ゴッドイーターでエロパロスレ保存庫 - 男主人公×リッカ(>>470氏作)
「君ってもしかして、自分のこと嫌いなの?」
唐突に尋ねられたので、俺は冷たい鉄壁に預けていた体を起こした。
「…いや、ちょっと違うな…自分を捨ててるって言うか、身を投げてるって言うか」
「ゴメン、意味分からん」
「上手く言えないんだけど、君の神機の整備してると、時々思うんだよね」
『神機の傷付き方で、その持ち主の性格が分かる』。
彼女の持論だ。
いや、正確には、彼女が父親から受け継いだ持論、だったか。
擦り減った刀身が、考え無しに切った結果か、果敢に攻めた結果か。
歪んだ砲塔は、怯えて闇雲に撃ったからか、仲間を救うために無茶をしたからか。
短くとも濃密な期間、神機に携わってきた彼女は、見ただけでそれが分かってしまうという。
その装甲の傷跡は、逃げ出して付いたものなのか、仲間を庇ったものなのか。
ちょいちょい、と、手でこまねかれ、俺は体を起こした。
長い時間座っていたからか、尻が痛い。
「装甲の、この傷があるでしょ」
「ん」
指差したのは、つい先日のミッションでついた焦げ跡。
確か、相手はハンニバル。討伐ではなく、偵察ミッションだった。
無防備だった後衛との間に割って入り、やや無理な体勢で火球を受けた。
神機の軋んだ音がしたのを覚えている。
「ちゃんと正面から炎を受けたなら、こんな焦げ方はしない。そういうコーティングなの」
「ふーん」
「でも、ここ、縁とジョイント部分が少し溶けてる…だから、多分この炎に対して、君は、」
リッカは大きくジェスチャーを用いて、俺に説明する。
動作が実年齢よりも子どもっぽくて、なんか可愛い。小柄だけれど、本当は俺より年上のはずだ。
「―――聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ」
「…君は、こういう角度で、自分からぶつかるようにして、炎を受けに行ったことになるのね」
正にその通り。
「すげえな、リッカ。名探偵になれるよ」
「ありがと。でも、今は私の話じゃなくて」
口だけで微笑んで、それから俺の目を正面から見る。
こう言うところは、子どもっぽくない。
「君が、なんでそんな無茶な防御をしたのか、って話」
まあ、つまるところ俺が今回メンテナンス室に呼び出されたのは、彼女にお説教されるため、ということらしい。
「一歩間違えば、君が丸焦げになってたんだよ。自覚ある?」
「ああ、そうだな」
「君の神機の傷って、そういうのばっか」
愚痴っぽく言って、リッカは不機嫌そうに視線を逸らした。
死ぬかもな、と、考えなかった日は無い。
ほんの数瞬気を緩めただけで、歯車のかみ合わせが悪かっただけで、簡単に死ぬことが出来る。
『一歩間違えば』なんて綱渡りな状況が常について回る。
俺が就いているのは、そういう職業だ。
死ぬことは、まあ、人並みに怖い。
けど、もっと怖いことがある。
「…最初の質問、さ」
死に対する恐怖は、足を止めてしまう。
だから、出来るだけ考えないように努めている。
けれど、もう一つの恐怖――失う恐怖は、衝動的に俺を突き動かす。
動けなければ、失うからだ。
「自分のことは、まあ、好きじゃないって言うか、」
あの日、俺は動けなかった。
エリック先輩が、オウガテイルに噛み殺された日。
リンドウさんが、瓦礫の向こうに消えた日。
シオが、自分を賭して俺たちを救ってくれた日。
「…平たく言って、大っ嫌いだ」
俺は、動けなかったんだ。
リッカが辛そうに眉をひそめる。お前が辛がることじゃないってのに。
辛いのは、失った人間だ。
エリック先輩を失った事実を、ご家族は最初は信じることが出来なかった。
リンドウさんが消えて、アリサもサクヤさんもずっとずっと泣いていた。
顔にこそ出さないけれど、ソーマも時々、月を見に夜中に外に出かけている。
俺が動けなかったからだ。だから失った。
動いていたらどうなる、という仮定は無意味だ。確定した過去の、他の可能性を見ることなんて、出来ないんだから。
それでも、もしあの時、と考えずにはいられない。
だから、動けない、弱い自分が大嫌いだ。
もう二度と失って誰かを悲しませないように、俺自身が悲しまないように、
そういう瞬間、俺は咄嗟に動くようにしている。
今回の装甲の件も、仲間を守った時に出来た傷だ。
だから、
「悪いけど、説教なら意味無いからな。もう子供じゃないんだ、こっちは」
リッカに当たるのは間違っている。
ので、出来るだけ柔らかい声音で、俺は彼女に刃向かう。
「…年下でしょ、私より。言うこと聞きなさい」
「一つ二つ違うだけだろ。誰に何度注意されても、俺は同じ選択をする。仲間を庇うために、何度だって飛び出す」
「…それで君が死んだら、意味無いじゃん」
「じゃあ、見殺せばいいのか?」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
リッカが叫んだ。
いつもの陽気な彼女からは予想も出来ないような、辛そうな声で。
「そうやって…、どうして、自分を簡単に捨てられるの!?」
「捨ててるワケじゃない。命を賭けてるだけだ」
「同じことでしょ?」
「違うよ」
『懸ける』じゃない。『賭ける』んだ。
この仕事で、一生懸命やった、だなんて過程には何の意味もない。
もう終わったことに後悔したくない。
俺は、もう新入りじゃない。
リーダーになった。後輩も出来た。
自分の命を惜しんでいい時間は、とっくに終わったんだ。
出来ないことは、やらない理由にはならない。
俺の後ろにいる人間を、俺は守らなきゃいけない。
自分の命を守っている暇なんてないんだ。
一瞬の躊躇が、恐怖が、判断を鈍らせて、失わせる。
本当に守りたいものを守るためには、惜しんじゃいけない。
リンドウさんが、そうしたように。
「…呼びだした用事は、それだけか? 悪いけど、感情論に付き合う気も無いからな」
背を向け、エレベーターに足を向ける。
去ろうとしたところで、背中に何か、小さなものがぶつかってきた。
「…君を失って悲しむ人だって、いるんだよ」
細い腕が、俺の腰を掴む。
震えている。声も。
参った。
泣いている女の子は苦手だ。ハンニバルの炎より厄介だ。
泣かしたのは俺だから、そんなことを言える手前でもないんだろうけど。
さて、何て返そうか、と、後ろを振り向こうとして、
その反動で思いっきり、地面に投げ飛ばされた。
「う、げっ…!」
ゴキっと鈍い音がして、目の前の景色に火花が散る。
頭を床に打ちつけたらしい。
ぐわん、ぐわん、と、痛みの波が寄せて返す。
ぼやけた視界が晴れて来て、正面に顔が映る。
リッカの顔だ。
目元が濡れている。濡れた目で、俺を睨む。
「…驚いた。力強いんだな、リッカ」
「…エンジニアは体力勝負だからね」
「で、何で乗っかるんだ」
「こうでもしないと、君、話聞かないで帰るでしょ」
流石に読まれていたらしい。
まあ、小柄な女の子一人に乗られた程度で、動けないほどでもない。
こちとらゴッドイーターだ。
ただ、起き上がれないのには、事情がある。
「だいたい君は、……」
話を続けようとしたリッカも、すぐにその事情に気が付いたらしい。
平たく言って、生理現象である。
彼女が腰を下ろしているのは、ちょうど俺の、まあ、その位置なわけである。
神機使いと言っても、もともとは健全な青少年。
布越しに感じる柔らかなリッカの肌に、何も感じずにいられようか。
「……ケダモノ」
「…その、なんていうか…ありがとうございます」
「私は真面目な話をしようとしてるのに…酷いよ」
「いや、待ってくれ。不可抗力だから、コレは」
というか、乗ってきたリッカにこそ原因があるとも言えるんじゃないか。
「ん…」
もぞもぞ、と、俺の上でリッカが動く。
恥じらいゆえの身じろぎなんだろうけれど、絶妙な振動が加えられて、ますますヤバい。
「ふぁ!? ちょっと…なんで、おっきく…」
「や、しょうがないだろ…」
ジト目で睨まれる。あまりの気まずさに、正面から見返せない。
グリグリ、と、リッカが腰を押し付けてくる。
いや、これ、わざとだ。
何をするんだ、と、尋ねようとしたところで、冷たい掌が俺の服の中に潜り込んできた。
「リッカさん…?」
「黙って」
思わず『さん』付け。
先程と同じジト目、ただほんのりと潤み、焦点がぼやけている。
見上げた瞳に映る、間の抜けた表情の俺自身。
「おい、何してんだって、ちょっと、」
「うるさい」
カチャカチャ、と耳障りな金属音。腹の辺りがゆるくなって、ベルトの擦れる音。
剥きだした肌に、冷たい外気が触れる。
「私で、おっきくしてる君に…拒否権なんて、ないんだから、ね…」
ぶるん、と、勢いよく飛び出る。
いつもよりも心なしか大きく屹立したそれが、ピシ、と彼女の鼻先を掠めた。
互いに、一瞬息を飲む。
「……御立派様」
「……そいつは、どうも」
じゃなくて。
「…なんだ、最近のエンジニア様は神機だけじゃなくて、持ち主の面倒まで見てくれるのか」
茶化してみる。
焦っていた分、なんとも最低な物言いになってしまった。
もしも他の男がリッカに同じことを言っていたら、迷わずぶん殴る類の。
リッカも冗談めかした口調だけれど、表情が固まっている。
余裕がないのをバレまいと、必死になっているようだ。
「…リッカ、落ち付け。な。俺も言いすぎた。だから、忘れよう。俺も忘れるから。落ち着いて、俺のズボンを上げてくれ」
カエルを睨む蛇のように緊張している彼女に、意思の疎通を試みてみる。
下半身丸出しのこっちとしては恥ずかしい事この上ないが、なんとか理性は繋ぎとめた。
けれど、どうにも追い詰められた人間というのは、
「う、は…っ」
冷たくて滑らかな指の腹が、一筋、先端を撫で上げた。
自分でも見たことがないくらいに、大きくそそり立つ、それ。
刺激そのものに対して興奮し、そして、それが彼女からの愛撫だと理解して、また興奮する。
意思の疎通は失敗したらしい。
リッカの目はどこか蕩け、顔は真っ赤に上気し、息は肩を上下させて。
ふわりと俺の鼻孔をくすぐる発情したメスの匂い。
「……嫌だなんて、言わせないからね」
一度だけ、潤んだ瞳でリッカが此方を見上げた。
まるで捨てられそうな小動物のような、愛おしい表情で。くぅん、なんて鳴かれた日には悶え転げるレベルの可愛さだ。
「君なんか…こうして、やるんだから」
「…ふ、ぅあ…っ」
しゅる、と、まるで布か絹のように、軽い指先が全体を包みあげる。
優しく、優しく、撫でるように扱く。
根元を押さえて、下から爪を立てて、先端まで這わせてみたり。
五本の指を先端にあてがい、膝小僧を擽るようにそわそわと擦ってみたり。
「ふ、ぉあっ!……っく、リッカ、待っ……」
「……ふふ、そういう可愛い声も出せるんだね」
妖艶な笑みで、けれども俺の息子から視線を外さない。
指で輪を描きながら、俺が震え悶えるのを楽しんでいる。
「辛くて、苦しくて、でもすごく気持ちいい…でしょ?」
「止め、お前っ……ん、ぉ、あっ……は、…っ」
「止めないよ。年下っぽくない、可愛くないガキに、お姉さんからのオシオキ」
まるでその息子に話しかけるように、口を添える。
吐息が、生温かく湿気を孕んで、まとわりつく。
ふっ、と、強く息を吹きかけられただけで、もう達してしまいそうだった。
そう言えば最近、そっちの方はご無沙汰だった気がする。
リンドウさんみたいに相手がいるでも無し、基本は自家発電だけど、任務で働き詰めでその時間すら取れていなかった。
そのくせウチの面々と来たら、
人妻のくせに自重を知らない背中丸出しお姉様に、
風が吹けば捲れるような堅物下乳ロシアンビューティに、
露出こそないけどやたらそっち方面無頓着な天然固定砲台に、
あなたソレもう隠す気ないでしょ、まさかのノーガード戦法スナイパー、
おまけに教官までいつの時代のレースクイーンですかと言わんばかりにバインバインだ。
餌を眼の前に転がされながらも手を出せない雄の辛さ。
久しく味わっていなかった刺激が、例えこんな形だとしても、
「……面白くないなぁ」
「っ、が、ぁっ〜〜〜!!」
思考が、寸断された。
ぎゅ、と、ややつよく彼女の指が、睾丸の方を摘まんだからだ。
「やってるのは私なのに……他の女の人のこと、考えてる」
「なん、で……っか、は」
払いのければいいのに。
本当にこんなことを彼女にさせたくないなら、してほしくないなら、俺は彼女を払いのければいい。
両手は自由だし、彼女一人くらいの体重を押し退ける力はある。
それをせず、甘んじて受け入れているのは、まあ、そういうことだ。
「第一部隊の人たち、みんなスタイルいいし、美人だもんね。私なんかよりも」
「リッカ、違、っ、あ゛っ…!」
「けど……さすがにちょっと、傷つくかな、そういうの」
沈んだ声音と裏腹に、指に込められる力が強くなる。
もう限界を超えてはち切れそうなのに、根元を握られてしまっているせいで、溜まったソレを吐き出せない。
わかってて、彼女もやっているのだろう。
すりすりと、先端を唇がなぞる。
例えるなら、ゼリーのようにやわらかい唇。それが、吐息交じりにキスを落としていく。
「ふっ、か、ぁ、あ゛ぁっ…!」
「ん、ちゅ…女の子みたいな声出して、喘いじゃって…気持ちいいんだ? 可愛い…」
「やめ、っ、リッカ、マジで…!」
「止めないよ。喘いでも、泣いても、止めてあげない……は、ぷ」
喰われた。
温かい、ぬるぬるとした口腔に、入りこんでいく。
先端から熱と間違う刺激が迸り、勝手に腰が跳ねる。
背骨を直接まさぐられているような、重い快楽。
「ぐ、ぁああっあ、ハァあっ…!」
生き物、と実感させる温度、粘液。
ぬる、ちゅぴ、と、卑猥な音が耳に届く。
ざらざらの舌が、ねぶるように舐め上げていく。
唇をすぼめてしごく。
根元を指で、きつく縛りあげたまま。
「あ、あぁあああっ…」
「ね…ん、じゅぷ……きもひいい? イっひゃう?」
イけるワケ、無い。
分かってて言ってるだろ。
「指っ…離してくれ、リッカ…!」
「出したいの?」
「限界だ、もうっ……くぁ、あぅっ!」
「さっきまであんだけ、……ん、じゅぷ……は、止めてって言ってたのに、堪え性ないなぁ」
そんな理不尽な、と叫ぼうとした喉は、声にならない声で潰された。
もはや苦痛ですらある。
真綿で柔らかく縊り殺されるようだ。
ぷるり、と、音を立てそうなほどに弾けた唇が、何度も何度も赤黒く腫れあがった先端を往来する。
一擦りする度に理性も溶けて、針のように鋭い感覚が、下半身全体に迸る。
ああ、もう、ダメだ。
そう思った時にはすでに、俺は両腕でリッカの頭を鷲掴みにしていた。
「ふ、んぶっ!?」
驚く暇も与えず、欲望のままにその喉奥に、欲の棒を突き立てる。
「ん、ぐ、ぇ……っ、えぁ、あ、ぶ、ぐっ…!」
まるで物のように、乱暴に抜き差し。
喉奥から漏れる嗚咽にも、息苦しさにしかめた眉にも、瞳の端から零れる涙にも気を留めず。
ただ、本能のまま快楽を貪る獣となる。
抵抗はされなかった。
それどころかリッカは、両手を俺の腰の後ろに回してしがみつく。
その『抵抗』というのが、俺の中の最後の分水嶺だったのに。
拒むどころか、そんなことされたら、もう止まれないだろうが。
さんざん焦らされた分、律動はほんの数秒で訪れた。
「ぅ、ふ…んぶっ!?」
ドクン、と、第二の鼓動。
自分が削られるような錯覚さえ覚えて、欲望と快楽をその小さな唇の中に吐き出していく。
「え、ぷっ、……ぇほ、ケホっ…!」
喉を直撃するそれは、けっして心地のいいものではないのだろう。
眉を震わせて咳き込みながらも、リッカは俺の腰から手を離すことはけっしてしなかった。
律動が続き、二度、三度。
じゅるる、と、また淫猥な音が響いて、引きずり込まれそうになる。
尿道に残った分まで吸い取っているらしい。
さんざ我慢したモノを吐き出して、腰が抜けた俺は、無様にその場に尻餅をついた。
「は、はぁ、はっ…」
不等速な息切れ。
全力疾走でもしたような疲労感。
リッカは口端に零れた精液を舌で拭うと、やや辛そうに、それを嚥下した。
「……苦っ」
「……」
普段のタンクトップ姿なのに、そのエロい行為とのギャップが酷く扇情的。
色っぽい仕草で口元を拭うと、リッカはそのまま、愉快そうに俺の方を見て微笑んだ。
いじめっ子の笑みだ。
気まずくて、俺は眼と顔を逸らす。たぶん、真っ赤。
「ふっふっふ…なんだかんだいって、男の子だね」
「うるせえ、逆レイプ魔」
「先にソレ勃てたケダモノには、言われたくないんだけど」
「……」
ああ、もう、畜生。なんでこんなことになってんだ。
それこそリッカが言っていたように、真面目な話をしていたんじゃないのか、俺たちは。
しかも最悪なのは、逆レイプ魔と罵りつつも、結局俺が彼女を犯すような形になってしまったということだ。
あんな乱暴に、強引に、動物的に。
そりゃ、恥ずかしながらもう告白するけど、そういう妄想のネタに使ったことはある。
けれど、現実の俺は紳士だと思っていた。
よもやそんなことをする蛮漢にはならないと思っていたのに。
「……君って、ホント分かりやすいよね」
また笑いながら、リッカが俺の頬を突つく。
「また自己嫌悪?」
「……だってさ、俺、」
「そういう優しすぎるトコ、何でも自分のせいにしようとするトコ。みんな心配してるんだよ」
本能のまま、リッカを犯した。
俺個人の感情を抜きにしても、それでも彼女は大切な仲間だったはずなのに。
守るべき、俺が背負うべき人だったのに。
なのに、犯された彼女は笑う。
「言っとくけど。君が私たちを思ってくれてるのと同じくらい、私たちだって君のこと思ってる」
「……」
「わっかんないかなぁ…というか、最初に手を出したのは私の方でしょ? それで何で、君が負い目を感じるのさ」
今度は頬を突いていた腕で、まるで友人のように、首を組まれる。ゆるいヘッドロックだ。
一瞬だけ汗の匂いがして、それから花のような。
さっきも嗅いだ、発情したメスの匂い。
「……最低だって言うなら、私の方こそだよ」
此方を覗いていたリッカの瞳が伏せられる。
「…酷いこと言ってる自覚はあるんだ。君に、『仲間を守るな』って言ってるのと同じだもんね」
ああ、最初の話か。
「極論、他の人を見殺しにしてでも、君に生きて欲しいって言ってるんだ…。ね? 私の方が最低でしょ」
リッカが笑う。
妙に声が軽いのは、自嘲自虐の色を帯びているからだ。
たとえ俺を励ますためだったとしても、リッカにそんなことしてほしくはない。
最低だというのなら、そんなことをさせた俺の方が。
そう言おうとして、堂々巡りに気がついて止める。
「…最低だな、お互い様に」
「そういうことだね。おそろい」
「なんていうか…自分が最低だって思うと、色んな行為のタガが外れるっていうか、踏ん切りがつくんだよな」
「ああ、ちょっとわかるかも」
「だからさ」
ヘッドロックを解いて、俺は上半身を起こした。
いきなり動き出した俺に戸惑うリッカの耳元に、口を寄せる。
「――先に手を出したのは、そっちだからな」