◆第六十九話「ふたりのそら」

「……………
 あの… どうなってるんでしょうか…?」
「え
 バニラアイスを買いに行くとか言ってましたが」
「………… それって
 とてもよくない展開ですよね?」
「あっ はい! そうですね!」
「鍵がどこにあるかわかります?」
「女の子にそういう荒っぽいこと頼まないでくださいよ」
「…もうっ
 仕方ありませんね…」
「はい とれました」
「安い手錠で助かりました いいのはさすがに手間取りますから」
「何です?」
「なッ 助けてもらったくせにその言い種は何ですか!?」
「っとに そういう所は鳴海さんに似てるんですから…」
「それで鳴海さんはどこに呼び出されたんです?」
「知ってる場所でここから一時間……?
 移動手段にもよりますが 候補はいくらでも…
 うう・・
 ちょっと前まで鳴海さんの持ち物に山ほど発信器仕掛けてあったのに 気づいたら全部外されちゃってたんですよ!?
 いつの間にそんな抜け目がなくなったのやら」
「ほっといてください!!」
「それでどうします?」
「おお! やりますね!」
「安物ですか?」
「なるほど
 まさか鳴海さんごときに殴り倒されるとは思わなかったと」
「ええ だいたいは」
「わかりましたっ」
「……でも
 どうしてまたそんなに焦ってるんです?
 鳴海さんの様子も変でしたし…」
「真実… 何かとんでもない情報が出ましたか?」
「は?」
「十以上歳の離れた鳴海さんとお兄さんのDNAが双子みたいに一致するって あれですよね?」
「…………
 やっぱりあの可能性が思い浮かびますけど お二人が生まれたのって十六年も前ですよ?
 今でもまだ確立していない技術ですし まさか…」
「…けどまさか
 鳴海さんが 清隆お兄さんのクローンだなんて…………!」
「ええ… でも…
 人間のクローニングは問題視されてますね ある特定の人物とそっくり同じコピー人間を造り出すものだとして」
「ええ わかっています
 遺伝情報が全く同じというなら双子や三つ子といった一卵性多生児もそうです
 クローンがコピー人間というなら 双子や三つ子も皆コピー人間になります
 それからして姿形や遺伝子が同じでも別人なのは明らかです
 まして体細胞クローンはどうしても年齢に大きな差が出ます 普通の双子よりもずっと別人に思えます
 …けど 鳴海さんの場合 そう簡単に割り切れるものでしょうか?
 鳴海さんはお兄さんとそっくりのせいで どれだけのものを奪われたと思います?」
「この構図は異常です…
 鳴海さんがクローンだとしたら 火澄さんもクローンですよね?
 「神」と「悪魔」の弟がそれぞれクローンだなんて 気味が悪いほど出来すぎです」
「どういうことです?」
「ですね
 ヤイバ自身が組織内にクローン研究所を密かに作り 実際に十六年も前に成功させていておかしくありません
 けど… 鳴海さんは…」
2006年06月19日(月) 23:43:18 Modified by hiyono_serifu




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