もう一つの政策は、方向性としては良いものであったかもしれませんが、状況を見ずにおこなった結果として最悪の結果となりました。2004年から始まった臨床研修医制度です。
おおむね2年間を指導医のいる病院で研修医として過ごし、さまざまな診療科を経験(スーパーローテ)することが義務化されたというものです。
意思向上や大学の医局の透明化をめざしたこの制度は本来はいい方向です。しかし、「徒弟関係」でかろうじてつなげていた「嫌な病院でも先輩の命令で行く」という習慣を決定的に破壊しました。
また、大学の医局に残る医者が少なくなり(今までは努力義務の中、なんとなく医局に2年間残っていた)、大学がかろうじて言うことの聞く医師を医局に呼び戻すという現象も生じました。
結果、地域から医者がいなくなっていくのです。
当初は2年間たてば戻ってくるという期待もありましたが、特に地方では厳しい状況にあります。
2006年、2007年の研修医の行き先が全病院ベースで厚生労働省のHPに掲載されています。
平成19年度 研修プログラム別マッチング結果(2007.10.18)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/10/dl/h1018-1b.p...
平成18年度 研修プログラム別マッチング結果
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/dl/h1019-1b.p...
マッチングとは研修希望先と受け入れ病院の「仲人」みたいなもので、来年度から研修医がどれくらいくるかが上の表で明らかになります。
ちなみに高砂市では18年度が希望3名で2名。19年度は希望3名で0名と厳しいものがあります。
ちなみに、法律で決められた臨床研修医(2年が多い)の後は「後期臨床研修医」(この名称は俗称らしい)として3年の研修を受けることが多いようです。この「後期臨床研修医」をどれだけ受け入れるかが3年後の医師数の目安となります。後期研修を受けた病院にそのまま居続けることが期待できるからです。
一方、高砂市のように研修医(後期も含む)が来てくれない自治体病院は5年間は苦戦が予測されます。新しい医師は5年間はどこかに研修で張り付き、来ない訳ですから。
5年後に研修から自由になった医師が来てくれるのを期待するしかありません。
マッチングの意味、研修制度の変遷については
http://air.ap.teacup.com/awatenai/435.html
平方 眞(ひらかたまこと)「がんになってもあわてない」著者
諏訪中央病院緩和ケア科