◆小説一巻第五章「剣は知っていた」

「お、遅いです! キリコ先生は十分も前から来てたんですよ!」
「私ひとりで応対してたんですよ! 怖かったんですよ!」
「怖いものは怖いんです!」
「それにしたって、ちょっとくらい私に同情とか心配とか見せてくれたっていいんじゃありません?」
「ま、まずいとはなんですか! せっかく淹れてあげたのに!」
「それ、私も説明してほしいです。ついでに事件の真相もわかってるんですよね? 一緒に教えてください」
「どういうことなんです? もったいぶってないで教えてください!」
「ちょ、ちょっと! また二人でわかりあわないでくださいよ! どうしてそうなるんですか!
 えーと、根本的にそんなわけないじゃないですか!」
「千原陣八さんは健吾さんが殺された月曜には入院して身動きできなかったんですよ!」
「何をですか?」
「どうしてわざと負けるんですか! 剣において最強の名前が欲しかったんじゃないんですか!」
「それで陣八先生は自首しようと言い出さなかったんですか?」
「(はぁー)」
「こうやって真相がわかってみると、悪い人なんか一人もいなかったんですねー」
「ほんっとーにネガティブ思考ですね。昨日の鳴海さん、すごくかっこよかったですよ。
 それにキリコ先生もお礼を言ってたじゃないですか!」
「疲れるのは嫌だとか言いながら、人のために自分から苦労をかってでちゃうんですもの、鳴海さんってひねくれてますね」
2006年06月25日(日) 23:02:43 Modified by hiyono_serifu




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