最終更新: gunsringergirl_ss2 2009年11月22日(日) 23:56:40履歴
無題(何よりも嫌い) //トリエラ,ヒルシャー,
//栢 //Snippet/,General,Serious,hate /4956Byte/Text //2006-06-18
無題(何よりも嫌い)
ヒルシャーさん、と、いつものこちらを伺うような声音で呼ばれる。
返事をするのに間が空いた。
何を考える必要がある?義体と担当官だろう。
確かに私は、彼女との関係を良好に…などと、くだらないことを意識していた。
今思い返せば、実にくだらない。
築きあげなければならない関係は「義体と担当官」であって、
個人同士の親密さではない。
周りを見る。どの義体も素直だ。
己の感情に素直であったり、己の存在意義に素直であったり。
それすらも紛い物かも知れないのに、事実それしかない彼女たちは
義体であることに疑問を持たない。今実在する体と意識が全てなのだ。
担当官の名を呼ぶ度に、複雑な顔をする義体はいない。
「義体と担当官」「義体としての自分」について悩み、顔色を伺う義体などいない。
私の義体だけだろう。
義体には人格や個性は無いなどと、馬鹿げた事を言うつもりはない。
だが、些か参っている。私と彼女はどこから間違ったのだろう。
今では、その責めるような、困ったような、戸惑うような…。
視線を向けられただけで、心がスッと冷めるのが自分でも分かる。
会話が面倒な方向へ向かうと、わざと相手を苛立たせ、
切り上げてしまう自分がいる。
情熱はあったのだ。担当官として、義体を指導した。
一人の人格と向き合い、自分も戸惑い、悩み、
ついには担当官であることに疑問を持ってしまった。
今も、私の在り方は間違っているのかも知れない。
その不安定な空気を察して立ち回ろうとする彼女の存在も、私を追い詰める。
ヒルシャーさん、と、今日も私の義体はその揺れる眼差しで私を見つめる。
彼女が悪いわけではない。
最初に、間違えたのだ。間違いを正せないから、どんどん拗れていったのだ。
「なんだい、トリエラ」
以前よりも、さらに作り物めいた顔で私は微笑む。
そして、それに気付いた彼女は少し俯きながら用件を述べる。
私たちの仕事は、表面上上手くいっている。私たちが上手くいかないだけだ。
君を、嫌いになりそうだよ、トリエラ。
そして、そんな自分が何よりも嫌いだ。
終わり
//栢 //Snippet/,General,Serious,hate /4956Byte/Text //2006-06-18
無題(何よりも嫌い)
ヒルシャーさん、と、いつものこちらを伺うような声音で呼ばれる。
返事をするのに間が空いた。
何を考える必要がある?義体と担当官だろう。
確かに私は、彼女との関係を良好に…などと、くだらないことを意識していた。
今思い返せば、実にくだらない。
築きあげなければならない関係は「義体と担当官」であって、
個人同士の親密さではない。
周りを見る。どの義体も素直だ。
己の感情に素直であったり、己の存在意義に素直であったり。
それすらも紛い物かも知れないのに、事実それしかない彼女たちは
義体であることに疑問を持たない。今実在する体と意識が全てなのだ。
担当官の名を呼ぶ度に、複雑な顔をする義体はいない。
「義体と担当官」「義体としての自分」について悩み、顔色を伺う義体などいない。
私の義体だけだろう。
義体には人格や個性は無いなどと、馬鹿げた事を言うつもりはない。
だが、些か参っている。私と彼女はどこから間違ったのだろう。
今では、その責めるような、困ったような、戸惑うような…。
視線を向けられただけで、心がスッと冷めるのが自分でも分かる。
会話が面倒な方向へ向かうと、わざと相手を苛立たせ、
切り上げてしまう自分がいる。
情熱はあったのだ。担当官として、義体を指導した。
一人の人格と向き合い、自分も戸惑い、悩み、
ついには担当官であることに疑問を持ってしまった。
今も、私の在り方は間違っているのかも知れない。
その不安定な空気を察して立ち回ろうとする彼女の存在も、私を追い詰める。
ヒルシャーさん、と、今日も私の義体はその揺れる眼差しで私を見つめる。
彼女が悪いわけではない。
最初に、間違えたのだ。間違いを正せないから、どんどん拗れていったのだ。
「なんだい、トリエラ」
以前よりも、さらに作り物めいた顔で私は微笑む。
そして、それに気付いた彼女は少し俯きながら用件を述べる。
私たちの仕事は、表面上上手くいっている。私たちが上手くいかないだけだ。
君を、嫌いになりそうだよ、トリエラ。
そして、そんな自分が何よりも嫌いだ。
終わり
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