朝鮮人戦時動員についての研究書と言えば、別のところでもしばしば言及している「朝鮮人強制連行の記録」(朴慶植/未来社、1965)があまりにも有名です。
現在の初学者にとって読みやすい本ではありませんし、またいくつかの統計数字などには後に誤りが指摘されたり朴氏自身が持論を改めた部分もあるので、注意して読む必要があります。しかし1960年代、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が対立する中での日韓の国交成立や、その中で在日朝鮮人がどのような立場にあったか、また当時、日本(旧日本帝国)による朝鮮半島の植民地支配というものが日本人と在日朝鮮人にそれぞれどのようにとらえられていたかを再確認するという意味で現在でも重要な意義があります。
・『金英達著作集II 朝鮮人強制連行の研究』(金英達/明石書店、2003)
2000年に亡くなった金英達氏の、「強制連行」に関する論文などを収録した遺稿集です。この本には入門書的な内容と専門的な内容が混じっていますが、その入門書的な部分だけ読んでも戦時動員のおおよその概要がつかめるようになっています。
余談ですが、この本の記述の一部が『』在日・強制連行の神話』(鄭大均/文春文庫、2004)で引用・紹介されているのですが、その引用・紹介の仕方が非常に偏っていて、まるで金英達氏が強制連行否定論者のように書いてあります。その辺りを確かめる意味でも是非手に取って頂きたい一冊。
・『朝鮮人戦時労働動員』(山田昭次、古庄正、樋口雄一/岩波書店、2005)
今のところ(2011年)、この分野に関する一番新しい研究書で、今までの研究を踏まえた非常に中身の濃い一冊です。また巷の否定論に対する反論もされています。
・『朝鮮人強制連行』(外村大/岩波新書、2012)
新書ですが、専門書と言ってよいほどの内容。先行研究を踏まえつつ、戦時中の日本の政治体制や状況を丁寧に明らかにしつつ、その中でなぜ現在「強制連行」と呼ばれる問題が起きたかを掘り起こしています。