古き神の中で特に戦に長けた者と言えば、すぐさま
シャルマキヒュと
アルセスの二柱が挙げられよう。
念のため注しておくと、この二柱は他の神に必ずしも力で勝るわけではない。
しかし両神については争いにまつわるエピソードの例が著しく膨大であるため、数の上の問題からそのような印象が生じたのである。
共に戦神として崇められるシャルマキヒュとアルセスであるが、両者にはその信仰の性質に若干の違いもある。
シャルマキヒュは主に神々同士の争いでその力を発揮した。
南東からの脅威の眷属に果敢に立ち向かい、最も多くを下したと伝えられるのは他ならぬシャルマキヒュである。
一方アルセスは好んで世界各地を歩いた神であり、行く先々で大小の喧嘩争いを制している。
自ら喧嘩を吹っかけるようなことはあまりなかったアルセスであるが、相手の側がそれを許さなかったのである。
こういった両神の性格の違いもあって、シャルマキヒュが主に信仰されるのは軍隊に属す兵士たちであるのに対し、アルセスが信仰されるのは奔放な喧嘩人や冒険者である。
ゼダ公爵家?の
サイクロプス・クラウドがシャルマキヒュを信仰し、希代の冒険者
ナプラサフラスがアルセスを信仰していたことなどは、この象徴的な例であろう。