ゆらぎの神話百科事典 - アンリエッタ
キュトスの姉妹
結界の六十二妹

番外。

概要

キュトスの姉妹の誰かの代替わりの際に、本体から逸れた記憶の一部が他の記憶を取り込んだもの。
肉体に寄生し、その肉体が寿命、あるいは再生不可能な状態に損傷した際に別の肉体に代替わりという形で乗り移るという点ではキュトスの姉妹と変わらないのだが、もともとの自意識というものが無いので乗り移られた肉体は自分の意思を失うわけではない(主導権を持つのは肉体の持ち主である意識である)。
また、その代替わりの際に、代替わり前の肉体の意識と記憶は「奔流たる意識」という本体の意識に取り込まれて融合し、融合した意識とその記憶を代替わりされた肉体の意識は受け継ぐが、それはあくまで「そういうこともあったかもしれない」とぼんやりと覚えている程度である。
一度何かの拍子にキュトスの姉妹達の何名かに疎まれたことがあり、また自分の本体である姉妹はそれを名乗り出ないということがあり、それを覚えているので代替わりの際に彼女の性格は異なるが、基本的に彼女は一部を除いて他の姉妹はおろか他の人間達との接触を嫌っていた。
ただ、人類社会全体に影響を与えることになる人物を察知する能力があるらしく、その行動の理由は不明だが、その人物を生誕から死まで密かに見届けるという行動志向がある。
ちなみに、キュトスの姉妹としてのNoは与えられておらず、その理由としては他の姉妹がその存在を認めないからという説や、基本的に無害なのでNoを与えられていないという説があるが真偽は不明。
アンリエッタという名前については、もともとの名前と言うわけではなく、代替わりした際の肉体のうちの一つが生前持っていた名前をそのまま使っているだけである。

名前の由来・出自

キュトスの姉妹のイレギュラーであるアンリエッタの名前を持っていた肉体は、とある塔にて魔術師の慰み者として飼われていた少女だった。
彼女には生まれつき魔法がかけられていたため、感情と言うものがなかった。
それを哀れに思った(あるいは面白がった)ムランカが肉体の寿命が付きかけていた当時のアンリエッタ(という名前では当時は無かったが)をこの少女と引き合わせ、彼女に代替わりをさせた。
代替わりを経た彼女は、「奔流たる意識」の持っていた感情のおかげで自らの感情を得、その憎しみと殺意の衝動に駆られて魔術師を殺害する。
しかし、自らを苛んできた魔術師を殺害した後に彼女に沸き起こった感情は、外の世界と折り合いが付かず塔に篭るしかなかった彼に対する哀れみと、歪んだ形でしか愛情表現をできなかった彼を殺害してしまったことに対する罪悪感、そして愛情だった。
結局彼女は自由を得たというのに、その10年後に自らの肉体の寿命が朽ちるその時まで塔を出ることは無かった。



尚、この魔術師は死霊使いガルズの父親であったと言う説がある。

ムランカが母親

子供に転生してしまい、尚且つ戦争・災害等のトラブルでその親が死んでしまった場合、ムランカが星見の塔に連れて来て成人するまで育てている。
アンリエッタを良く思わない姉妹も多いが、ムランカが「これはあたしの娘だ!文句あるか!!」と言い張っており、ヘリステラも「ムランカがそう言うならそうなんだろう」という見解なので誰も文句が言えない。
ちなみに、例によってムランカの悪事がヘリステラにばれてしまい、ヘリステラムランカをおしおきしている際に、「お母さんを苛めちゃ嫌だ!!」と泣きながら食って掛かり、困ったヘリステラムランカへのお仕置きを止めたという事件があり、姉妹の中には彼女に一目置いている者も多い。

星見の塔における人物関係。

星見の塔にいる間、他の姉妹達や関係人物に対して彼女はこう思っている。
お母さんをいじめるこわいおばさん
ヘリステラに対してこう思っている。
もちろん、苛めているのではなく、ムランカが悪さをするので長姉として「おしおき」しているだけである。
ヘリステラも、さすがに幼女の際のアンリエッタに泣き出されては堪らないのか、アンリエッタがいる際には、ムランカが悪さをした時には小言を言う程度にしている。
おこるとこわいけど、やさしいお母さん
ムランカに対してこう思っている。
アンリエッタが成人しても困らないようにムランカは躾に厳しいが、普段は優しく、また何かあるとすぐに飛んでくる母親代わりである。また、アンリエッタもムランカが自分の母親だと信じて疑わないので、上記のように考えている。
「あぁ、でも、いつかはいなくなっちゃうんだよねぇ……」
あのムランカも、アンリエッタを見ていてそんな切ない気分になるとか。
やさしい宵おねいちゃん
に対してこう思っている。
にしてみれば、どちらかといえば苦手な姉の「娘」であるのだが、よく躾けられているので礼儀正しく、また自分を慕ってくるアンリエッタが、実は子供好きなこともあって放っておけないのである。そのため、ムランカがいない時にアンリエッタの面倒を見ている。
しかし、そのこともあって、子供ならではのお転婆に付き合わされては騒動や冒険に巻き込まれていたりする。
おともだちのフラちゃん
フラベウファに対してこう思っている。
これは、転生するたびに星見の塔やその住人達のことはおぼろげにしかアンリエッタが覚えていないのに対し、フラベウファはアンリエッタのことを覚えているので、星見の塔に連れて来られる度に「アンリちゃんだ、アンリちゃんだ」とフラベウファが親しげに接してくるので、すぐに二人は友達になるからである。
二人で星見の塔の中を冒険したり、クラシカルハウンドの毛皮をモフモフして遊んだりしている。
もちろんそれで騒動が起きて、巻き込まれるのは宵である。
わんちゃん!わんちゃん!
クラシカルハウンドに対してこう思っている。
「いや、あの、わんちゃん、って……私は、こう見えてもヘリステラ様を頂点とするキュトスの姉妹の皆様にお仕えする……って聞いてます?。あの、そのように毛皮をモフモフされては……はぁ、お手ですか……えぇ、分かりました、分かりましたとも(溜息)」
すっかり諦め気味である。
わんちゃんを飼っているおねえさん
ニースフリルに対してこう思っている。
理由は読んで字の如しである。
ニースフリルは、実の所うっとおしいと思っているのだが、あまりに無邪気に接してくるので、たまに遺跡で見つけた遺物などをあげている。それらはアンリエッタの大事な「たからもの」になっている。
最近では、「家族かぁ……」と偶にニースフリルも思ったりするらしい。
おかしをくれるおねえちゃん
トミュニに対してこう思っている。
もっとも、彼女がトミュニに会ったことは一度だけである。
理由は読んで字の如しだが、トミュニがアンリエッタに「おかしをくれる」のは、対ムランカ戦用に人質にするための餌付けである。
しかし、ムランカが事前にアンリエッタに魔法を教えていたため、実際の対ムランカ戦においてアンリエッタは知らずにそれを発動させ、彼女を人質にとったトミュニを空高く雲の上まで飛ばしてしまった。余談であるが、その後、「いつもおかしをくれるおねえちゃんがはやく帰ってきますように」と彼女は流れ星に祈ったが、その流れ星は、宇宙に飛ばされ、隕石にぶつかって地上に戻されたトミュニ自身であった。

歴史上の人物との関係

ゴズリングが後に弟子に語った話によれば「(前略)あの頃、工房には先生(デフォン)と私と、そしてアンリエッタという女性、そしてもう一人妹みたいな少女がいた。彼女には色々と助けてもらった。彼女がいたから私は魔術師になれたし、魔術師になろうと思った」とある。「妹みたいな少女」が誰なのかも不明であるが、この「アンリエッタという女性」がアンリエッタ本人のことなのか、それとも同じ名前の別人なのかは不明である。

時の輪事件?

キュトスの姉妹達の間では口外禁止とされており、禁忌ともされている時の輪事件?という事件に関わっているらしい。
それがどのような事件であるのかは、今となっては知る由も無い。