みどり・市民派をめざす 井奥まさきが収集した情報、書き込んだ情報を整理して公開するために作った公開用のウィキです。

すぐに役立つ基礎知識 上水道編


論点1 上水道企業会計の構造的問題点
一般会計からの繰り入れ制限

さて、上水道会計ですが構造的に問題をもっているといえます。
行政の一般会計からの繰り入れが法律上、 大きくは「消火栓の設置、修繕」「水源開発に 大量の資金が必要な場合」に限定されていま す。行政の裁量が極端に狭く設定されている わけです。
例えば生活困窮者への免除などは 純粋な企業会計の負担となるため、実際にはほとんど行われていません。これは、国保特 別会計などと比べて裁量の少ないものといえます。
生活に密着した水という貴重な資源は本来 は一定量までは無料としても良いほどのもの です。そうしたことが行えない現在の状況に ついて、まず根本的な認識を質すことが必要ではないでしょうか。

論点1 質問例
▼上水道会計の構造的矛盾をどう考えるか?
▼国・県に対し、繰り入れ基準の見直しなど 要望をするつもりはな いか?


企業会計って何?

行政の予算・決算にはよく「一般会計」「特 別会計」「企業会計」という区別がでてきま す。まず一般会計と特別会計ですが、地方自 治法の 209 条を根拠に、収支のバランスをよりわかりやすくするために、形式は同じながら区分されたのが特別会計です。
一般会計・特別会計とも行政の会計の特徴として単年度会計であり、資本と収益の区別をしていません。例えば、起債を起こした(借金した)としても、会計上は収入となります。
これらの問題点からバランスシートの導入が提唱され、いくつかの自治体で実践されているわけです。そのバランスシートそのものが企業会計です。これは地方公営企業法を根拠においています。
企業会計には土地・建物などの資産が明記され、さらに起債(借金)は負債として記入されます。公営でしかできない部分で特別会計よりさらに明確に収支バランスをとるためにこのような会計をとっています。
論点2 赤字とは…
工事分担金の取り扱いなどの 数字のトリックに注意

企業会計に慣れていない人には非常に難しいのですが、資本的収支と収益的収支は
明確に区別する必要があります。例えば、建物を建てればお金はなくなりますが、建物という資産は残ります(年々価値は下がりますが)。バランスシートはまさしくこうしたお金のバランスを一目でわかるようにしたものです。
赤字・黒字というのは、得てして収益的収支を指して言うことが多いようです。し
かし、会計操作によって根拠が作られる場合もあります。住専問題で明らかになったように、税金を払わないために赤字にしたり、株式総会に合わせて黒字にしたりという操作は民間ではよくなされていました。
実は公営企業会計にもそうした問題が存在します。
工事分担金という制度があります。家を新設した場合などに支払うものですが、この分担金を資本的収入に入れるか収益的収入に入れるかによってバランスシートは大きく変わってきます。
この工事分担金は名目は新設時に必要な施設代を徴収するということですが、実際
には工事分担金ほど(高砂市で1 件1 万 5000円)経費は必要ではありません。雑入に区分し、収益的収入に分類することも可能であり、どちらにするは自治体に任されています。兵庫県では 4 対 6 くらいの割合だそうです。
そうした場合、自治体が収益的収入として取り扱えば、起債が増え、利子を払わなければいけませんが、当面の運転資金は生じます。起債が少なく支払い利息が少ない自治体(給水原価の 15%が目安でしょうか)ならば
こうした会計上のテクニックにより「赤字」 の根拠は崩れる場合もあるでしょう。
経営状況にはさまざまな指標があり、行政側の示す数字が不適切な場合があります。上のように単年度収益的収支が赤字であったとしても、かって黒字であった時代の利益剰余金がある場合もあるでしょう。
本来は、一人あたりの供給原価(市民からいただくお金)と給水原価(職員給与費、減価償却費、支払い利息、経費の合計)を比較するのが適切ではないでしょうか。

論点2 質問例 
▼工事分担金の取り扱いはどうなっているのか?工事分担金の取り扱いを収益的収入に変えることにより赤字の根拠がなくなるのではないか?
▼供給原価と給水原価はどのようになっているか?

論点3 水需要予測

適切か?割高な水導入はしていないか?
80年代に右肩上がりの経済成長を前提にし た過大な水需要予測がされました。その予測 のもと、市町村からの要請という形をとって用水ダムが多数建設されました。しかし、これらのダムの多くは「公共事業のためのダム」であり、当時からすでに過大であった水需要はバブル崩壊後激減。予測はますます現状から遊離しています。しかし、造ってしまったダムの維持費のため、不必要な水を買い続ける義務を負わされている自治体がみられます。
過去の失敗だけではありません。岡山県苫田ダムのように、右肩上がり経済幻想が
崩壊した現在ですら、治水と用水をセットにしてダム新設をしようとする動きがみられます。
ダム建設は県レベルの問題ですが、市町村レベルででも人口予測が適切か、産業用
水はどのあたりまで必要かの議論をすべきです。
バブル崩壊を受けて国土庁ですら白書で「水消費はエネルギー消費につながる」点から節水をすすめています。現実にも家庭レベルでは一人あたりの水消費は減っている場合が多いと思います。しかし、どんな渇水時でも 24 時間体制の供給をめざす施策が取られ、右肩上がりの需要予測が取られていると思います。
この論点は究極的には「いついかなる場合でも水が 24 時間供給できる社会」か「渇水時にはしかたないとする社会か」というふうにも立てられます。
得てして都道府県の配水は割高になりがちです。そうした点もふまえ、チェックすることが必要です。可能ならば無駄な都道府県の配水を断ることも検討すべきでしょう。そして、長期的にも時期をみて、予測と現実がどうなったのかきっちりと議論が必要でしょう。


論点3 質問例
▼水需要予測と長期計 画との整合性は?
▼水需要予測が過大に なっていないか?
▼給水計画の見直し、 都道府県からの水需給 計画の見直しは?

論点4 事業報酬、基金の取り扱い
適切か?削減・取り崩しの余地はないか?

大規模な修繕に備え、施設改良のための 資金を「事業報酬」や「基金」の名目で確保している場合、それらの額が適切か、あるいは基金の取り崩しが可能かといった点も論点になるでしょう。事業報酬は地方公営企業法第 21 条の 2 を根拠に、原価に加えて健全な企業運営を確保するために設けられるものです。
明確な基準はないのですが、自治体によってそれぞれの事情で決められているようです。兵庫県でも7市で導入されています。ちなみにガス事業の場合は、固定資産帳簿価格の 2%を料金原価に算入することが認められています。事業報酬(資本報酬などいろいろな名前)以外でも基金をもうけているケース、基準なくある程度の金額を残しているケースなどがあるようです。これらのお金は長期的には必要なものですが、その率などについては議論が必要と思われます。

論点4 質問例
▼(事業報酬・資本報 酬、類似の制度がある 場合)率を見直さないか
▼基金を取り崩さない か?
▼(いずれの制度もなく あいまいに残している 場合)あいまいな形では なく、一定の基準を作 るべきでは?
論点5 経営努力 滞納徴収について
市民が納得する努力がなされているか?

もし値上げを行政側が提案してきた場合、 市民に負担をお願いするに見合う経営努力を してきたのかという点もチェックするポイントです。滞納は生活困難者の場合は仕方がありませんが、いわゆる悪徳滞納者に対しては毅然とした徴収体制が望まれます。
また、生産場所から消費者に至る過程でしみ出たりする、漏水での損も馬鹿にはなりません。他にも人件費に対しても民間委託をおこなったりしている自治体もあるようですし、再雇用制を活用して人件費を抑制することも議論できます。


論点5 質問例
▼以下のような経営改 善努力はどうなってい るか?
 事務の効率化、設備投資及び起債の適正化 (安い金利の起債への借り換え)、有収率の向上、徴収率の向上、施設管理の効率化、公共工事コストの縮減、人件費の抑制、口座振替の促進。
論点6 値上げの幅、改定の時期の明確化
市民生活への打撃を少しでも減らせないか

これらの論点に加え、地域事情に基づいた議論をへたうえで、どうしても必要な場合は値上げもやむをえないと思われます。しかし、急激な値上げは市民生活を直撃しますし、現在のような不景気の中では行政が少し起債を増やしてでも値上げをせずにおくべきだといういう議論もなりたちます。また、値上げの幅も問題となるでしょう。
また、値上げといっても料金体系を見直すことで低所得者にやさしい値上げをする
こともできます。用途別、水量別に料金体系を組んでいる自治体が多いでしょうから、どの層に負担を強いるかは議論すべきでしょう。市民感覚に密着した計画的な料金改定が行われるのかどうかもチェックのポイントです。



論点6 質問例
▼今回は値上げ幅を縮小し、市民生活への打撃を減らすべきではないか?
▼一定量以上を使う部分に値上げ幅を大きく、最低限度部分は値上げをすべきでないと思われるがどうか?
▼こういう条件ならば値上げをするという根拠を市民に明確にすべきではないか?
以上、私の市での値上げをめぐる議論をもとに、論点をあげてみました。水道料金値上げ問題が起こった場合、このような論点をもとに質疑・討論をされてはいかがでしょうか?各地の実践例、他の論点などの情報もお待ちしています。

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