朝鮮人戦時動員、いわゆる強制連行に関するウィキです。

(この話の後、鄭さんは動員された朝鮮人同胞を逃亡させる地下運動のグループに入る。仲間と北海道のタコ部屋を転々とし、層雲峡のダム工事の現場に潜入し、脱出する)


…方向が分からなくてね、どっちが上川なのか、迷っているうちにアンダルマへ行っちゃったんです。アンダルマって地名ですよ。アイヌ語です。アイヌ部落に入っちゃったんです。そのまま片仮名でアンダルマという駅がありますよ。アンダルマの次が上川駅です。そこでわたしは倒れてね、ずいぶんお世話になりました。

びっくりすることには、あの当時アイヌ部落へ逃げ込んだ人たちはみんな助かっとるんです。アイヌの人たちはこの逃げてきた人をね、絶対外に出さないんですよ。それで天井の裏に隠したり、土嚢へ隠したりしてね。お巡りが来ると、ああ、うちは知らないよ、そういう人は来ませんよ、じゃあ捜してみなさいなんて言って、自分で襖を開けたりして、いないでしょう、なんて言うんですよ。そうすると、お巡りも、ああいないなって、行っちゃうわけですよ。

そのアイヌの方の名前はわからないんです。忘れちゃったんです。そこのお嬢さんがすごい。当時十五か、十六の子どもでしたが、毎日田んぼ行って薬草採って来てね、絞って飲ませてくれたんです。それでわたしは助かったんですよ。

(『百萬人の身世打鈴』p386)

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