プリンセス・プラスティック管理用用語集(β版) - GAI
 GAIとは、Grand Assault Intelligence-Interface、地上型強襲用高度知能支援システムである。




 21世紀初頭まで、地上での戦闘は航空機や長距離砲・長距離ロケット砲による制圧の後、戦闘ヘリや支援戦闘機と密接に連携した戦車・歩兵戦闘車により蹂躙するというエアランド・バトル戦術が支配的であるとされ、湾岸戦争ではその戦術をとる米軍に対し、イラク軍は強固な陣地を作ったものの、有効な抵抗ができずに敗北した。
 しかしそのエアランド・バトルには兵站線の維持から敵味方識別・目標指示・戦術指揮などに精密な測位システムが必要であり、そこで米軍は人工衛星を使ったGPS(汎地球測位システム)を用意して戦いに望み、各部隊の集結・会合から標的位置設定までを行った。

 ところがその米軍も完璧ではなかった。ソマリアへの軍事介入では「ブラックホーク・ダウン」に象徴されるとおり、市街地に墜落した味方ヘリの搭乗員救出のために突入した米海兵隊の軽歩兵は市街での民兵との戦いにおいて、戦術コミュニケーションシステムの不備により、耐弾性を向上させたヘリコプターや高機動車を巧みに誘い込まれ、対戦車ロケット砲により破壊されて被害を出し、結果米軍はソマリアでの作戦を失敗した。

 それ以来、米軍及び現代歩兵部隊は戦術レベル、特に市街地などでの近接戦でのコミュニケーションシステムを整備する必要に迫られた。市街はベトナムのジャングル以上に危険な地形となったからである。

 それをクリアするために米軍は無人機による長時間監視と遠隔攻撃も行うようになったが、歩兵による近接戦でなければ市街やジャングルに潜伏する敵ゲリラコマンドを掃討することは不可能であった。

 しかし、その歩兵近接戦闘能力の向上は困難であった。すでに銃の徹甲性能向上で、歩兵は複合材料の採用で軽量化を図られたとはいえ絶対的には重いボディーアーマーを着用し、その上で主兵器としての小銃、超近接戦闘用の拳銃やナイフ、その上に小隊レベル通信装置を装備せねばならず、さらに水・戦闘口糧・その他装備品を加えたその総重量は屈強に錬成された兵でも機敏な行動は困難になりつつあり、それ以上に戦術情報共有などを行う機器の装備は無理というものであった。そこでOICWなどのFCS・高度グレネード搭載新型高性能小銃も重量過大でキャンセルされ、1970年代のM14系列の銃が21世紀に生き残ることとなった。

 その抜本的解決としてさまざまに研究された結果、非侵襲的脳アクセスインターフェイスを使うことで兵の肉眼視界に情報をインポーズし、肉眼の性能を拡張することで重たい光学センサーなどを廃することが考えられた。
 なおかつその情報を処理しつつ中隊規模で兵士1名1名を移動通信局とすることで迅速な情報戦闘環境を構成し、中隊規模で分散処理・クラウドコンピューティングを行った上で他の部隊との情報共有・支援のオーダーとキューイングなどを電源内蔵の小型機器で実施する計画が立てられた。
 この最新鋭の民生用デバイスを応用する計画は、技術研究本部先端歩兵研究室により、まず概念研究からはじめられ、そして必要な諸元の吟味が進み、「GAIシステム」として要素研究を束ねて試作が行われ、運用試験を繰り返した後、「GAI」という名称そのままで装備として採用されるに至った。この図のヘッドセットはその「GAI」の容量・処理能力を増強させた「GAI-2」である。
 この「GAI」シリーズの登場で、銃そのものに重いFCSを搭載せずともFCS機能を頭部に追加でき、なおかつ各種通信演算機器の統合により、軽量化とともに簡素化ができた。
 また、衣服も従来の複合素材の布製戦闘服から、高度技術応用衣服により防弾防刃防炎防暑防寒を全て可能にした上に光学迷彩機能を加えたボディースーツ状に進化した。
 そして歩兵の機動力と生残性はそのGAIとの組み合わせた新世代歩兵システムによって画期的に向上することとなり、近接戦闘から大規模野戦に至るまで、歩兵は再び戦場の主役に返り咲いたのである。