みどり・市民派をめざす 井奥まさきが収集した情報、書き込んだ情報を整理して公開するために作った公開用のウィキです。

グリーンズのネットワークが平和を創る


 私たちが企画したセッション「市民がつくる平和と『安全保障』」(司会:大庭里美さん、コラソン・ファブロスさん)とワークショップ「北東アジアの平和にむけて私たちができること」(司会:松谷清さん)の議論から印象に残った点を紹介していく。
深刻な基地による汚染

 平和セッションでは基地問題が取り上げられ、とりわけ環境汚染が共通の課題として浮かび上がった。
 「一九四五年以降の約五万二千件の米軍犯罪の内、韓国で裁けたのは一・二%のみ。梅香里では『誤爆』で十二人が亡くなり、騒音のため七・一%が難聴になっている。米戦略再編で米軍基地が101か所から平澤を中心とする23か所に再編・統合される。返還後の土地汚染の回復は沖縄、フィリピンとも共通する課題であり、協力していこう」(イ・ユジンさん、韓国、グリーンコリア・ユナイテッド)
 「ベトナム戦争で使用された枯葉剤の一種のオレンジ剤が米軍基地に貯蔵されていた。撤退時に汚染除去も実現させるよう交渉すべき」(比、コラソン・ファブロスさん、非核フィリピン連合)
 「旧ソ連の軍事基地の跡地汚染が深刻で、ゴビ砂漠には”死の街”が残った。ロシアに遺棄兵器処理と汚染除去を要求する」(モンゴル緑の党)
 「第二次大戦時の米日両軍の爆弾やマスタードガスなどの遺棄兵器を、近年武装勢力が使おうとした。持ち込んだ者が除去の責任を負うべき」(ソロモン諸島の人)
 日本の中では議論があまりされてこなかった「基地と環境汚染」という問題の切り込みは、緑らしいものであったと各方面から評価された。
ミサイル軍縮と戦争経済  

 国家間対立と軍拡の連鎖という東北アジアの状況を反映していたのが、台湾からの発言だった。台湾緑の党は、台湾が中国による軍事侵攻の脅威と対抗する米国からの武器輸入という形で、米中の主導権争いの狭間にあると指摘。緑の党は非暴力の原則に基づき双方に反対していると述べた。
 ミサイル防衛という”先制攻撃促進装置”の導入(日韓台)という局面にある現在、東北アジアの核・ミサイル軍縮という文脈から具体的な連帯を図るべきだと痛感した。ちなみに台湾からは「反核運動家としては北朝鮮に経済制裁すべきだと思う」との発言もあった。ていねいな議論が求められるが、各国の色合いが反映された意見といえる。 日本側からは経済と軍事の密接な関係を問う発言が続いた。きくちゆみさんは、日本の銀行預金が米国債に化け、米国の戦争資金になっていることなど、戦争に組み込まれた経済を変える必要を強調した。
小林一朗さんは、「年上の人は風力エネルギーへの投資などお金の使い方を変えてほしい」と語った。そして、会場の年長者から今の若者の力不足を問う質問には「しないことをあげつらうより、一緒にやれる方法を考えていきましょう」と応じた。
 
九条はアジアの財産

 会場からの質問を契機に、憲法九条についても議論になった。韓国・緑の政治連帯のイ・キホウさんは「九条はアジアが悲惨な戦争をくぐって作った憲法であり、東アジア市民社会全体の財産」と明言し、「北東アジア共同の家をめざそう」と強調した。
 さらに「二十世紀の国民国家を市民中心社会に変革するために、アジア市民社会マップ・カレンダーを作ろう」と提案した。
 「緑のテーブル」運営委員の足立力也さんは「九条を現実主義的に使う戦略を打ち立て共有したい」と述べ、「人間の安全保障」の具体的枠組みとして欧州、米州人権裁判所に相当する「アジア人権裁判所」の設立運動を呼びかけた。
 この議論はワークショップで行われた。ピースボート共同代表の吉岡達也氏はGPPAC(=武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)プロジェクトでの憲法九条の議論を紹介した。「世界レベルでも通用するのかと正直不安だったが、非常に好意的に受けとめられた。そして、『普遍的価値があり、 東北アジアの平和の基盤として活用されるべき』と提言に盛り込まれた」と報告した。
軍事ではなく災害救助や援助を

 最後に、災害救援や援助の課題についても議論が行われ、平和セッションの決議でも「援助キャンペーンの実現」が提案された。2004年12月に起きたスマトラ沖地震の直後でもあり、参加者の関心も高かった。
 特に被災国でもあったスリランカ緑の党からの報告では、「軍隊による災害救助は効率が悪い」とはっきりとした意見が述べられ、「戦争・軍事にではなく、災害救援や破壊の軽減・予防にお金を使うべき」と締めくくられた。
 さらに発展して、「介入を受けずに貧しい国々が発展することへの援助を」(東チモール)など自立的な開発・発展についての発言もあった。
 韓国のイ・キホウさんは、北朝鮮の開発特区への支援を「緑・資本主義」的な新しい経済システム構想をめざすものとして行うことや、軍人から産業労働者への移動を促すことで軍縮と経済発展の両立を図る可能性について言及していた。
ネットワークによる連携の広がり

 みどりの京都会議の後も、主に北東アジアを中心に交流と議論は続いている。2005年5月には韓国と日本のグループがソウルで交流会を行った。時あたかも竹島問題や教科書採択で日韓関係が揺れているときであったが、緑の市民交流としては率直な意見交換ができて成功に終わった。
また、8月にはウランバートルでモンゴル・日本・韓国・台湾を中心とした会合が企画された。
 吉岡氏から報告のあったGPPACは、その後北東アジアでの提言をまとめあげ、7月ニューヨークでの国際会議で提言が行われて採択された。「虹と緑」と「みどりのテーブル」は提言に団体として賛同した。
 アジア・太平洋地域、特に北東アジアでは特に平和構築の問題は大きな課題となっている。グリーンズによるネットワークがその解決への小さくても大きな一歩となるように、これからも私たちは努力していきたい。

(平和部会 企画グループ 杉原、井奥)

コーディネーターとして活躍された大庭里美さんが会議直後に急逝されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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