北方帝国制圧戦争序盤において、
リクシャマー帝国は兵力を二つに分け、一つを
北方帝国北西部から、もう一つを
北方帝国南西部から侵攻させる。
このうち
北方帝国南西部から侵攻した部隊はもう一つの部隊に比べて明らかにその進行速度が突出していた。
これには、
魔術師師団が今まで軍人として採用されていなかった一般市民から募兵して作った部隊であり、戦闘訓練は積んでいたものの他の部隊と行動を共にすることに慣れていなかったことや、この部隊を率いていた
ギュンター・ヴュ・ディート将軍が功に焦ったから等様々な説がある。
しかし、
北方帝国軍首脳部は、商人達を通して得た情報も加味し、この軍隊を南方の
「カーズガンの子ら」へ合流して後方支援を行う部隊と判断、緒戦の敗北により停滞気味だった戦線全体の士気を上げるために主力部隊である騎馬隊と支援の市民軍をもってこれを攻めて殲滅させることを決定する。
戦闘はウェルス地方南西部のクゥーゲル平原にて昼過ぎに発生した。
行軍中の
リクシャマー帝国軍の進路を阻む形で、
北方帝国軍は扇状に軍隊を展開。騎馬隊を前面に出し、後方に市民軍による歩兵が構えた。
これに対し、
リクシャマー帝国軍は広範囲な三叉円錐状に軍隊を展開した
兵力差は
リクシャマー帝国軍一万弱に対し、
北方帝国軍は九千強であり、ほぼ均等であった。
北方帝国軍は、「
魔術師師団」を魔術師中心の部隊と想定し、近接戦闘に弱いと考えていたため、騎兵の突入により陣形を崩させ、陣形が崩れたところを市民軍の歩兵で一掃するという戦術をとった。従来の戦場における魔術が詠唱から実行まで非常に時間がかかるものであり、この常識に沿えば速攻が有効と考えたのである。
しかし、「
魔術師師団」は実際には魔術師中心の部隊ではなく、魔術を習得した歩兵中心の部隊であり、また
ビーンズ式詠唱法という革新的な魔術の使い方により詠唱から実行までの時間が、従来の魔術に比べて飛躍的に早くなっていた。
そのため、防壁魔術により戦術の要である初動の騎兵の突入は阻止され、陣営中央に釘付けになっている間に左翼・右翼から上がった部隊により騎兵隊は包囲されて壊滅し、騎兵隊の中央を抜ける形で突出した中央陣に市民軍は正面から衝突したが、武装と訓練量の差が物をいい、市民軍はジリジリと押されて後退し、やがて騎兵を壊滅させた左翼・右翼の部隊が合流すると総崩れになった。
この戦いで騎兵を率いていた北方帝国の
レヴ・ドゥーロン将軍は戦死し、副官にして戦術指南役の
ゲート・ボストール副将軍(後に第二次建国戦争で
ボストール団を指揮)が代行という形で残存兵を纏めてウェルスの城塞都市に篭って抵抗戦を行うことになる。