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孤児院での生活は、嫌いじゃない。
学校にも行かせてもらえるし、周りにはいつも「仲間」がいる。年下の子の面倒を見るので忙しいことはあっても寂しいってことはない。
それでも、学校では他のクラスメイトと自分は何か違う存在のような気がして、どうしても馴染めなかった。
だから私は、孤児院から出る日がじわじわと近付いて来るのがとても怖かった。

孤児院から出る日があと数ヶ月となったある日、私は院長室に呼び出された。
この院を出た後の就職先や進学先のことで話があるのだろう。
これまでも何回か簡単に尋ねられたことはあったが、呼び出されるのは初めてで、まだどうするか決まっていない私は、どうしようかと考えながら院長室へ向かった。
院長室のドアをノックして一呼吸。院長さんの「どうぞ」という声を聞いてから、ドアノブを回した。
「失礼します…」
おずおずとドアを開くと、ローテーブルを挟んで対になっているソファーに、院長さんとスーツ姿の男の人が向かい合って座っていた。院長さんに促されて、私は院長さんの隣に座った。
目の前の男の人は、20代半ばくらいにみえる。何処かの会社の人だろうか、などと考えていると、院長さんから私の名前などを聞いた彼は、
「初めまして、自己紹介は…名刺でいいかな?」
といって私に名刺を差し出した。私がそれを受けとると、私に学校のことや此処のこと、果ては最近のニュースについての意見を尋ねられた。
無難に答える私に、彼は最後にこんなことを訊いてきた。
「私のところで、住み込みで働いて見ないか?」
「ここでの仕事なんだが…まあ、まとめると家政婦とかメイド、ついでで秘書みたいなことをやってほしい」
孤児院を出て彼のところを訪ねると、こんなことを言われた。
これから起業するに当たって、身の回りのことをする余裕もないし人手もないので、家事全般と、たまに事務仕事の手伝いをする、ということだそうだ。
「何か質問はあるかい…あ、やっぱりメイド服か何か仕事着が欲しいか?」
「いえ、メイド服はちょっと…それよりお給料はこんなに頂いていいんですか?」
家政婦の給料の相場は解らないが、提示された金額は素人の自分が貰うには十二分な額だった。
少し不安を感じて質問したのだが、彼はたいして気にする様子もなく、
「金なら本家に腐るほどあるから気にする必要もないさ。それに住み込みってことで夜中に働いてもらうこともあるからね」
私の質問は簡単にあしらわれてしまった。

夜、与えられた部屋の本棚になぜかあった家政婦やメイドに関する本を見つけたので軽く読んでいた。
かなりの給料を貰うのだから、やはりそれ相応な仕事はしたい。その為に、できるだけ礼儀や仕事内容などの知識は欲しかった。
孤児であることから、小さい頃は学校でいじめられたこともあった。
親がいない私のことを欠陥品のように言われ、一種の軽蔑の念をもたれ扱われたことは、とても辛い思い出として残っている。
その思い出から、いつしか私は負けず嫌いになっていた。
親がいる人よりも劣っていない、欠陥なんてないということを証明したかったのだろう。
そして今は、与えられる給料に負けたくなかった。

そんな私の目は、読み進める本のあるところで止まった。




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