エルザは死なせないよ // エルザ,ラウーロ,
 // // //AU,Vignette/,Romance/ 9790Byte/ Text// 2004-02-15



エルザは死なせないよ


第 11 話 「 恋慕 - febbre alta - 」 夜の公園



ヤバイ。エルザヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。

エルザヤバイ。

まず義体。もう強いなんてもんじゃない。超強い。

強いとかっても

「眼球から脳を撃ち抜かないと死なないくらい?」

とか、もう、そういうレベルじゃない。

何しろ力持ち。スゲェ!なんか手錠とか引き千切るの。人工骨格とか腕力で脱臼してる。チョップで延髄チョップ。

しかも銃を素手で持っているらしい。ヤバイよ、手持ちだよ。

だって普通は銃とかフォルダー入れてるじゃん。だって自分の銃が暴発しまくったら困るじゃん。同僚に誤射とか困るっしょ。

夜の公園で、「クマのヌイグルミプレゼントする位で、保護者面しないでよね」とかフィルシャー泣くっしょ。

だからトリエラとか呼び出しかけたりしない。話のわかるヤツだ。

けどエルザはヤバイ。そんなの気にしない。安全弁解除しまくり。セーフティーの事で怒鳴った俺が後悔するくらい。殺される。

殺されるっていたけど、もしかしたら殺されないかもしんない。でも殺されないって事にすると

「じゃあ、人気の無い公園に呼び出したってナニよ?」

って事になるし、それは俺もわからない。ヤバイ。俺にも分からないなんて凄すぎる。

あと超覚えてる。



エルザ 「ラウーロさんこの公園覚えてますか?」

ラウーロ 「あ?」

エルザ 「ここで私に名前をつけて下さったんです。エルザ・デ・シーカ」

ラウーロ 「ああ、そうだったか? 良く覚えていたなー、そんな事」

エルザ 「大事な事です。絶対忘れたりしません。ラウーロさんに頂いた宝物です。忘れません」



距離で言うと1、2M。ヤバイ。近すぎ。助けを呼ぶ暇もなく死ぬ。怖い。

それに超何もプレゼントして無い。超ほったらかし。それに超地雷女。名前をつけて下さったとか平気で言ってくる。

絶対忘れたりしないって。アンジェリカでも言わねぇよ、最近。

なんつってもエルザは記憶力が凄い。ドイツ語の数字とか平気だし。

うちらなんて数字とかたかだか4則計算で出てきただけで上手く扱えないから日本語にしたり、

いや日本のアニメだから日本語使ったりするのに、エルザは全然平気。トリエラに聞かなくても扱ってる。凄い。ヤバイ。

とにかく貴様ら、義体のヤバさをもっと知るべきだと思います。

そんなヤバイエルザに呼び出し食らった俺とか超困った。もっとがんばれ。超がんばれ。

ラウーロ (状況を確認しよう。エルザは銃を素手で背中越しに持っている。殺される)

     (こういった状況で確実に相手を殺す事を教えた俺が言うのだから間違いない)

     (困った。エルザは失敗しない。つまり俺は確実に殺される)



エルザ 「大事な事です。絶対忘れたりしません。ラウーロさんに頂いた宝物です。忘れません」



ラウーロはエルザに近づいて両肩に手を置いた。「話ってのはその事かい?」

エルザはビクッと体を緊張させた。無理も無い。普段のラウーロらしからぬ行為だった。

エルザは下からラウーロの顔を覗き込むように反芻する。「ここで名前を頂いたんです」

ラウーロは自分の親指をエルザの唇に這わせるように感想をもらした。

「暗くて良く分からないが、紫色の唇をしているんじゃないか? ここは寒いからな。」

エルザはジッと自分の担当官を凝視していた。



ラウーロ (まだ疑ってやがるぜ、このドイツ女(仮)は)

     (この間が怖く感じる。いままではそれが普通の距離だったのによ)

     (この居心地の悪さ、そうだ。この間のジョゼと組んで本部長を暗殺した時と同じだ)

     (車の中で「ラウーロさん、今回のお仕事、私、がんばりますから」)

     (「・・・おう、しっかりやれ」 エルザの奴は何か不満げだった)

     (ジョゼだったらどうするのやら・・・)

ラウーロはエルザとの身長差を埋めるために中腰になり、月明かりにエルザの顔を向けた。

「やっぱりな。血行が良くないと唇にでるもんなんだ。公社に帰ったら、暖かいモンもどうだ?」

「コーヒー、、、ピザ、、、いや間をとってコーンポタージュにでもするか?」

今まで黙っていたエルザだが「この時間は食堂も閉まっているはずです」

ラウーロ (このドイツ女(仮)は、フィルシャーと組んだ方がよかったんじゃねーのか?)

     (俺のラテン系の血に合わないぜ。まあ、後の祭りだよなあ)

ラウーロは口元を緩ませながら「そうだな、食堂は閉まっている時間だよな」

「まあいいさ。俺が作ってやる。味の方はインスタントだけどな」

エルザの瞳孔が開き、慌てて制すように喋った。「う、嬉しいです。ラウーロさんのポタージュが飲めるなんてっ」

「3つ目です。名前と写真とポタージュ。」その少女は噛みしめる様に、噛みしめる様に。



ラウーロ (嫌味に聞こえん事も無い。ポタージュ程度で大喜びですか、おめでてーな)

     (気まぐれでジョゼと組んだのがいけなかった)

     (ジョゼとヘンリエッタってのは、傍から見て応援したいと感じるのはトリエラなんだろう)

     (クラエスは「幸せなおチビちゃん、私が幸せかどうかは私自身が決める事よ」とか言ったとかなんとか)

     (エルザの奴はこれから本部長を暗殺するって時に、気を取られてやがった)

     (ジョゼとエッタの仲を羨ましいと思ったんだろうな、やっぱり)

     (興味本位でジョゼと組んだのは俺の責任。エルザがそれにあてられたのも俺の責任なんだよな)



「エルザ、もしかしたら誤解しているかもしれないから謝っておく。使えない奴と言ったのも覚えているか?」

少女は幸せの絶頂から不幸のどん底に突き落とされたようだった。解けかけた緊張が再度少女を襲う。

「はい」とうつむいて、肩を落としてつぶやいた。

「それはな、エルザに言った訳じゃない。自分に言い聞かせた言葉だったんだよ」

「嘘」と一言。

「説明すれば長くなるし、大の大人がオマエの前で愚痴るのもカッコ悪いのでやっぱり説明はしないけど」

ラウーロ (墓穴を掘っちまった。酒でも呑みながらお互い理解を深めるってのが俺のやり口なんだが)

     (ぶっちゃけ相手は義体だから説明なんか不要、そう考えたらダメなんだろうな、ジョゼよ?)

     (トリエラにいわせると俺にぞっこんなエルザへの免罪符ってなんだ?)



「そうか、エルザ、俺の言う事が信用できないんだな?」

「俺にとってたった1人の君に信用してもらえないとは、焼きが回ったらしい」

今度は必死にエルザが否定を始めた「信じます、ラウーロさんの事を誰よりも信じてます!」

よほど慌てていたんだろう。後ろに回していた手を前に出してあたふたとしている。

その手にはもちろん銃を持っていた。

「銃を使わないときには安全弁をしっかりと作動させろと教えたはずだが?」

エルザはハッとしたように銃から手を離し、地面にころがる。

ジョゼに狙撃手を奪われた時と同じく呆然と立ちすくしていた。

ラウーロはエルザに近づき背中に手を回そうとした。が、お互いの身長差のせいでそうならなかった。

エルザの後頭部を包み込む形になった。

「そうだな、俺を守るのもエルザの仕事だよな」

凛とひきしまった夜の公園で、担当官と義体の時間は過ぎていった。







どの位時間が経ったのかラウーロもエルザも分からなかった。そんな折。

エルザは「明日も早いから、いつまでもこうしていたいです」

「それは変な言葉使いだ」

「・・・・・・」

「もしこの寒さに意味があるとしたら、暖かいコーンポタージュの為なんだろうな」

「帰ろうぜ」

「・・・はい」

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