前節「用途による分類」で述べたように、用途によって土坑を分類することはきわめて難しい。
そもそも人間が穴を掘るという行為には、
埋葬?、
居住?・避難、待ち伏せ
狩猟?(陥し穴)、保存・保管・貯蔵、
ゴミ?等の廃棄、
排泄?、
飼育?・
養殖?・
栽培?、取水・水汲み、
調理?、
たき火?、柱を建てる、石や碑を立てる・・・など、生活をより充実、便利、快適にする何らかの目的があってのことである。趣味で穴を掘る人はごく稀であろうから、穴を掘ること自体が目的のケースはほとんどない。したがって土坑には何らかの用途があったとみるのが常識的である。
それが平断面の形状やこれまでの検出例などから、ある程度類推される場合もあれば、遺物の出土によって完全に特定できる場合もあり、逆に、まったく判断の付かない場合もある。
石器?や
土器?が出土する場合には、その
編年?により、年代をある程度特定できても、
有機体遺物?に関しては酸性の土壌、高温多湿の気候、
植物?や
バクテリア?などの活発な活動など、日本の場合は特に残りにくい条件が揃っているので、用途まではなかなか完全に特定できないケースが多い。
土坑のうち、完全に用途が特定できる場合には「土坑墓」「貯蔵穴」のように、その用途に応じた名称で呼ぶことが一般的である。言い換えれば、狭義の土坑とは「性格不明もしくは性格の見極めにくい(柱穴や
ピット?より)大きめの穴」ということになる。