多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

武器
神滅ぼしの武具

メクセトが、英雄に与えた1032の武具の一つ。
太古の地層から掘り出された【生きた鉄】によって作られた、流動する生きた鋼である。

その本質は、寄生生命体であり、担い手と一体になって機能する。
これは、変形する武具でもあり、状況に応じて、盾にも剣にも、鎧にも鞭にもなる。
また、この武具自体が、生命と知性を持ち、己自身で断して、戦う。
だが、その代わりにこの武具は、使用するたびに、少しずつ、担い手の肉体を削っていくという。

この武具は、1032英雄の一人、マムリカ・ペレククに与えられた。
彼女は、贖罪のために神滅ぼしの戦いに参加したというが、彼女が、いかなる罪を犯したのかは、知られていない。
また、マムリカは、己を空しくして戦ったことから、主のために全てを尽くす【メイド拳法】の創始者であるとされている。
彼女は、夢を具現化し、人心を操る邪神【悪夢の支配者】と戦い、これを倒す代わりに死んだ。
後には、もはや生命を持たなくなった鋼の断片だけが、残されたという。

記述

〜ある少年と銀色の液体の会話、その一断片〜

「では、あなたは『生きた鉄』では無くて『異帯域』から来た、知恵ある生き物なのですか?」

「無論だ!【自在鋼スティルアイレス】とは、仮の姿。この私、エイルラッセーラ=マタディアスこそ、『異帯域』から来た旅人、『銀肌人』の冒険家である!
メクセトの技術は、私の肉体をこの『帯域』でも活動出来るように改造し、若干の調整を加えただけに過ぎないのだよ!」

「では、マムリカさんは?彼女は…………」

「ああ、彼女は、私の『家主』だ。
この『帯域』では、本来、我々のような無機知性体は、生命として世界に認定されないのだが、彼女のような現地の生命と同化すれば、なんとかその『検閲』を免れることが出来るのだよ」

「ええと、では、彼女は、人間なんですね?」

「ああ、それは、この私が保証しよう。少々変形することもあるが、彼女自身は、正真正銘のこの世界の有機知性体、つまり、ただの人間だ。」

「よ、良かった…………」
「ほう、彼女に興味があるのかね?良ければ、私が仲介しようか?」

「え、それは、その…………」

「安心したまえ!私と彼女は、あくまでビジネス上の付き合い、仕事仲間に過ぎないよ。私は、有機知性体に、そういった興味は無い。むしろ、私は、君を応援しよう!」

「じゃ、じゃあ、お願いします!」

「よろしい!では、このエイルラッセーラ、微力の限りを尽くして君を手助けすることを、ここに誓おう!
だから、まあ大船に乗った気分で居なさい、少年!小心者は、モテないぞ」

「は、はい!」

「ところで…………その代わりというわけでは無いが、一つだけ、君に聞きたいことがあるのだが」

「はい、僕が知っていることでよろしければ、なんなりとお答えします!」

「あ、その…………」

「その?」

「美女の噂を聞いたことは無いか?いや、有機知性体の女性ではなく、電磁波が匂い立つような『ベリリウムの美女』の噂だ!」

「べ、べりりむ?」

「…………やはり、知らないか」

「すみません、お役に立てなくて」

「いや、良いさ。論理的に言って、この『帯域』にそんなモノが居るはずも無い。しかし、惜しい。
異星のような別世界、見たこともない奇怪な生物たち、そして、時代にそぐわぬ高度な技術を持った文明に、傲慢な王…………後は、囚われの『ベリリウムの美女』さえ居れば、完璧なのだがなぁ!」

「本当に、すみません」

「だから良いさ、君のせいじゃない。」

「…………」

「そう、娯楽小説の内容が、現実になるわけが無い。
『水星シリーズ』は、確かに面白いが、アレはあくまでフィクションであって、現実ではない。例え、異なる『帯域』にあってさえ。そんなことは、分かっていたさ」

「あの、お気を落とさないで下さい。事情は良く分かりませんが、あと一歩なのでしょう?それなら、そのうち、自然となんとかなるかもしれません」

「ありがとう、君は優しい子だな」

「いえ、適当なことを言ってしまって、すみません」
「いやいや、これだけ条件が揃っているのだ、あり得ないとは、誰にも言えないさ」

「はい!」

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