作戦で出張(お泊りの夜)//ヒルシャー、トリエラ
        //CC名無したん//General,Romance,//2008/01/28//


作戦で出張(お泊りの夜)

トリエラとヒルシャーは、フィレンツェでのテロリスト殲滅作戦で出張した。
アジトの襲撃は、簡単に終わった。

最近は、他のフラテッロも参加する大規模な作戦行動が多く、
担当官組と義体組とに分かれて宿泊することが常であったのだが、
今日は、単独行動だったので、トリエラ・ヒルシャー組は久々に同室にお泊りである。

ホテルの部屋に落ち着いた二人。
夜も更けてきた。

低い声で、トリエラが声をかけてきた。

「あ、あの、ヒルシャーさん。」
「ん、どうした。」

「なんだか、眠れないんです。少し手を握っていてもらえませんか?」
「ああ、いいぞ」

私は、トリエラのベッドの横に椅子を据え、
腰掛けて、トリエラが毛布から差し出した手を握った。

「おやすみなさい・・・」
「ああ、おやすみ・・・・・・」

トリエラは、少し恥ずかしそうに微笑んで、目を閉じた。
私もそれに微笑み返して、トリエラを見つめる。


・・・
ピノッキオとの死闘に勝利したトリエラを私は感極まって抱きしめた。
あれから、トリエラの私に対する態度が少し変わったように思う。
私に対していつも、妙に取り澄ました態度を見せていた彼女は、あれから
時折私に甘えて、普通の子供のようなスキンシップを求めてくるようになった。

私はそれに対して、けっしていやな感情は持たなかった。
自然に家族のような気安さで接しようとしてくるトリエラに対して
むしろ、心を通わせることができてほっとしているのだ。

(しかし、それでも、プリシッラに言わせると私は『鈍感男』なのだそうだ)

そんなことを考えながら私はトリエラの手を握ってじっとしていた。
ふと横を見ると、
トリエラは、もうスースーと寝息を立てている。

(眠れないといってた割には寝つきがいいんだな。さてと、)

トリエラの右手から私は手を抜こうとした。

「んっ?」

トリエラは寝ているはずなのに、手を握り返して離すまいとする。

(しようがないな。)

少し苦笑して、もうしばらく、そのままでいることにする。

(小鳥は、眠って筋肉が弛緩すると、人間とは逆に、物をつかむように指が締まるとかいうけど。)

などと取り留めの無いことを考えながら、トリエラに目をやる。

トリエラの寝顔は、可愛い。
以前、私に良く見せていた、ぶすっとした表情は微塵も見られない。

義体たちは、寝ている間に夢を見て、涙を流すという。
以前、足を交換する手術のとき、トリエラは、
「お母さんの夢をみたんです」
と言っていた。
けっして悲しい夢ではなく、嬉しい夢だったのだろうが、
現実に母親が居ない彼女の境遇を考えると、身につまされるものがある。

義体である彼女の将来を考えると、憂鬱になるのだが、
せめて今だけでも彼女の家族、父として、兄として
幸せを与えてやりたいと願う。

 先日、サンドロの手で化粧を施され変装させられた彼女は
ドキッとするほど美しかった。大人の女性だった。
(身勝手な)『大人』に反発していた彼女だったが、
彼女が成長したときには、あれほど美しく魅惑的になるのだろう。

「ううーん」
と、トリエラが寝返りをうった。
一瞬、繋いでいた手が引っ張られたが、
トリエラの手は緩まり、握られていた手が離される。

「うぅーん。ヒルシャーのばかぁ・・・」

やれやれ、どんな夢を観ているのやら。
そろそろ、私も寝るとしよう。
報告書は、公社に帰ってからだな。

「おやすみ、トリエラ」


<了>

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