多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

物語

収穫月の珍事をモデルにしたラダムストンによる喜劇。
とある王国での王子の失踪事件における王子の受難と宮廷の混乱を描いたもの。

概要

とある王国、世継ぎの王子は狩の最中に馬が暴走してしまう。
家来達は王子を追うが王子を乗せた馬はそのまま森に入ってしまい、王子は行方不明になってしまう。
宮廷では王子を探すように指示を出す一方で、実は王子は世継ぎになることを嫌って遁走したのではないか、と疑うようになり、王子が見つからない場合に備えて王女を王子と偽ることを画策し、さっそく王女に王子らしく振舞うように教育が始まる。
一方、王子は隣国の山奥の寒村で目を覚ます。
王子を見つけたのはパン屋の娘だった。
王子は自分が王子であることを村人達に告げるが、村人達は彼が落馬の際に頭を打ってしまったに違いない、と決め付け王子の言うことを信じてくれない。
王子は必死に説得しようとするが、村人達が信じてくれないので、もしかして自分は本当に頭を打って頭が変になってしまったのでは?と疑うようになる。
やがて、自分は記憶喪失で頭が変になったのだ、と信じ込んだ王子は、自分を助けてくれたパン屋の娘の仕事を手伝うようになるが、当然ながら慣れない仕事に四苦八苦して珍騒動を起こす。
宮廷でも王女を王子に仕立てようとするが、上手くいかず様々な珍騒動が起こる。
やがて、宮廷の役人がたまたま隣国に使者へと赴いた際に迷い込んだ寒村で、すっかりパン屋の仕事に馴染んだ王子を見つける。
王子は王国からの迎えによって王国に帰ることになる。
本当に彼が王子だったことに驚きながらも祝福する村人達と、彼との別れを悲しむパン屋の娘。
王国に王子が帰ってみると、王女はすっかり王子の役に慣れ切っており、宮廷に王子の居場所はなくなっていた。
自分の存在感の無さにやるせない王子は最後の決断をして行動する。それは、もう一度村に戻り、失意のあまりに隣村のパン屋と結婚を決めてしまったパン屋の娘を結婚式場より奪い去り、彼女を連れて外国へと遁走することだった。

上演に関して

上演国について

この劇はロズゴール王国にて初演され、好評を得て諸国でも上演されるようになった。
しかし、リクシャマー帝国においてはリクシャマー公国では不遜であるという理由から上演されていない。
ただし、リクシャマー帝国の他の構成国家では上演されている。

改定部分について

ラダムストンによるこの劇は、最終章部分が倒錯的である反面、非常にモラル的に問題があることから時代的、上演される国によっては改変、削除される場合が多い。
尚、主に改変・削除される対象になる部分は以下の通りである。
王子に扮した王女の台詞
この部分に関しては、継承問題を抱えた国においては丸々カットされるか、あるいは別の台詞に変えられる。

(王子に扮した王女は、王子が何かを言う前に、全て言葉を先取りして家来や召使達に命令を下してしまう。やるせない態度の王子に一言)
王女「ところで、殿下。来月には私は嫁を娶ることになっております」
王子「それはめでたい……(一呼吸置いて、はっと気付いて驚いたように)まて、嫁だと?」
王女「はい、隣国の王女が正しからぬ恋路の果てにあらぬ御霊を宿してしまいましたゆえに、これを娶り、妻といたします。産まれた子供は目出度く王子となり、すぐに王となります」
王子「待て、それはさすがに問題が……」
王女「(王子の台詞が言い終わるのを待たずに)血筋的には問題はございません。父たる者も卑しい身分のものではなく、我が王家の血筋の者です。血の尊さは保たれます」
王子「すぐに王となるということだが?」
王女「はい、王子は来月にも即位され、二人の子供が生まれた暁にはすぐに王とし、王子は王位を譲る、これが大臣達と協議した結果でございます」
王子「なれば私はどうすれば良いのだ?」
王女「殿下のやろうとなさることはこれから私が代行いたしますので、僧院にでも出家なさるがよろしいかと」
王子「なんと!?」
王女「なれば私の代わりに尼僧に扮して先に出家なさるのもよろしいかと」
結婚式場よりの花嫁の強奪
ラダムストンのこの劇に影響されてか、本当に結婚式場より花嫁を強奪する、という事件が相次いだためこの部分はカットされ、王子が花嫁強奪を決心する場面で劇が終わる場合が多い。
もっとも、劇で上演されないことが逆に想像力をかき立てたのか、カットされても事件は減らなかったという。

(村人達が大いに騒ぐ村の中心。神父は台座に立ち、新郎新婦を待つ。やがて村人達に祝福され舞台袖よりやって来るパン屋の娘と隣村のパン屋)
隣村のパン屋「俺はなんという幸せ者だろう?こんな美しい妻を娶る日が来るなんて」
パン屋の娘「(俯き)……」
隣村のパン屋「さぁ祝ってくれ蒼天よ。さぁ照らしてくれ太陽よ。さぁ彩ってくれ花よ。さぁ歌ってくれ鳥達よ」
(隣村のパン屋を輝かしくスポットライトが照らし、派手なぐらいに鳥達の囀る音が聞こえる)
隣村のパン屋「どうだい、天だって俺達を祝ってくれている。だから恥ずかしがることは無いよ、お前。さぁ顔を上げておくれ」
パン屋の娘「(俯いたままで)……」
隣村のパン屋「なんだい照れちまいやがって。仕方ないなぁ。おぉい皆の衆、俺達を祝福しておくれ」
(あふれんばかりの歓声と拍手。その中、コホンと神父は咳払いをして)
神父「お前達、浮かれるのは良いが、早くこちらまで来ておくれ。何せ神聖な儀式、早くしないと神様だって帰られてしまうよ」
隣村のパン屋「なんだい、せっかちだなぁ。ほぃ、きた。ほら、お前、行くよ」
(やや強引にパン屋の娘の腕を取って舞台中央の神父の前まで)
神父「それでは、ごほん、ごにょごにょ……汝ら、神聖なる神の前で、貧しき時も止める時も夫婦として永遠の愛を誓うか?」
隣村のパン屋「それは、もう。なぁ、お前」
パン屋の娘「(やはり俯いたまま)……」
隣村のパン屋「こいつめ、照れてやがる。かわりに俺が答えるよ。誓うよ、もちろん誓うさ。さぁ、これで俺達は晴れて夫婦だ」
神父「これこれ待ちなさい。儀式とはいえもう一つあるのだよ」
隣村のパン屋「なんだよ、じれったいなぁ。さっさと済ませておくれよ」
(神父、村人達の方に顔を向け)
神父「汝達の中で、この神聖なる愛の儀式に反対する者はおるか?」
王子「いるぞ!」
隣村のパン屋「誰だ!?」
(パン屋の娘、顔を上げる。王子、村人達を掻き分け、現れる)
王子「いるぞ!ここにいるぞ!私はこの式に反対だ!彼女の夫となるのは私だ!」
パン屋の娘「(うれしそうに感極まったように顔を手で覆って)あぁ……」
(呆然とする群集の前で、王子、パン屋の娘の手を取り、そして二人は舞台袖に向かって走り出す。それを追う隣村のパン屋、神父、そして村人達。その後ろを、王子を追ってきた男装の王女、大臣達、そして兵士達が続く)
一同「待て〜!、待ってくれ〜!、待ってください〜!」
(一同が舞台袖に引っ込んだ後で、反対側の舞台袖から王子とパン屋の娘の二人走ってきて舞台中央で)
パン屋の娘「これから二人でどこへ?」
王子「どこへなりとも、我が愛しく麗しき后。外国へでも、亜大陸へでも、何であれば遥か東にあるという泡良へでも。世界は広く、私達の行き先は無限だ!」
(二人、舞台袖に。閉幕)

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