して硬化するプロセスを辿る。
これは鳥類の嘴や爬虫類の鱗などが生成されるプロセスと全く同様であり、ナタリエルの能力は角質組織を保有する生物としてはむしろオーソドックスな生態であると言えよう。
これを随意的に引き起こすだけの生体的ポテンシャルを保有するのがナタリエルの魔女たるゆえんである。
言うまでも無く、生物が一生に可能な細胞分裂の回数は定まっている。
皮膚が死亡していけばいずれは老化し、衰え、全身もまた同様に死に至る。無限に角質を凝着させ生成させ続けることは事実上不可能である。
だがこのプロセスを恒常的に、身体的に全く、何の負荷も無しに辿る事ができるのがナタリエルだ。
ナタリエルはキュトスの魔女であるがゆえに不老にして不死である。無限回の細胞分裂、経年劣化することのない生体組織を恒常的に維持することを可能とする魔女の身体機能は、無制限の角、すなわち【釘】の生成を可能とする。
不死たる魔女の肉体を生態的に生かすことに成功した魔女、それがナタリエルであり、魔的な存在による生体的アプローチの先駆者でもある。

彼女に関しては、ある思考実験に関連しての知名度がまず最初に存在すると言える。
ナタリエルが最愛の姉のエトラメトラトンと身を寄せ合ったとする。
するとナタリエルは愛しさのあまり自らの「個人」としての表象である全身の毛を逆立て、ナタリエルを串刺しにしてしまう。全身を貫かれたエトラメトラトンは、その身に内包する億千万の呪詛を溢れ出させてナタリエルを呪い殺してしまう。
両者が両者とも互いを求めているのに、近付けばそれだけで傷付けあってしまう。
これをナタリエルのジレンマと言い、自己を表象し、自立せしめる象徴(ナタリエルの釘、エトラメトラトンの呪い)と他者との一体感の相克・せめぎ合いに関するジレンマとして有名になった。
これは後にフィールエッゼによって「心理学的に互いにとって最適な距離を模索する寓話」として再解釈されてしまうのだが、本義としては問題定義的な性質は持っていなかった。

自己を確立し、体現するものが自身の唯一といっていい特殊な生態とイコールであった彼女は、世界と自己との関係性においての解釈について幾つかの仮説を打ちたてた。
幾つかの哲学的な論文を残した彼女の思考は、最終的に「純粋な思考」と呼ばれる方向へ進んでいく。
曰く、「思考を思考することほど愚かしい事は無い」
ナタリエルの思索のスタンスは同じ姉妹のクリステヴァなどの幾人かの哲学者に影響を与えたという。
この過程で生まれたのがナタリエルの釘打ちという原理だが、人口に膾炙したこの言葉はいつしかその意味を変性させ、別の用途で使われるようになってしまった。

上古の姉妹達に崇拝に近い感情を抱いており、九姉体制確立以前より上位ナンバーの姉妹には従順であった。
中でもディスペータには絶対的に近い忠誠を誓っており、ディスペータ亡き後も後継のエトラメトラトンに対して尊敬の念を隠さなかった。
姉妹間の力関係に過剰に敏感な節があり、上下関係に厳しく、時に尊大な振る舞いも見られた。
しかし基本的には姉妹の秩序、協調には敏感であり、過剰に攻撃的であることは無い。

全身を硬化させ、破城槌となって神々の門を破壊したという逸話が残っているが、未だ定かではない。

想像図

表記ゆれ

ナタリエル=リバース、ナタリエール

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