多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。


キュトスの姉妹結界の六十二妹

キュトスの姉妹が70、欠落者【カスミスト】。
彼女は足りない心を求めて、それを埋められるモノを集めている。
例えば他人の肉体、例えば他人の財産、例えば他人の記憶。

最も無力かつ無抵抗な姉妹

ヘリステラが発見した時、既に虫の息で生死の境を彷徨っていた。
ミュリエンティと並んで最も無力かつ無抵抗な姉妹として人間からよく狙われる。

カスミストは病弱少女。

パンゲオン

次世代のパンゲオンになる。

カスミストの肉体が千々に飛び散った。
そして世界が誕生した。

彼女の欠落

70番目カスミストに欠けているのは、心という形而上学的な物ばかりではない。

【カスミストの欠落】
それは片目の視力であり、筋力であり、意志力であり、右手の親指であり、左腕の肘から先であったり、記憶であったり、右側の肺や膵臓や右耳の鼓膜であったりする。
彼女の欠落は彼女に欲望を抱いたものが多ければ多いほど奪われていき、彼女に慈悲を施すものが多ければ多いほど拡大していく。
彼女の欠落を埋める方法は唯一つ。彼女自身が相応しい部位を見つけることである。

三重水素のお姫様

カスミストは危険度の極めて低い核爆弾である。

関係

ピーラー:好意を寄せられていた。

累卵の記述項

累卵の記述項
Cu1-70
カスミスト=カレイドスコープ

欠落者 【カレイド】

神話に謳われし魔竜戦争。その戦場において魔竜?レーレンターク?の魔翼に囚われ、とある砂漠?地帯に封印された彼女は、長い間眠りについていた。
鈴国圏に位置する重魔力大域?アレルノ?。後に国家?の名ともなったその北方の国境付近に広がる砂丘の中で、カスミストはその魔力を大地に吸い取られながら静かに時を過ごしつづけた。
長女ヘリステラに道を示され、魔女として覚醒した彼女は、しかし己の中に途方も無い空虚を抱えていた。類い稀なる魔の才覚、事実上の末妹として迎えられた彼女を待っていたのは期待と歓意。華やかな前途は、強烈な光が足元の闇を深めるようにしてカスミストの内心を蝕んでいった。彼女の心にあったのは理由の無い虚無感だった。そこに起源は無く、解決は叶うものではない。生来の空虚、以って生まれたであったのだ。
黎明の時代、神々の気紛れと地を這う闇々?の姦計により、カスミストは魔竜とその眷属どもを相手に壮絶な戦いにいどむことを余儀なくされる。永い封印の時が過ぎ去り、彼女の魔力は拡散し大地に染み渡り、アレルノの地はカスミストの大いなる魔力を吸い込んだ重魔力大域へと変貌する。
やがて、地中より彼女を発掘するものが現れた。
そのときリクシャマー帝国南部の領有となっていた魔女の砂漠は、当時隆盛を誇った馬商であるカレイドスコープ家?が交易路に使うルートだった。
カレイドスコープ家は馬商の中でも異端と言われており、騎獣に貴賎なしと言い張り、血統の劣る馬であろうとも平然と扱う人々だった。それだけではない。移動手段として、また戦場や公の場におけるシンボルとして馬を売る他と違い、彼らは馬を研究、実験、配合、そして強化した。通常の馬商は騎士などの顧客の他に、馬に必要な馬具や宝飾、馬用の甲冑などといった金物類を調達するため、そうした商家と結んでおくものである。だがカレイドスコープ家は全て己でまかなった。
良き土地・優秀な鉱山を持つ貴族を抑え、鍛冶師、職人を家に迎え入れることで、多方面へのつながりを持った。持っただけでは飽き足らず、全て取り込んだ。遂には怪しげな魔術を使うと噂される魔女騎士団ウィリア騎士団とも繋がり、彼らが売る馬は天を駆け百の矢を打ち払うとまで噂されるようになった。
彼らがわざわざ砂漠を突っ切って隣国まで走るのは、それが最短ルートだからというのもあるが、彼らの馬がいかなる悪路であろうとも構わずに踏破する最高の馬であることを証明・誇示するためだといわれている。
ある日カレイドスコープ家当主の第一子であるオード・オーライク・カレイドスコープ?は、商談の帰途に砂漠を渡っている時、奇妙な地鳴りがするのを感じた。それは幾度も砂漠を渡る乗り手であったからこそ感じえた微細な感覚であり、その研ぎ澄まされた鋭敏な直感が予見した天啓だった。
彼は衝動の赴くまま馬から下り、直下を素手で掘った。流れる砂より早く、彼の手はか細い手を掴み取った。
救い出されたカスミストは、砂漠の伝説そのままに美しく、そして妖しげな魔力を放っていた。オードは、彼女を介抱し、家に連れ帰った。保護された彼女の処遇を、当主オーライクは一人息子にゆだねた。その時オーライクは魔的なものごとに詳しいつてを頼りに、カスミストの正体に確証を得ていた。父親は真性の魔女であると判明したカスミストを、ただ衝動のままに連れ帰った息子に一任したのである。
事態は秘された。 魔女は災厄とされる風潮こそ西側、つまり旧鈴国圏には無かったものの、その当時は東側との関係や魔力を欲する権勢との関係は流動的であり、そんなものを抱え込んだカレイドスコープ家がどのような危難に見舞われるか想像もつかなかった。だが、当主はただ息子オードに一任したのだ。
目覚めた魔女を、オードは親身になって介抱し、話し相手になった。傍目に見てもそれは男が女に抱く類いの、一種の情熱そのものであったのだが、如何なる因果か、ふとしたきっかけでカスミストの口から滑る自らの末の妹であったという過去。
魔女とは知らぬ、オードのその目にも、彼女がかつて何らかの因縁いわくを抱えているのだとは知れた。空虚な瞳、問われれば答えるが、つねに悩ましいそのかんばせにオードが幾度ため息をつかされたか。何を思い立ったか、オードは彼女に申し出た。
私の妹にならないか。
魔女は拒否しなかった。
養子としてカレイドスコープ家に迎え入れられたカスミストは、リクシャマー帝国やバキスタ領、果てはロズゴール王国を義兄と共に駆け巡り、幾多の旅を経、一時はアレルノのアカデミーにまで入学を果たす。
貴族の子女を教育するためだけにある環境の下、いまだ空の器のように無垢なカスミストは順当に行けば良家の令嬢として育っていく筈だった。しかしひとつの出会いがカスミストの道を大きく軌道修正した。 
ヤナーハ・リエナ?。東方からの留学生である女性は、良家の令嬢には似つかわしくないスラングを使いこなし恐るべき教官や寮監と逃走劇を繰り広げる、アカデミーのアウトサイダーだった。騒がしいトラブルメイカー。静かなる魔女。あらゆる面で正反対だった二人を結ぶ奇縁は、カスミストの側から結ばれた。ヤナーハにとって自分の人格を知った上で接してくるような物好きはカスミストだけだった。カスミストは、過去の経験から自らの空虚を埋めなければならないという強迫的な衝動に突き動かされていた。外側からはそれとは知れぬため、二人の関係は良好に、周囲の目から見れば異様なバランスでもって保たれていた。
だが、正反対であったからこそ均衡がとれたということもあるかもしれなかった。二人は互いに影響を与え合いながらもそれぞれの関心ごとは全くの別だった。カスミストは家を、義兄を助けるため商いや政りごとを学び、そして馬や金物細工、鍛冶の技術を学ぼうとした。アカデミーの書庫は万人に開かれている。講義こそ男女で分かれているものの、知識を求めるものを邪険に扱う教師はいなかった。カスミストは親友の粗雑さと大ざっぱ気風を居場所とした。ヤナーハは女ながらに男子にしか許されぬ剣術の実習にこっそりと混ざり、己が体格に数倍する巨漢を打ち負かしていた。彼女の目指す道は騎士だった。東方教会?の総本山、大神院の修騎士の娘である彼女は、祖国に戻れば異端を狩り宗敵を罰する神の剣となる道が待っていた。それまでの自由を謳歌するんだと、少女を抜け出そうとしている娘は笑い、カスミストに寂しげな微笑みを見せた。
アカデミーを卒業すると、二人は手紙のやり取りを続けることと変わらぬ友情を誓い合い、別れた。
カレイドスコープ家に戻ったカスミストを待っていたのは、成長しますますたくましくなった義兄オードと反対に老い、衰弱しきった養父の姿だった。息子の願いも空しく、当主の死はあっけなく訪れた。死の直前、カスミストは養父に呼び出され、二人きりで会話を交わした。
お前は、魔女であるお前はいずれこのカレイドスコープの家に災いをもたらすやもしれん。息子は、ただの砂漠で行き倒れた娘だとでも思っているのか、それとも魔女の伝承を知りながらも目を背けているのか、それは父である私にも分らぬ。だが息子は、この家の次なる当主はお前を家族に迎え入れることを選んだ。お前もまたこの家に入ることを選んだ。このカレイドスコープ家は万華鏡のごとく、あらゆる流れを雑多に取り入れ、成功を収めた商家だ。お前という存在が現れたのも、オードという才覚が招きよせた幸運の種なのやもしれぬ。
そう言って、養父はカスミストにカレイドスコープ家の秘されていた家宝を差し出した。本来当主に委譲されるはずのそれを、あえて養父はカスミストに授けることにしたのだ。それを用い、もしもの時は兄を支えよ。そういい残し、老いた養父は安らかに息を引き取った。兄妹は互いに助け合い、家を発展させていった。二人の日常は慌しくも、順調な軌跡を描いているかに見えた。
祭典の年が訪れた。豊穣の祭りの年度、秋に行われる大祭の中で、競馬が催されることになっていた。これは騎士や馬商、賭け競馬の騎手たちが己が腕をかけて、また勝利の名誉を得んと近隣諸国から多く人の集まる祭典であった。とりわけ馬商にとっては自分たちの馬こそが優れていることを証明するまたとない機会である。カレイドスコープ家は前々回より優勝の座を不動のものとしており、その地位を確固たる物とするために今回も負けるわけには行かなかった。
騎手はオードが、調教師はカスミストが務める事となった。既に馬の調教・馬具の調律の技術においてカスミストの右に出るものはいなくなっており、技量においては当主として経営に勤しむオードでは到底及びもつかない域にまで達していた。
優勝間違い無しとも言われる中で、その対抗馬として台頭してきたのが、とある名家に連なる血筋の騎士ジリド・エウアンテン?だった。その騎馬を輩出・支援するスポンサーはロムダ家?。カレイドスコープ家以前にこの地で随一といわれていた馬商である。かねてから辛酸を舐めさせられてきたかの家はオードに対して強い憎しみを持っていた。加えて、騎士ジリドの妹、トレイシー?がかつてアカデミーでカスミストと同期の生徒であったことが判明してから、事態は破局へと加速していく。
大祭において、多くの強敵と苦難、ジリドからの妨害を乗り越えて優勝したオードだったが、ジリドの凶刃によって彼は倒れる。命こそ助かったが、オードは三日三晩意識不明におちいった。追い討ちをかけるようにして、彼の妹は兄を庇い叫ぶ。その男の妹は邪悪なる魔女であり、オードは魔術によって洗脳されているのだと。更には競技における不正も叫ばれ、カスミストは抵抗も出来ずに取調べを受けた。
トレイシーとカスミストは小さな因縁があった。アカデミーの時代、トレイシーはとある男子生徒に襲われそうになっていた。通りがかったカスミストは、常ならば見過ごしたであろう彼女の瞳は、親友ヤナーハからの影響なのか、とっさに飛び出していた。非力なカスミストが屈強な男子生徒をどうにかできたわけではない。しかし彼女はそこで、封印から目覚めてから初めて魔女としての能力を使用したのだ。欠落。精神を歪ませて抉り取り、物言わぬ肉の人形とする邪法。廃人と化した男は人気の無い寮の裏の茂みで発見され、病院に搬送された。それが、仇となった。
トレイシーはその後学院内でカスミストに接することは無かったが、自分が見た恐ろしい光景を利用せぬ手は無いと考えた。平凡な自分にもたらされた天からの恵。それがあの魔女の真実。家のささいな権力とアカデミーの人脈をフルに活用して、彼は廃人の身柄を確保した。魔的な手段によって心を傷つけられた男という証拠。決定的な切り札を得た彼女は、万全を期して随一の馬商に返り咲く日を切望しているロムダ家を利用し、カレイドスコープ家に、カスミストに攻撃を仕掛けた。
カスミストは邪悪な魔女として裁判にかけられ、投獄された。トレイシーは周到に、極めて周到に行動した。カレイドスコープ家の家人の怒りをおもうまま煽り、その怒りが兄に向かうように仕向けた。カレイドスコープ家の義理の兄妹のいわれ無き中傷を広め、その出所がジリドだと噂を流した。ジリドをけしかけ、カレイドスコープ家を挑発に赴かせた。報復は苛烈だった。カレイドスコープ家の一人の商人が、その自慢の馬を用いてジリドをひき殺したのだ。商人は逮捕されたが、両家の関係は今まで以上に悪化した。しかし当主オードは違った。幾度門前払いを食らってもトレイシーへの謝罪と面会を求めつづけた。トレイシーは三度焦らし、四回目で合うことを渋々と許諾した。トレイシーはカスミストへのことをただアカデミーで見た光景が恐ろしく、全てを信じられなくなったのだとだけ語った。オードが義妹を信じ、そして家人の行った報復を心から謝罪する正確をしていることを、トレイシーは最初から知悉していた。彼女はあくまで、自分が憐れな勘違いをしただけの、愚かで気弱な小娘にしか過ぎないのだと全身で表現した。兄を失い、勘違いで間違いを犯しただけであり、支えを必要としている弱者なのだと。
トレイシーは、極めて優秀な演技者だった。彼女は丁度オードとつりあうくらいの年齢であり、そして付け加えるならば、カスミストよりも美しかった。

投獄されたカスミストは表向き懲役を課せられていたが、実際はどことも知れぬ機関によって研究対象として全身をいじりまわされ、人形として扱われつづけた。
その後の顛末はパレルノ山六千人殺し事件として名高いが、その後彼女が辿った道はさらに凄惨なものだった。
全身を改造された彼女はその魔的な性質に肉体が引きずられるという体質に変貌しており、空虚な精神に追従する肉体はあちらこちらが欠落し、あらゆる身体的部位を欠落させていく存在になってしまう。他者に自らを見出すことで精神的充足を得ていた彼女は、やがて理想的な肉体を持つ他者を求めるようにまで至り、理想的な肉体を正確に知覚し記憶することで肉体の欠損を補う技術によってかろうじて消失を免れていた。

だがその異形なる姿はやがて怪物の噂を生み、カスミストは遂に最悪の悲劇を呼び込むことになる。
教敵にして邪神キュトスの裔、カスミスト討伐の任が、大神院より修道騎士?たちに下された。腕利きの殲滅者たちは魔女狩りに赴く。その中には、成長したカスミストの親友、ヤナーハの姿があった。
それは正に死闘だった。ヤナーハは退けず、カスミストもまた逃げることは出来なかった。
ヤナーハは敗れ、死んだ。カスミストは彼女の死に自らの欠落を埋めるなにかを見た。
カスミストの精神はヤナーハのそれと溶け合い、やがてカスミストはカスミストでありながら他の何か混ざったものになった。
肉体的にも、精神的にも継ぎ接ぎだらけの異形。それが自分だと自嘲しつつ、自嘲などという行為はカスミストよりもヤナーハのすることだと気付き、不意に涙が溢れ出した。
カレイドスコープ家の家宝を、そっと取り出す。そのアーティファクトは精神の万華鏡と呼ばれていた。所有者の直接見知った物事、経験から技術や知識を汲み取り、おのがものとする。カレイドスコープ家隆盛の礎となったそれは、今やカスミストを成り立たせるためになくてはならないものとなっていた。
精神を万華鏡の如く多彩な煌きで彩り、肉体は精神に伴って歪み、ねじれ、怪物じみていく。
輝く精神と醜く蠢く肉体を持つ魔女、カスミスト。

人は彼女を、万華鏡の魔女(カレイド)と呼ぶ。

想像図


表記ゆれ

カスミスト・カレイドスコープ、カスミストレイ

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