３１式（mssr３１系）ブロードソード多脚自走榴弾砲 
従来自走榴弾砲は装軌式のものが利用されてきたが、強化舗装道路の普及が進み、また重装甲ゲリラコマンドの侵入へのい迅速な対応が求められる中、装軌式では速度的にも道路走行においても限界があり、かといって装輪式では車体を支え切れないと考えられ、そこで移動が簡易かつ迅速で、なおかつ重装備を搭載できる足回り、シャーシの開発が求められた。
そこで検討されたのが多脚シャーシである。もともと多脚シャーシは山岳ゲリラに対抗するために投入された装軌・装輪車両が急峻な山岳地に対応できず移動制限を受けたところを山岳ゲリラに狙い撃ちされる事例があり、それは山岳ゲリラから市街地ゲリラでも同じ状況が想定されるために開発が始まったものである。
ロボドッグなどの先行例はあったが、それは歩兵装備がハイテク化とともに重量過大となり、それを運搬する支援兵器としてのもので大きさもさほど大きくなかった。しかしそれはその後発展、人間が搭乗するタイプのものまで実用化された。
その中でこの31式に至るシャーシ、AVS（先進型車両シャーシシステム）開発計画においては、全体重量40トン以上という本格的な装甲兵器のシャーシの開発が目標とされた。
そこで八橋重工・中松製作所を中心とするAVS計画開発陣が検討したのは、まず多脚でありながら脚の一つが破損し使用できなくとも自走能力を保有すること、そして移動時には舗装道路を120kmで走行できることが条件と検討され、それに向けて8脚の多脚構造が決定され、自動姿勢保持システムの開発も進んでいった。
しかし展開速度の要求が最大の問題点となった。脚をそれだけ高速で動かすことには機械的な困難が伴った。特に脚の各部の重量が構造上軽量化しにくく、それを高速で動かすと慣性重量となってそれを打ち消さないと歩行できない。しかしそれを打ち消したり受け流したりする設計はいくつも検討されたが、どれも大掛かりで今度は全体重量のうち脚部だけでその多くを占めることになるという本末転倒になってしまう。
そこで手堅い方法として、脚の接地部にブレーキをつけた車輪を取り付け、車輪の回転で高速時には脚をあまり動かさず、戦闘時など姿勢固定時にはブレーキで車輪を固定するという案が検討された。
その車輪付き多脚案の試作モデルは良好な高速性能を発揮した。が、そこで用兵側からの要求で搭載重量の増量が要求されることとなった。そこで用兵側と設計側での議論となり、用兵側は搭載武器と装甲の要求を譲らず、設計側は40トンという全体重量の中でそれを達成するにはもはや多脚・装輪装軌では不可能と譲らなかった。
そんな中、DAGEX装置、質量補償装置が誕生し、かつて物語の中だけだった2足歩行のロボットですら実現可能となり、そこでシャーシの開発計画に投資するよりDAGEX装置を使った浮上プラットフォームの開発のほうが有効である、とのこれまでの開発がすべて無意味となるような異論がわき、結果このAVS計画は防衛大臣直下の装備開発計画諮問委員会の事業仕分けの対象となるピンチにおちいった。
危機に陥った計画を救ったのが、DAGEX質量軽減装置が重力子（グラビトン）を操作することによって発生させる「グラヴィティーノ（重力微子、Gravitino」を発生させるという研究と、DAGEX装置の質量補償効果が失効、能力を失ってしまうDAGEXクエンチという現象による事故の発生例の研究だった。
先進兵器においてのDAGEX装置の応用は有用と期待されているものの、基幹防衛力を担う装甲車両などのシャーシは安全性・確実性を最優先とすべき、との検討結果となり、AVS計画は事業仕分けをくぐり抜けて続行となった。
そしてAVS計画は首の皮一枚でつながったが、重量配分の問題は残り続けた。
そこで解決となったのが、車輪つき多脚シャーシの車輪を増やすと共に車輪を最新のパンクしない高強度ゴムタイヤとすることだった。車輪は1つの脚にダブルタイヤを2軸搭載し、その軸を操作可能とするアクティブ・サスペンションとする案が出され、1両で32輪もの車輪を装備、それを8脚に分配し車体を懸架するスタイルとなった。高強度ゴムタイヤは軽量かつ堅牢で、装備を含めた全体重量を十分支持できることが確実となり、また武装も新素材や構造の見直しで軽量化してもこれまでの装軌装輪シャーシより強化したものを搭載できる見通しができ、ついに試作車が完成、東富士演習場で試験を行い、そののち北海道での運用試験、技術実証車と生産が進み、ついに全規模試作車が完成、マスコミに公表され、先行量産車が発注されることとなった。
31式多脚自走榴弾砲はそのAVSシャーシの上に20センチ榴弾砲を搭載した自走榴弾砲である。AVSシャーシはそれまでの装軌シャーシとの互換性を付与されているため、シャーシの開発が難航したのに比べてスムースに開発が進み、実用化・装備化され、富士教導団特科中隊に1号車が配備され、戦力化が始まった。しかし搭載した20センチ榴弾砲の性能を向上させる計画が始まっていて、その新型砲の搭載を見越しての登場となった。新型砲は下北防衛省実験センターの下北試射場での試験に進んでいて、搭載は間近と目されている。
射撃時には脚を総て折り畳んでシャーシを接地させ地面に食い込ませるようになっている。
８台で１小隊を構成し、４１式砲兵観測車とリンクした野砲射撃システムを構成する。
